表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その転移魔法、チートですよ?  作者: 気まぐれ屋さん
1章 イントロ~屋敷移住まで
28/66

28.吸血鬼の屋敷・昼の部


前回までのあらすじ。

紫髪のエルフ、アルスが里へ帰った。

俺達は憲兵詰め所に転移し、依頼報告をすることにした。

――――――――――――――――――――――――



エルフ3人は、依頼の調査報告をするために、憲兵長と話し合うらしい。

1時間くらいかかるらしい。



「テレポート」



俺はギルド「マニィ信者の憩いの場」の掲示板前へ転移する。

ヒマつぶしに出来る依頼がないか見てみたが、



「うーん、依頼が「無人の屋敷調査|(D~Bランク)」しか残ってねぇや」



「フォントノの町調査|(?ランク)」

「クラムの森の異変調査|(Cランク)」

「魔道具屋の仕入れ手伝い|(Bランク)」

は、既になくなっていた。


魔道具屋の依頼、興味あったのに。



『アマンサが受注したんだろうバグ』


「言われなくても分かってる。にしても、屋敷調査か」



とりあえず依頼詳細を見てみる。



――――――――――――――――――――――――

【無人の屋敷調査|(D~Bランク)】

【依頼主】クラムの町、町長テムス

【依頼文】クラムの町のそばの湖の近くに、人の住んでいない屋敷があるんです。

無人の屋敷は、昼間はなんともないけれど、夜になると屋敷が騒ぎ出し、調査員を追い出すらしいのです。

彼らの話では、急に体が引っ張られて屋敷の外に放り出されたとか。

しかもこの屋敷、魔王ベルセリオが現れるよりも前からあるのだとか。

無害だからと、今まで放置されてましたが、やはり不気味です。

魔法に詳しい冒険者の、詳細な調査を希望します。

【報酬】10万MA

【期限】14日以内。

――――――――――――――――――――――――



「俺、魔法使いじゃないしな」



屋敷に魔法や結界やらがあったとしても、俺には分からないし、どうすることもできない。



『ちなみにBランク以下の依頼に失敗したら、報酬の1割の罰金が発生するバグ』


「マジかよ」



冒険者って大変だな。


命張って、頑張って、それで失敗して罰金なんて。

俺だったらそのまま、やさぐれそうだ。



『ま、受けないのも一つの選択肢……』


「受注完了っと」



俺はクエストを受注した。




『ちょ?! 何やってるバグ! 話聞いてたバグ?!』


「暇潰しには丁度いいや。ま、転移魔法で何とかなるだろ」


『転移魔法で何でもできるなんて、思いあがりもいいとこバグ!

依頼失敗して泣いたらいいバグ!』



アドバイスを無視されて、バグログがぷぃっとすねる。



「いわくつきの屋敷なんて、ワクワクするじゃねーか。

異世界はこうでなくちゃ」



依頼の失敗なんて、はなから気にしていない。


俺が興味あるから受けた。

ただそれだけだ。



「よし、昼の部の調査をするか。テレポート」



調査は日中と夜間、この二つの時間帯で行う。


夜間の調査には、3人のエルフから魔法のことを聞けば、なんとかなるんじゃないか。


俺はこの時、そんな軽い気持ちで考えていた。



◇ ◇ ◇ ◇



ひょうたん型の、透き通った湖が100m先に見える場所に、その屋敷は建っていた。


黒いレンガ造りのその屋敷は、俺の知っているどんな家よりもデカかった。


それこそアニメで見るような、金持ちのボンボンの家みたいな大きさだった。


しかし、こんな黒々とした家に住む金持ちはいないだろう。

むしろこれは、魔王の屋敷とでも言った方が、それっぽい。



「お邪魔しまーす」



6mくらいある巨大な赤色の木製扉を開ける。


中も黒レンガ一色だった。てか昼間なのに暗い。



「その辺の土を、明りがつく魔道具へ変える。

テレポート」



俺の目の前に、ランプが現れる。

転移魔法マジチート。


俺はランプのスイッチを押し、明りをける。



『わざわざそんなことしなくても、玄関に廊下用の明かりが点くスイッチがあるぞバグ。

ぽちっとな』



バグログが壁のスイッチを押すと、天井のシャンデリアっぽいのに火がともる。

廊下が明るくなった。



「って、先に言えよ!」


『はぁ……こんなんで調査なんて出来るのかバグ?

