2.マニィの浮島
前回までのあらすじ。
金の神マニィに異世界に転移させられ、人形魔王の好意で転移魔法を習得しました。
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「あなたには価値が分からないかもしれませんが、その転移魔法、チートですよ?」
そう言われても実感が沸かない。
確かに、テレポート出来ないよりは出来るに越したことはない。
でも、どちらかというと脇役寄りの能力には違いない。
「ではご希望のチート能力も入手されたみたいなので、早速信者の集め方について……」
「待て待て、ちょっと待て。
もうちょっと実践向けの能力がないと無理だ」
いくらなんでも転移魔法だけでどうにかなるほど異世界は甘くないだろう。
定番の展開では、中盤以降チート能力持ち同士のバトルが行われる。
で、俺は転移魔法だけしか使えない。
他のチート能力持ち相手にどうしろと?
逃げろってか? 戦わず逃げろってか?
冗談じゃないぞ!
「というわけで戦闘能力プリーズ。もしくは才能でも可」
「いや、だから私は能力付与ができないんですってば」
「この女神、使えねー……」
俺は、ネット小説では俺TUEE系、俺YOEE系どちらも読む。
が、実際にどちらがになりたいかと聞かれたら俺TUEE系一択だろう。
誰が好き好んでいばらの道を選ぶかよ。
異世界で無双しまくって、美少女に囲まれた異世界ハーレムを作ってやるぜ!
「俺に信者集めを協力しろってんなら、それなりにメリットを付けてくれなきゃダメだろ。
例えば聖剣くれるとか、協力なペットくれるとか、さ。
何か無いわけ?」
「聖剣にペットですか……すみませんが持ってないですね」
「えー」
どこまで俺を失望させてるんだ、この駄女神。
「ご期待に添えずごめんなさい」
「いいよ、もう」
彼女に何か期待するのは、望み薄だろう。
おそらくだが、別の誰かが俺の才能を開花させ、チート能力を目覚めさせてくれるに違いない。
そういうタイプのテンプレと予想される。
だから、早く異世界に降りたい。
「異世界に降り立つのは、どうすればいいんだ?
お前がワープさせてくれるの?」
「何の話ですか?」
「いや、ここって次元の狭間的な空間でしょ?
俺早く地上に降りたいんだよね」
「地上に降りたいも何も、ここはもう地上ですけど」
「ホワット?」
マニィは部屋にある扉を指す。
俺は、扉へ向かい、取っ手に手をかける。
窓一つ無い部屋の扉を開けると、まぶしい光が差し、さわやかな空気が頬をなでる。
眼下にはお約束の中世風の街並み。
町の外れの丘に建つ小さな家。それが俺達がいた場所だった。
「おお、すごい眺めだ」
「この島は素敵でしょう? 私が管理してるんですよ」
「島?」
見渡す限り海など見えないが。水平線には雲が……
って、おかしい。
「水平線が雲を分断してる?!」
水平線の高さが海抜0mなら、雲は普通、水平線よりも上に来るはずだ。
つまりは
「空の浮島?! この町、いや、この大陸は空に浮かんでるってことか?!」
「ふふふ」
ラピ○タは本当にあったんだ!
やべぇ、テンション上がってきた!
「風の大陸の浮島の1つ、マニィの浮島は気に言ってもらえましたか?」
「ああ、まさに異世界! ひゃっほーぅ!
テレポートっ!」
俺は転移魔法を使った。適当に呪文を唱えたらいけた。
町の真ん中にある広場目がけて、自分を転移させたのだ。
「ちょ、どこ行く気ですか?!
まだ信者集めについて何も話してないのにー!」
マニィが引きとめる声も、俺に届くことなく。
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佐倉遊角
種族:人間(15歳)
Lv:1
職業:なし
スキル:【転移魔法(魔王特製)】
HP 42 MP0
力5 頑丈さ3 素早さ4 知識2 魔法力0 器用さ2
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