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その転移魔法、チートですよ?  作者: 気まぐれ屋さん
1章 イントロ~屋敷移住まで
1/66

1.その転移魔法、チートですよ?

注意! この作品は打ち切りENDです。


気がつけば俺は、薄暗い小部屋にいた。

ロウソク1本置かれたテーブルと椅子2つ。

それだけの簡素な部屋。


椅子には俺、佐倉遊角さくらゆうかくが座っている。

そして机を挟んだ対面には、粗末な服の女性が椅子に座っていた。




「ユニティオへようこそ、あなたを歓迎しましょう」




女性は両手を広げ、歓迎の意を示す。

見た目は20歳前半、色白の肌に、髪は胸の高さまで伸びており、その金髪にはコインのような見た目をした装飾を付けている。


俺はというと、黒髪黄色人種の典型的な日本人スタイル。

ちなみにパジャマ姿である。



「ええと……?」


「あなたを歓迎しましょう」


「いや、歓迎って」



俺の記憶が確かなら、先ほどまで俺は自宅の自室のベッドの上で、あくびしながら伸びをしていたのだが。


まだ夢の中にいるのだろうか?



「夢ではありませんよ」


「人の頭の中を読むな」


「あなたがいる場所は、あなたがいうところのいわゆる異世界の1つユニティオです。

あなたは私、かねの神マニィ・ギンミィによって地球世界から転移させられたのです」



神を自称する、変な名前をした金髪お姉さん(俺は15歳なのでおそらく年上だろう)はそう説明してくれた。



「いやー、地球世界から人をくすねるのって、結構大変なんですよ?

あそこ物理法則はあるくせに魔法法則全然ないですから」


「さっきから一体何を……」



言ってるんだ、と言おうとした所で俺は気づく。


このシチュエーション、俺の大好きな異世界転生物のネット小説のそれに近い。

ひょっとして……




「俺って、死んで異世界に転生したのか?!」


「死んでませんよ? 生身のまま転移させましたし」


「いや、何だっていい! ここは俺が知ってる世界とは違う

異なる次元に存在する世界、つまり異世界、ってことだよな?!」




夢にまで見た異世界転生!

(転生はしてないらしいが)


ネット小説を読みながら、俺がもし主人公なら可愛い女の子を片っ端から集めてウハウハしてやるぜー!

と妄想していたあの日々。


とうとうやってきたぜ、俺の時代!



「で、わざわざ俺を呼んだってことは、何か頼みごとがあるんだろ?」


「なんか急にやる気を出しましたね……」



お約束所では、頼みごとといえば、



「おおかた、魔王討伐ってところか?」


「は?! 魔王討伐?! いやいやいやいやいや!!

無理無理無理無理無理絶対無理ですってかヤメテ?!!」



思い切り否定された。



「どうして? そんなに強いの?」


「あの方は強い弱いとか、そういう次元じゃないんです。

地球世界には魔法法則がないからなじみがないかもしれませんが、あの方は魔法法則のルールそのものなんです」


「??? よくわかんないけど、どういうこと?

ってか知り合いなのか?」


「魔法は誰が法則を決め、誰が許可し、

誰が管理していると思ってるんですか? 魔王ですよ、魔法の王」


「俺の知ってる魔王は、人間を大量殺りくする悪い奴ってイメージなんだが?」


「その魔王は、悪魔の王とか魔族の王とか、その類じゃないですか?

神から言わせれば、勝手にしろよって感じの有象無象うぞうむぞうですが」



何だか分からんが、俺が呼びだされたのは魔王討伐のためではなかったらしい。



「じゃー、結局のところ、俺はなぜ呼びだされた?

俺に何を期待してるんだ?」


「待ってましたその言葉! 実はですね。

私は地上世界に生まれた金の神、あ、人間の願いで生まれた新米の神なんですけどね?

この4000年間くらいの間は、そこそこ信者がいたのですが、最近めっきり信者の数が減ってしまいまして。

それでどうするかなと考えたところ、親友の遊びの神プレから異世界人を使って信者を増やすのはどうか?