先が思いやられるバグ』



バグログは、黒いツインテールとアホ毛を揺らしながら歩きつつ、俺に冷たい言葉を投げかける。


なんだかんだ言って俺を助けてくれるのは相変わらずだ。



『何をにやけているんだバグ』


「べっつにー」


『お前を助けるのは、お前が俺様だからだバグ。

あくまで俺様のためだからなバグ』


「ん? 俺がバグログだって? 何言ってんだ?」


『お前、俺様がお前に寄生してるスキルだってこと忘れてるだろバグ……』



そういえば、俺がどこかへ転移すると、バグログも勝手に転移してくる。


バグログは一切の食事をしていない。


バグログは俺の心を読むことができる。



「ああ、バグログ、お前って俺の一部だったのか」


『今更すぎるだろバグ!』


「まあいいや」


『いいのかバグ?! 自分で言うのも何だけど、そんな軽く流していいのかバグ?!』



口を動かしつつ、俺達は廊下から部屋へ。

部屋から出て再び廊下へ、そして別の部屋へ、を繰り返している。


この屋敷広すぎ。



「というか、物が全然ないんだが」



本当に建物だけしかない。

誰も住んでないアパートの空部屋みたく、ガラッガラだ。


タンスの1つでもあれば家探ししていただろうが、



「うーん、何もないな……」



◇ ◇ ◇ ◇



結局、2階建ての屋敷の全部の部屋を周り、


なんの成果も!! 得られませんでした!!


……いや、本当にどうなってるんだ。



『物は、冒険者や盗賊がもっていったんだろバグ』


「にしてはおかしいぞ?

ゴミの1つどころか、ホコリすらない」



ここまで徹底していると、逆に誰かが管理しているとしか思えない。



「なぁバグログ。屋敷を自動で掃除してくれる魔法や結界ってあるのか?」


『そんな都合のいい魔法も結界もないバグ。

再現しようとすると、かなーり面倒な複合魔法や結界を作ることになるバグ』


「それって難しいのか?」


『マニィ並みの知識と魔法力がないと無理バグ』


「あの金の神のステータスとか知らんぞ」



というかアイツって凄いのかどうか分からん。



『知識800、魔法力600くらいバグね』


「俺の知ってる知識ステータス最大が、グノームの369なんだが、それより高いのかよ」


『4神には遠く及ばないといえど、一応マニィは、魔王ベルセリオを鼻で笑うくらいには強いバグよ?

グノームだって、エルフの知識平均値100からすれば、高すぎるくらいバグ』


「納得いかねぇ」



俺の知識が2なのに、その400倍も賢いとは思えない。



『知識の多さが、必ずしも賢さには繋がらないバグよ』


「そういうことか。

で、話を戻すが、この屋敷は誰が何のためにどうやって管理してると思う?」


『俺様が知ってるのは、この屋敷は昔カミラが住んでいた別荘だったってことくらいバグ』


「それって、魔王ベルセリオの前の、吸血鬼魔王のことだよな?」


『そうバグ』



ふむ。謎は全て解けた。




「つまりこの屋敷は、魔王カミラ復活を願う部下が、主人がいつ帰ってもいいように管理している、そうだろ?」


『いや? カミラは殺されて、現在地獄で服役中だから、もう現れないバグ』


「え? じゃあ何のためにこの屋敷は存在し続けるんだ?」


『その調査をしに来たんだろバグ』



せっかく謎が解けたと思ったのに、振り出しに戻ってしまう。


この屋敷が吸血鬼の別荘だったって分かったのだが。


現在の管理人についての情報が、不明すぎる。



「そろそろ時間だ。あいつらのクエストも終わってるだろうし、いったん帰るか」


『こんな調子で調査は大丈夫かバグ?』



いざとなったら最終手段、転移魔法様、調査をお願いします、と頼むつもりだ。


だがそれをやってしまうと、なさけないような、みじめな気持になるから、あくまで最終手段だ。


それに、異常が現れるのは夜らしいから、その時間帯になったら、別の何かが現れるかもしれない。



「待ってろよ吸血鬼の屋敷! 俺が真実を暴いてやるからな!」



リベンジを誓い、俺は転移でエルフ3人の所へ飛んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