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『兄妹』玖話

玖話 武器選択





高槻兄妹がこの世界に来てもう数日が経ち、城の生活にも何とか慣れて来る頃合いである


日が昇り朝の日差しが二人を包む

少し眩しいのか命が微かに目を開ける


「……………?」


命はフニフニした何かを覚醒していない頭で考えるが気持ちいいのでそのまま考えることを止めた


「ん……」


一瞬声らしきが聞こえたが気にしなかった


「…ん~……」


何か不満気な声がして、それはフニフニされないように命にしがみついた

そこで命は段々と脳が覚醒していった


「湊……」


目を開けると目の前に綺麗な黒髪の頭があり少しずつ下を見ていくと湊であることが分かった


「何やってんだか」


そう言いながら湊をゆっくり揺らしながら起こす

因みに先ほどのフニフニしたものは湊の頬である


「湊、起きろ」


「…ゃ~ぁ……」


反抗のつもりなのか命に抱きつく力が少しばかり強くなった


「嫌じゃないだろ。もう朝だ」


「…ん~ん……」


のそのそと起きあがり目をゴシゴシとこすり、少しずつ覚醒していくと同じベッドの上に命が居るのに気づき少しばかりボーっと見る


「おはよう、湊」


「おは…よう?お兄ちゃん」


湊の寝間着は学校のジャージであるが、湊は少し丈が合わず袖から手が出ていない

命の寝間着はないので学校のYシャツのしたに着ていたTシャツと下は学校の制服である


「あれ?何でお兄ちゃんが……」


「それはこっちのセリフだ。湊のベッドは向こうだろ」


命の指差す方を見た後、もう一度命を見る

湊はえへへ、と笑い


「久しぶりにお兄ちゃんと寝ちゃった♪」


と嬉しそうに言いながら、また抱きついてくる


「まあ俺も、湊の頬を久しぶりに突っつけて気持ち良かったからな」


湊の頬をプニプニしたりムニムニしたりフニフニしたりしながら言う

湊も嫌がらず気持ちよさそうに、はふぅ~、と変わった息を吐く


「さて着替えるか?」


「うん!」


朝から元気な二人はお互いに背を向けあい着替え始める

流石に向かい合いながら着替えるようなことはしない



朝食を取った後この数日で図書館の本はほとんど読んでしまったので特にすることがなくなった二人は部屋に戻った


「湊、勉強するか」


「勉強って?図書館の本はほとんど読んだし、必要なこともまとめたよ?」


その返答を聞いて命は鞄からノートと教科書を出した


日本むこうの勉強を疎かには出来ないだろ?」




場所は変わりレイラ・マーティンの自室


「お母様、お父様、おはようございます」


レイラは二つの指輪を見ながらそう言った

レイラの親は既に他界している理由は――召喚の生け贄

命と湊には話していないが、図書館の本を読み尽くす勢いでいけばいずれつかまれることである

最初はレイラ自身も召喚を拒んだ。親を亡くすなんてことには嫌だったのだ。しかし、今はこの地の姫として立派に務めを果たしている


「お母様、お父様、私最近気になる方が出来ました」


着替えをしながら指輪に話しかける

この姿を誰かが見れば怪しい人だろうがレイラにとっては両親、つまり指輪に話しかけることは大事な日課である


「名をミコト・タカツキと言います。私初めてでした他人に、それも違う世界の人に怒られたの」


怒られた、と言いながらその顔は満面な笑みだった


「それに彼は私の名前をハッキリと呼んでくれました。マーティンではなくレイラとして呼んでくれたんですよ」


マーティンとはレイラの家名ではなく、この城を継ぐものに与えられる謂わば称号のようなものである

レイラの両親はレイラの前の王と妃でその娘として絶大な支持を得て、マーティンを継いだのである

つまりレイラの親、スロウ・マーティンとレイス・マーティンの子として産まれても、レイラ・マーティンではなくレイラなのである

この世界には家名がなく城や地を受け継いだものに家名もとい称号が与えられる。例えそれが血の繋がらない者でも


「久しぶりに名前で呼ばれました。城の方々は姫と呼ぶんでそれになれてしまっていたので、本当に嬉しかったんですよ?」


ふふっと笑った後身なりを整えたレイラは指輪をゆっくりと中指と薬指に通し


「では行って参ります。お母様、お父様」


部屋を出たレイラは命と湊が朝食を食べ終え、彼らに設けられた部屋にいることを知り少し速めの歩調で向かう


「ミコト様、ミナト様、よろしいですか?」


「お兄ちゃん、わたし……もう、無理」


「何言ってんだ。こんなことでへばるなよ」


「も、もう限界だよ~」


何やらドア越しに声が聞こえてくる

レイラはなにを思ったのか顔を赤くして、いきなり入ることはせずゆっくりと扉を開け、恐る恐るといった感じに声をかける


「ミコト様、ミナト様、居らしたのなら返事を……?」


「だーかーら、大名って言うのは幕府から所領一万石以上与えられた人のことを言うんだよ。そんで所領一万石以下で将軍に直接目通り出来る身分のものを「旗本」そうでない者を「御家人」と言うんだ。これぐらい常識だ」


