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『兄妹』陸話

陸話 魔法……





「お兄ちゃん、しっかり!」


「何だよ、一体……!」


湊は命の脇腹から溢れ出る血を頑張って止血しようとするがその手つきはどこかぎこちなく、震えてるような感じがする


「……今のは魔法」


「!?」


突然の声に命と湊は振り向く、いつの間にか近くにローブを着たリンがいた


「……貴方達は魔法、使えない」


「だから、負けると?」


リンは頷き杖を構える


「……気絶させれば、こっちが勝つ」


「それは…どうかな」


「?」


強気の命に少し警戒するが先に魔法を発動させればいいと思ったリンは再び集中する


「湊!」


「あ、うん」


湊は制服の胸ポケットからカッターを取り出し、投げ方は素人だがちゃんと当たるように投擲した


「!?」


呪文の詠唱に集中していたリンは咄嗟の攻撃にガードなど出来ないが咄嗟に魔法を切り替えた


「フレイム!」


カッターはリンの杖より撃ち出された火の玉により燃えてなくなった


「やっぱり厄介だな。魔法は」


「シャイン!」


「うっ!」


言いながらリンに接近するが唱えた魔法が発動し目の前で巨大な光が発光して命は眼が潰される

リンは杖の先を命に向け更に魔法を唱える


「アクアストーン」


「やらせない!」


続けて唱えられた魔法は湊が弓矢で攻撃を繰り出し、水の塊が矢にあたり弾ける

リンはありえないようなものを見るような眼で見る

普通の弓矢で魔法を相殺するには魔法の中にある核をつぶすか、同じまたは同等の魔力をぶつけなければ絶対に不可能なのだ


「お兄ちゃんは守ってみせる」


「なら俺は湊を守らないとな」


「!!……動ける、何で」


「俺に聞くな」


あれほどのケガを負い、なお且つ視界をつぶしたはずなのに命の目はしっかりと相手をとらえており、湊がどこにいるのかも把握している

命自信何故今動けるのか全くわからない。だがわからないなら後で考えればいいとそう思っていた


恐怖心を払い、リンをしっかりと見据える

今ので魔法の厄介さが分かった。ならば、優先事項の変更をする。先ほどの二人が来る前に倒す


「お兄ちゃん!」


「行くぞ!」


湊が矢を瞬時に三本打ち出す

リンは魔法でそれらを落としていくがあることに気づいた


「……いない」


逃げた、わけではない。あの傷で逃げるのはキルトとルイに見つかったときにやられると現役の雇われ魔法師なら簡単にわかる

命がリンの視界から消えどこにいるのか探そうとしたとき後ろから声がかかった


「先ほどの礼をしないとな」


「……いつの間に!!」


振り向いたリンの鳩尾を殴りつけた

女性を殴ることに一瞬の抵抗を感じたが、ここで負ける気にはならなかった


「かはっ!」


リンは杖から手を離し、そして地面に倒れた


「!! リン!」


「この野郎!」


息をつく暇もなくキルトとルイが思いの外早くやってきた。命と湊は驚いたがそれは一瞬のことだった

命は制服の懐に手を入れ、何かを取り出しそれを見えないように明後日の方向に投げた


「悪いな。将を射んと欲すれば先ず馬を射よってね」


「なに言ってんだ!」


日本の格言は当たり前だが此方では理解されない

命と湊の作戦は将――つまりキルトは倒さず、先にルイを倒そうとしたのだが、リンが単独で行動していたので先に潰すことになった


「ルイ一人で突っ走るな!」


「お兄ちゃん」


キルトはルイに戻るよう言いながら湊の攻撃を防ぐ


「言っとくけどもう勝負はついた」


命はそう言って腰に手を伸ばした


「なんだそれが武器か?」


「そんなとこだ!」


命はそれを思いっきり投げる

それはルイに向かって回転しながら向かっていくが


「見え見えだ」


それを軽々と躱し命との距離を縮め、剣を振り下ろした

命は不格好ながらもギリギリで避け、その際にルイの手首を手刀で叩き、剣を手放させる


「しまっ……」


先ほど投げた武器が戻ってきてルイの首の頸動脈にあたり気絶した


「よし!」


上手くいくかはなんとか成功したことに安堵する


「ルイ!」


「残るはキルトさんのみか。どうする?」


「無論、戦う!」


そう言ってキルトはルイよりか早く、そして鋭い攻撃を繰り出してくる

先ほどまでの湊の攻撃が嘘のように当たらなくなってしまった


「はあっ!」


湊の攻撃を無視し、命まで一気に距離を縮め剣を横なぎに打つ


「ちっ!」


「お兄ちゃん!」


命は躱すことが出来ず、腕を深く斬られる

その時に湊の叫びが聞こえた気がしたが、気にするほど余裕ではなかった


「せいっ!」


剣で突いて来るがその軌道は読むことが出来たので躱したが


「ウィンド!」


「ぐあっ!」


魔法が突然打ち出され命は吹き飛ばされて木にぶつかった

先ほどまで優勢だと思っていたのだが、まるで今までのが遊びだったかのように簡単に兄が倒れたことに湊は驚きながら兄を見る


「お兄ちゃん……」


「次はミナト・タカツキか」


「よくも!」


湊は弓矢を構えるが、その前にキルトは隠し持っていた短剣を湊に投げる

湊はそれを避け、弓を引き矢を打ち出す

狙うは足、だがそれをジャンプして避けられるがそれは想定内で、湊は制服のスカートのポケットに手を入れ携帯の通話ボタンを押した

プルルルルル


「な、なんだ!」


キルトは突然の音に不覚にも足を止めてしまった

その隙を見逃さず矢を再び打ち出し、腹部を狙うがキルトは掠めながらも避けた、が――


「よくやった、湊……」


「な!いつの間に……!」


木に叩きつけられた命がいつの間にかキルトの後ろにおり、その手には先ほどルイを倒した武器『ブーメラン』が握られていた


「これで、終わりだ!」


「ぐっ!」


ルイの時と同じく首の頸動脈にブーメランを思いっきりたたきつけて気絶させた

全員を片づけ命はその場に座り込んだ


「お兄ちゃん!」


心配して駆けつけた湊に命は片手をあげ、応える


「ばっちしのタイミングだったぜ」


「お兄ちゃんが私が見えるように明後日の方向に投げてくれたから」


命があの時懐から取り出し、投げたのは携帯電話だった

あれは相手を動揺させ油断させる作戦だったがどうにか成功して倒すことが出来た


「でも魔法って厄介だな」


命はキルトとリンを見ながら言った

初見だから、と言い訳する気は毛頭なくただただ感激していた


「奇襲には持ってこいだよな。威力は低いが、いつ来るかわからなかった」


命がこうして動けたのは魔法の威力が弱かったからであるのだが、リンのあの時の表情からすると動けないほどの攻撃でもあったはずである。それなのに自分が動けるのは自然治癒能力が速いからかもしれない


「それにしても、痛くない?」


「いてぇ……」


命は湊の体に自分の体を預けた

湊も優しくそれを受け止め、傷に響かない程度に抱きしめる


「誰か来るまでこのままでいいか?」


「うん」


二人は木々に囲まれた場所で風に当たりながら誰か来るのを静かに待っていた

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