15.茶髪のエルフ
前回までのあらすじ。
エルフ3人を宿の自室に保護した。国王からパーティへの誘いの手紙が来たが断った。
遊角と茶髪のエルフの2人で、転移魔法で惣菜屋の前へ移動した。
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・グノーム視点
私はグノーム、何故か遊角という少年と一緒に、惣菜屋の前に立っているですよ。
惣菜屋は出店みたいな形をしていて、揚げ物を作っているオバサンと遊角が話合っているですよ。
「それで茶髪っ子」
「は、はひっ?!」
「エルフって好き嫌いあるの?
例えば草食で、肉は絶対食べないとか」
「え、エルフは雑食で……す、好き嫌いはエルフ個人によって違うですよ」
「そっか。人間も好き嫌いはあるし、当然か」
少年の機嫌を損ねないように、質問に答えるですよ。
一見無害そうに見える少年ですが、さっきシルフィーンを圧倒していたところを見ると、相当の使い手に違いないですよ。
「よし、一通り買うか。すみませーん」
「はいよ。注文は決まったみたいだね」
「全12種類のおかずを、4つずつで、お姉さん」
「あら、やだ! この子ったら、お上手なんだから!
しめて2万MAね」
「ども」
「また来てねー」
どうやら買い物が終わったみたいですよ。
袋4つに大量のおかずか入ってるですよ。
いい匂いがするですよ。
「おーい、運ぶの手伝ってくれー」
「は、はいですよ!」
どうしてさっきの魔法で飛ばさないのか、とか。
一人で運べるんじゃないか、とか。
色々思うところはあるですが、命令に逆らって殺されたら嫌なので従うですよ。
それに魔法使用不可の結界がない今、もし彼が私に触れたなら、3人で逃げだすチャンスが来るですよ。
袋を2つ受け取る。
……重いですよ。
「こっちだ、こっち」
遊角は宿に向かっているですよ。
魔法を使わないのは、ひょっとして魔力切れ?
遊角の背中を見る。隙だらけですよ。
私はそっと彼の手に触れ
「チャーム」
異性を骨抜きにする魅了魔法。
これを食らえば死ぬまで私の奴隷なのですよ。
魔法で抵抗されなければ、どんな男もイチコロですよ。
ただ、私が直接触れるのが条件なので、相手が油断してないと使えないのが玉に瑕ですよ。
「?」
遊角が振り返る。おかしいですよ?
確かに魅了魔法を使ったはずですよ。
彼はその場で恍惚として、棒立ちになるはずなのに。
私の魅了魔法が効いていないですよ?
「どうした?」
「……手を」
「手を?」
「手をつないで欲しいですよ」
寂しそうな女の子を演じるですよ。
これは、捨て身の賭けですよ。
彼は私に手を差し出す。私は彼の手を取る。
彼は私に敵対心を持っていない、あるいは油断している。
彼の手から、彼を守っている魔法を解析するですよ。
「おお、これが女の子の手の感触……!」
複雑な魔法防御、でも、その穴が見えたですよ。
そこに思い切り魅了魔法を込める。
「チャーム!」
「?!」
確かな手ごたえ。
やった! 成功ですよ!
見ると彼は恍惚としている。一生こき使ってやるですよ。
「まずはこの食料を仲間に持っていくですよ!」
手の荷物を彼に押しつける。
もう猫を被るのは終わりですよ。
「……はっ?! 俺はいったい何を……」
「宿についたですよ。さっさと荷物を運ぶですよ」
「ん? あ、そういえば惣菜を買った帰りだったな。
よし運ぶか」
私たちは宿に入り、彼の借りている部屋の前に着いたですよ。