「歴史って苦手~。どうして過去を振り返らないといけないの?」


「それはだな……ん?レイラ?」


そこで命は扉を開け放しのまま立っているレイラに気づいた


「レイラさん、どうしたの?」


「え?あ、いえ……お二人にお話があって」


レイラが見たのは机に突っ伏して頭から煙が出そうなほど疲れている湊と、本を丸めて湊の頭をペシペシと軽く叩いている命の姿であった

思っていたことと違ったせいからか、レイラは少し頬を赤くして二人からそっと視線をそらして答える


「分かった。もう少し待っててくれ、湊が徳川の大名をフルネームで間違えずに言えたら終わりにするから」


「えぇ~っ!」


丸められた教科書で湊の頭をバシッと叩く


「これぐらい簡単だろ。もし三回以内に言えたら一週間は苦手教科をやらなくて良いぞ?」


その言葉に湊はものすごい反応を見せる


「本当に!?歴史と英語は当分やらなくて良いの!?」


命はあまりにも反応が良すぎるので苦笑して頷くことしか出来なかった

レイラは何のことか分からず、首を傾げたがとりあえず待つことにした


「それじゃ、始め!!」


その掛け声に湊はペンを猛スピードで走らせる



そして数十分後


「よくやったな~、湊!合格だ」


「や、やったー!」


「おめでとうございます、ミナト様」


二回目で全て覚えることが出来たのは凄いと命は感心した

レイラも最初はよく分からなかったが、湊がテストしてる間に命に教科書を見せてもらうが、この頃でも魔法は無いんですね~、と呟くのを見て命は苦笑した


「さてと、お待たせレイラ」


勉強道具を片付けながらレイラに何の用か聞く


「あ、はい。お二人に今日から武器の方をお渡ししようかと……」


その言葉に命はピクリと反応した


「武器を?」


「はい。ミコト様とミナト様にあう武器を決めていただきたいのです」


「造ってもらうこともできるか?」


「物によりますが」


命は自分の鞄からブーメランを取り出す


「これを改造又は新しく造ること出来るか?」


レイラは命のブーメランを受け取り、じっくりと眺めた後命を見て


「これを改造するのは無理ですが、製造することは可能です」


「そうか、それじゃ頼む」


「はい。では、これは預かっときますね」


命はもう一度頼む、と言って湊を連れてレイラと一緒に武器倉庫に向かう



一度外に出てしばらく歩くと一人の兵がピシッと姿勢正しく立っていてレイラを見かけても特に慌てた様子もない


「姫様、お待ちしておりました」


鍵は開いているので扉が開くと少し埃っぽい感じがした


「どの武器が良いのかはお任せします。もし希望があれば言ってください」


レイラの言葉を耳に入れながら倉庫の中を探しながら、湊の様子を見る


「やっぱり、弓矢かな~。でも鉤爪も……」


ぶつぶつと呟きながらいろんな武器を手に取りながら自分にあった武器を探していた


「ん?これは……」


命はブーメラン以外の武器は使う気はなかったが気になる物を見つけたので手に取る


「……鎖?」


長さは約一メートルぐらいでこれでは武器として合わないだろうと思っていたら、後ろから話しかけられた


「ミコト様、それにするんですか?」


じっくりと眺めすぎていたのかレイラにそれで良いのか聞かれる


「ん?そうだなー。でもこれって武器として成り立たないだろ?」


鎖の両端を持ちその長さをレイラに見せる

レイラはあっ、と声を出した後この武器の説明をする


「これはですね。魔力によって長さを変えることが出来るんですよ。名は〈マナ・コイル〉です」


一見便利そうに見えるが何故誰にも使われないのか、その理由もレイラは話してくれる


「それが倉庫に眠っているのは、振り回されるからです」


「振り回される?」


「はい。長さの調節が難しいんです。長すぎればその分ハズしたときに懐に入られてしまいますから」


「だからといって短すぎてもリーチが短く、魔法に対抗できない」


命の言葉に頷きながら話を続ける


「そうなんです。ですから近いうちにこのマナ・コイルは破棄しようとしたんです」


「これ、もらって良いか?」


レイラが破棄と言った途端、命はこれを譲ってくれないかとレイラに頼む


「え、ですが、その武器は……」


「使い方次第さ。湊、決まったか?」


「うん、決まったことは決まったけど……」


湊は武器を二つほど持ってくる


「一つは弓矢だけど、この鎌を少しばかりいじれる?」


レイラに手渡した鎌は湊よりか少しデカく短くしてほしいのだろう


「あと、この鎌に仕込みをして欲しいんだけど、お願いできるかな?」


レイラに耳打ちしていて命にはどんな仕込みをするのか気になったが、湊のことは湊自身に任せることにした


「……ちょっと難しいですけど、頼んでみます」


難しい顔をしてレイラは答えた。湊がどんな条件を出したのか非常に気になるが、大丈夫だろう

湊自身も自分に都合のよすぎることを端でしまったかな、と首をかしげているが無理なら無理で別にいいと思っている

結局、命の持つ武器は持ってきたブーメランと特殊鎖マナ・コイル

湊の武器は弓矢と鎌(改造)である


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