というアドバイスを貰いまして。

ほら、異世界人って目立つじゃないですか。

宣伝にうってつけだと思いましてね。

だから私も最近の流行に乗っ取って

誰か適当に召喚してみたところ、あなたを召喚したわけですよ。

本音はもっとイケメンが良かったんですがこの際わがままは言いません。

ですから私はあなたに信者増加の依頼をすべく……」


「長い! 3行で要点だけ言え!」



イライラした態度をみせると、金の神はしゅんとなり、再び話を続ける。



「つまりですね、私の信者の数をいっぱい増やして欲しいわけです」


「最初からそう言えっての。

よし分かった。引き受けよう、ただし条件がある」


「条件ですか?」


「そう。俺にその依頼をしてほしかったら……俺にチート能力を与えてくれ!」



チート能力。もはやお約束。

主人公を主人公たらしめる、いわば選ばれし証といっていい。

そんな力に憧れる俺、15歳。



「新米の神の私に、能力付与なんて大層なことできないんですが、……うえぇぇぇぇ!?」



大声をあげ、何事かと思いきや、テーブルに人形がコトンと現れた。

30cmくらいの人型のそいつは、子どものらくがきのような不気味な顔の面を被っている。



「久しぶりである、作られた神よ」


「ま、ままま魔王様?! 何で?! どうしてここに?!」



取り乱すマニィ。金髪をぶんぶん揺らしながら驚愕した顔で目の前の人形を魔王と言い……魔王?



「これが魔王? 思ってたのと違うぞ」



不気味ではあるが、もっとこう、邪悪で、巨大で、恐ろしい見た目かと思ったのだが。



「暇すぎて死にそうなところに、ちょうど魔王の噂をしているのを耳にしたのでな。

来てやったのである」


「ははーっ。ありがたき幸せー」



マニィが頭を下げている。

この人形さんってそんなに偉いんだろうか。



「俺は佐倉遊角。あんたは何て名前?」


「ちょ、ちょっとー?!」


「人間よ。名前とは人間が作った概念の1つである。

人間史が始まるよりもずっと前に生まれたこの身に、名前など無いのである」



何を当たり前な、と言わんばかりの魔王。

とりあえず人形魔王と呼ぶことにする。


喋る人形が居るのなら、他にもいろんなファンタジーな生き物が居るってことだよな!

何だかワクワクしてきたぞ!



「そしてチート能力が欲しい小僧に、誰もがうらやむ能力を与えてやるのである」


「チートキター!」


――――――――――――――――――――――――

佐倉遊角は【転移魔法(魔王特製)】を習得した!



【転移魔法|(魔王特製)】

説明:

あらゆる物理物質、物理衝撃、魔法物質、魔法衝撃を転移させることができます。

通常の転移魔法が転移対象のMPx2必要なのに対し、この転移魔法に必要なMPはありません。

通常の転移魔法はLV500以上で習得可能なのに対し、この魔法は魔王が認めた者のみ使用できます。

また習得者は簡易転移魔法による免疫力を獲得します。

――――――――――――――――――――――――



頭の中にこんなメッセージが流れてくる。



「おお! 転移魔法! つまりはテレポートだな!

知ってる場所や町に好き放題瞬間移動できる、あのお約束の便利魔法!」


「まあ、そういう使い方もできるのである」



さっそく第一チート能力を入手だぜ!



「で、他には?」


「え?」


「ふむ?」


「まさか転移魔法だけってわけじゃないだろ?

最低でも攻撃魔法と防御魔法。

あと回復魔法くらいないとやってられないぞ?」



テレポートだけ出来たって困るだろ。

異世界の強いオークやらドラゴンやらを倒すには、攻撃手段が必要だ。

防御手段はなくても、せめて回復くらいはできなければ心もとない。



「いや、十分であろう。では我はこれにて失礼」



魔王人形は消えてしまった。


あれ? チート能力くれるんじゃないの?

転移も便利そうだけど、それだけじゃ異世界で生きてけないよね?

あれあれあれ?



「じーっ」


「そんなに見つめられるとテレるぜ」


「羨ましい……」


「羨ましい? 何が?」



俺が聞くと、マニィはため息をつき、



「あなたには価値が分からないかもしれませんが、その転移魔法、チートですよ?」



マニィが発したこの言葉の意味を、この時の俺はよく理解していなかった。



誤字報告にご協力ください。

誤字のあるページの下のリンクから報告出来ます。

場所が分かりにくいと思うので、画像載せておきます。


挿絵(By みてみん)

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