始まりの寝起き
初投稿となっております。連載として続けていきますのでどうぞよろしくお願いします。
第1話
家が燃えていた。
そんな一言で表す事ができるような情景が僕の眼前に広がっている。
「あぁー、寝床どうすっかな」
しかし僕の頭は思いのほか冷静だ。
「あぁー、それにしても眠い。」
僕は一人そう呟いた。意識もほとんどないままに。
遠い彼方から意識が戻ってくる。体の感覚はほとんどない。寝起きはいつもこうだ。体の感覚は無いし、意識もぼんやりとする。
しばらく寝ころんでいると、体全体が暖かくなっていく。どうやら目を閉じていてもうっすらと分かるくらいに、窓から差し込む日光が僕の体にさしこんでいるようだった。
昼間はとても鬱陶しい日光だが、朝は暑過ぎもなく眩し過ぎもなく、とても心地がいい。
しかし日光の暖かさによって体の感覚が戻ってくると同時に背中にうっすらと痛みを感じ始めた。
「なぜ背中に痛みが?」
昨日は3年間貯めた小遣いを使って超高級ベッドを買った。そしてこれからの夏休み悠々自適な睡眠ライフを送る第一歩としてベッドという名のアルカディアで寝たはずなのだ。
「このベッド不良品か? もしそれなら早速今日メーカーにTELするか」
しばらく日光という快楽に身を委ねるつもりだったが、背中の痛みがそれを邪魔するので仕方なく僕は目を開けた。
「朝食食って二度寝すっか」
そこはいつもの僕の部屋が広がっていた、いたはずだった。
僕は公園の滑り台で寝ていた。
「…………………………は?」
僕は昔、親に連れて来てもらいすっかり思い出の場所となった近所の公園にいた。
「ああー、どうやら僕はまだ寝ているようだ、まあ夢の中でもう一眠りするか」
しかし目をつぶってもなかなか意識が落ちない、それにさっき感じた背中の痛みも妙にリアルになっていく。
「はははー、どうやら僕は夢の中で痛覚まで感じることができるようになったのかー、これは面白いなー、あははははー………………………………どうなってんだよこれ!」
もう認めるしか無いだろう背中の痛みは鮮明になっていくし、周りを見渡せば公園の入り口に井戸端会議真っ最中のおばはん連中が、こっちを見てヒソヒソと話している。
「なにあれ、朝から滑り台で寝てるわよ」
「ちょっとあれ、ホームレスってやつじゃないの?」
「嫌ねー、だからあんなに貧乏くさい服装で髪もボサボサなのよ」
「それにそうとう貧相な顔立ちでいかにも品がなさそうザマすし」
「聞こえてしまいますわよ皆さん。あのような人間は盗み聞きには慣れておるでしょうから」
なんでおばはんの会話ってこんなに苛々するのかな?僕ホームレスじゃないし、今時ザマすとか使っちゃてる人いるし、あんなに大きな声だったら誰でも聞こえるし、しかも顔立ち関係ないだろ!何気に傷つくんだよ。
少し弁解しようとも思ったが、人間観察が趣味の暇人どもと相対するのも嫌だ。
「しゃあない家帰るか」
僕は公園から一人、家路についた。
「聞きました皆さん?あの人家とか言いましたわよ。さあて次はどんな公園を目指すのかしらね?」
「まあ、何処にもないでしょうけどね」
おほほほほほほー、
そんな戯言を背中で聞きながらぼ僕は今度こそ家路についた。
「今の会話何処が面白いんだよ?それに品がないのはあんた等だろうが」
僕はしばらくそんなどうしようもないことを呟きながら、一人歩いた。