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月花  作者: きーん
プロローグ
1/12

予備隊員の日常

-prologue-


遠い昔、ある小さな村には18歳になったばかりの1人の少年が居ました。

彼の隣の家には同じ歳の女の子が住んでいて、家族同然に育って来ました。

暖かい村、優しい村人、大事な家族に大好きな女の子。

たくさんの大切なものが彼にはありました。


それがーー

ある日突然、目の前から奪われていきました


本当に突然の事でした


彼は自分を責めました


奪っていった人間たちを憎みました


憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで


そうして彼は、望みを叶えました




-------------------------------------




時は現代、中央政府軍の予備隊員達は相変わらず軍基地内の訓練場を走り回っていた。


「おら、お前らペース落ちてんぞー。しっかれやれー」


やる気のない声に激励されながら100人もの予備隊員達が教官の前を走っていく。


「いやっ!教官まじ、でもう無理っすって!」


俺は息絶え絶えになりながら必死で訴えた。汗が頬を伝っていく。なにせもう、30kmもこの予備隊の訓練場を走っているのだ。共に走っている仲間たちも既に限界を超えている。


「あ?こんぐらい走れる体力無くて中央政府軍でやってける分けねーだろが」


教官は芝生に寝そべりながらそう言い放った。

右手には飲み物を持っている。応援する気はさらさらないようだ。


「っ、なら、教官はこの、きょり、走れるんすか!?」


若干の怒りを込めて叫んだが、


「いや、無理だけど」


そう言って美味しそうに飲み物を飲んだ。

休憩を一切与えず自分は見せつけるかのように休む。オマケに「さて、ちょっと寝るかぁ」などと言う言葉を聞き、ついにキレた俺は禁断の一言を教官に告げた。


「だ、か、ら、教官はダメ人間って言われるんですよぉ!!!」


教官がピタリと動きを止めた。

…氷のような視線を感じる。

あれ、これは、仲間たちの視線だ。


「へぇ、なんだ、金崎かなざき君まだ走れる元気あったんだね…?」


教官はまるでイタズラが成功したかのような顔を浮かべた。目が合った俺はやっと教官に嵌められたことに気がついた。

ニコっと笑った教官は、さっきまでとは比べものにならないくらい快活な声で俺たちに伝えた。


「はい!!もう一周頑張ろーね!!」


「金崎ぃいいいい!てめぇえええ!!!!」


「ごめんなさい!!!」


ちなみに一周5kmである。





俺の所属している中央政府軍は、その名の通り国の首都に位置する。もちろん街の中心にある訳ではないが、首都を取り囲む森と街の間に存在している。

この中央政府軍には国の端々にある軍基地とは違う点がいくつかある。


一つ目は、この中央政府軍に居る隊員達は全員、知力実力ともに高い実力を持っていること。

二つ目は、各軍基地への指令を出す軍令機関がその敷地内にあること。

三つ目は、俺の所属する予備隊というものがあること。

つまり、中央政府軍は一番偉いのである。


そんなスゴイ軍に所属している俺は、予備隊に所属する隊員だ。この予備隊は言わば教育機関のようなもので、1年間中央政府軍の本隊に入る為に必要な知識、戦闘技術、その他もろもろを教わるところである。


神弥しんや、なにしてるんですか、早く行きますよ?」


「あ、悪りぃ!すぐ行く!!」


超長距離ランニングが終わり、顔を洗ってボケーとしていた俺は声の主の方へ向かった。


「ん?咲花しょうかは顔洗わなくていいのか?」


「僕はあの程度のランニングで汗なんてかきませんよ」


ニコっと咲花は笑顔で言った。


「…お前の体力マジでどうなってんだよ……」


なかば呆れながらおれが言うと


「普通だと思いますけど?」


ニコニコしながら嫌味で返してきた。

チラッと相手を見やる。

身長は俺より7cmデカイ175cm、のくせに体重は52kgしかないヒョロ男だ。しかもまつ毛が長く輪郭の線も細い、加えて白いサラサラの髪を顎あたりまでのばしていることもあり、一見すると女子みたいなのだ。体力がすぐ無くなりそうな見た目のくせに、俺は今までこの男が訓練でバテてている姿を見たことがない。


「神弥は体力あんまりないですよね」


「まぁな!!」


誇れることじゃないが、俺は予備隊の中でも体力がない方だと自覚している。


「そんな堂々と言うとは…」


「つか、お前の体力はマジでおかしいと思うぞ!」


ビシっと俺が指を指すと咲花は、ちょこっと首を傾げた。


「んー、でも花深月も平気そうでしたよ?」


「あいつもお前も体力が宇宙に繋がってるんだろ、俺知ってるんだぜ!」


「僕はともかく花深月はなみづきはそうかもしれませんね」


「やっぱりか!!」


この花深月とは、女子なのに予備隊の中でも1.2を争うほどの体術をもっていて、男子に負けないほどの体力をもっている人物のことである。しかも性格が結構キツく、常に不機嫌そうであることから、入隊式の3日後には[姫君(暴君)]というアダ名がついた伝説の女子だ。

俺はそこでふと、咲花の後ろから歩いて来た人物に気づいた。


「うわ!」


思わず声を上げた俺の視線の先を追った咲花は、眼を細めた。


「あー、噂をすればってやつですねぇ」


「-------どういうことよ?」


どうやら途中から会話が聞こえてたらしい。

面倒くさくなりそうな雰囲気を感じたのか、咲花は汗もかいてないのにそそくさと顔を洗い始めた。


「ちょっと、神弥。あんた達なんの話してたのよ」


ずいっと詰め寄って来た人物は、花深月だ。今日も相変わらず不機嫌そうな顔をしている。


苦笑いを浮かべながら俺は答えた。


「いや!!花深月と咲花は体力すげぇなって話ししてたんぜ!」


「ふぅん…?」


じろじろと見られながら俺は乾いた笑いを浮かべた。ここをやり過ごさないと、後で酷い目に合うのは目に見えている。

前に一度、本人が居ないと思い咲花と花深月は実は男子にだったんじゃないか、という話しで盛り上がっているところに突然現れた花深月は


「この後の実技訓練、覚悟しておきなさい。ボコボコにしてやるわ」


と言うセリフを言い残していき、その後の実技訓練で俺は宣言通りボコボコにされたということがあった。


あの日以来俺は花深月に逆らわないと心に誓ったのだ。


「まぁいいわ。それより境月きょうげつ教官が今日は受け身の訓練するから相手探しとけって言ってたわよ」


「受け身⁉︎⁉︎」


その単語をいう聞きたくない人物が言った気がする。


「なによその反応、あんた、ただでさえ体力もないし武器もろくに使えないんだから受け身ぐらいちゃんと出来るようになりなさいよ。」


「お、おう。そうだな」


ボロクソ言われているが、これは心配してくれてるのか?

俺が返答に困っていると花深月は優しげな表情を向けてきた。


「神弥、私はね、あなたを心配してるの」


「花深月……」


「だから私が受け身教えてあげ……」


「咲花!!!一緒にペア組もうぜ!!」


180度首の位置を変え、俺は後ろにいた咲花に言った。後ろで舌打ちが聞こえたような気がした。


どうしましょうかねぇなどと意味不明な事を言っている咲花を引きずって、俺は訓練場に向うのだった。

初めてまして。きーんです。

文章書くのが苦手で、さながらレポートのような口調になるときがあるかもしれません。ご容赦下さい…。

長く続くことを前提に、最初に意味深な文章が入っていますが、ほぼギャクになる予定なので楽しんで読んで下さい。

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