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その転移魔法、チートですよ?  作者: 気まぐれ屋さん
1章 イントロ~屋敷移住まで
12/66

12.合法な奴隷商


前回までのあらすじ。

バグログがヒロインに昇格した。

マニィから信者の杖を貰った。

ローブを買って、宿をとった。

――――――――――――――――――――――――


宿は一人5000MAほどで泊まれる、木造建築の宿だった。


端の方の、タタミ6枚分くらいの広さの簡素な部屋だった。


赤褐色の色をした、見たことのない木で作られた内装に、俺は最初テンションが上がった。

が、そのうち慣れて、疲れもあったのでそのまま寝た。


そして夜が明け、異世界へ来て2日目の朝を迎える。



宿を出て町の散策中に、俺の目にとまった一軒の店。


「即戦力! ウァーバー奴隷屋」


と看板に書かれている。



「バグログ、説明頼む」


『俺様はお前の都合のいい女じゃないバグ』


「バグログ、説明頼む」


『……目がマジバグ。

奴隷屋ってのはその名の通り、奴隷を商品として取り扱ってる店バグ。

メイドを雇う金がない貧乏貴族や、裕福な冒険者なんかはここで働き手を雇い、家の雑用なんかを押しつける感じバグ』


「エルフとか居る? ケモミミ娘や人魚でもいいけど?」


『……言っておくけど、奴隷相手にセクハラしても捕まるバグよ』


「居るんだな?! よし!」



バグログが呆れているみたいだが気にしない。



『そもそも奴隷とは言うが、地球世界のそれとは概念が別物バグ。

地球世界で言うところの下働き、孤児あたりが近い意味バグ』



バグログの説明は続く。



『親を亡くした、もしくは住みかを追い出された者を、奴隷商人が保護するのバグ。

奴隷は丁重に扱われ、貴族の元でもはずかしくないようにマナー、料理、洗濯、掃除、読み書き等を教えさせられるバグ。

さらに奴隷を買った者は奴隷の働きに応じて、最低でも日当5000MAは払わなくてはならないバグ』


「俺の知ってる奴隷のイメージと違うな。

スラムに住んでる少女を無理やり捕え、下品な顔の貴族が闇取引で買って、タダ働きやエロいことさせる、とかじゃないのか」


『そういうことをしてる奴らは、この世界では人さらいと言われ、普通に犯罪者扱いバグ。

奴隷商は奴隷本人との同意のもとで商売してるから、人さらいとは根本的に違うバグ。

奴隷商は国も認める、立派な職業バグ。』


「立派……なのか?」


『遊角の常識では、立派どころか忌み嫌うべき存在だろうバグ。

だが考えてみろバグ。

もし奴隷商がいなければ、親を亡くした子どもや、住みかのない者はどういう行動を取るバグ?』


「俺のネット小説知識では、そういう奴らは盗賊になるか、運よく誰かに保護されるか、冒険者になるか、だな」


『大抵は盗賊以下の、ただのひったくりになって、捕まるバグ。

冒険者になったところで、すぐに死ぬのがほどんどバグ』



異世界でも、現実は甘くないということか。



『そうなる前に奴隷商が彼らを保護し、彼らに食事と生きる知恵を与え、彼らに働き口を与えるわけだバグ』


「そう聞くとハローワークみたいだな。なんだ、奴隷商っていい奴じゃん!」


『まあ裏で遊角の言うような、卑劣な商売をする奴隷商も一部いるけどバグ』


「やっぱり悪い奴なのか!」


『良い悪いは、自分の目で見て判断しろバグ』



確かに。実際にこの目で見てみないとな。


なお、実際に悪い奴だったとしても俺は制裁とかはしないつもりだ。

だって俺、転移魔法しか使えないし。


転移魔法が効かない奴が敵にいても困るし。



「よーし、突入だ! おっ邪魔しまーす」


「いらっしゃい」



名札にウァーバーと書かれた男の老人が挨拶してきた。

人が良さそうな顔をしている。



「ふむふむ。なるほど。お年寄りの奴隷もいるのか」


「ワシは店員だよ……」


「知ってる」



店主をからかいつつ、店を見てみる。

喫茶店のような印象の内装に、丸い机が4つ。各机には少年少女が3人ずつ。


彼らは本を読んで勉強したり、こちらを見たり、遊びに熱中したりしてる。

胸に名札と値札が付けられている。彼ら全員、奴隷らしい。


てっきり鎖に繋がれたり檻に入れられているものかと思ったが。

逃げないのだろうか。



『だから自発的に奴隷になってるんだバグ。

それに逃げたってどうせろくな職につけないバグ。

それよりここで貴族に拾ってもらって出世を狙う方が賢い選択バグ』



なるほど。

彼らは15歳の俺にはとても想像できないような、厳しい世界で生きているらしい。



「ところで君は何者だね?」


「あ、こういう者です」



俺はギルドカードを見せようと取り出し、渡す直前に自分のステータスを見て凍りつく。



――――――――――――――――――――――――

佐倉遊角さくらゆうかく

種族:人間(15歳)

所属:「マニィ信者の憩いの場」Sランク

Lv:50以上(測定不能)

状態異常:なし

職業:初期冒険者

スキル:【転移魔法(魔王特製)】【バグログ】

HP 65/65 MP660/560(+100)

力5 頑丈さ3 素早さ4 知識2 魔法力1027 器用さ2

――――――――――――――――――――――――



アレ? 俺こんなにMPと魔法力高かったっけ?


最後にステータスを確認したのはマニィの呪いを解呪したときだ。


その時はこんなに能力はなかったハズだ。何故?



『俺様の体を作った際、100兆回くらい転移魔法を使ったことになるから、対応した能力が上昇したんだと思われバグ』


「マジか?! じゃあバグログもどきを何体も作ればレベル上げが捗るんじゃ?」


『同じような作業をしても能力は、もう上がらないだろうバグ。

上昇値を見るに、100万回くらい転移魔法を使って成長が止まったっぽいバグ』


「え、つまりこれ以上転移魔法使っても能力上がらないと?」


『よほど奇想天外な使い方をしない限り、そうだろうなバグ』



せっかく能力を鍛える方法が見つかったと思ったのに、残念だ。


まあいいや。俺はギルドカードを見せる。



「ほぉ……」



老人は虫眼鏡を取り出し、ギルドカードを見る。



「本物だね。しかしまあ、大陸に20人もいないSランクにお目にかかれるとは驚きだ」


「そうなの?」


『Sランク相当ならたくさんいるバグ。

あのマニィもそう、能力だけなら遊角よりも強いバグ』



全然そんな風には見えなかったけど。



「ところで遊角君、君は冒険者ということだが、自分のきちんとした住まいは持ってるのだろうか?」


「うんにゃ?」


「そうか……残念だが、家なしには奴隷は売れない決まりなんだ。

済まないね」


「あらら」



決まりなら仕方ない。俺は奴隷屋を出る。




「にしても、見事に人間の奴隷ばっかりだったな。

ああ、エルフの奴隷が見たかった」


『マニィの浮遊島は、ほとんど人間で構成されている町ばかりバグ。

基本的には他種族は嫌悪の対象バグよ』


「ふーん」


「へへへ、旦那、今そこの奴隷屋から出てきましたっすね?」



黒い肌をした、耳まで隠れるターバンみたいなものを被った男。

そいつが俺に話しかけてきた。



「あっしは流れ者の奴隷商。

あんな老人より、よっぽど旦那様の気にいる品を用意できるっすよ」




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