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『兄妹』肆話

肆話 実力を示せ




「風が気持ちいいよ、お兄ちゃん」


今はパーティーの最中だが高槻兄は人酔いをしてしまい、妹はいろんな人に囲まれて気絶しそうになったので人垣を抜けてベランダの方で落ち着いている


「そうだな。日本むこうではこういう風は浴びれないからな」


「それを言ったら星も輝きが違うね」


二人して空を眺めると星が綺麗だった

湊はこの星は地球と繋がっているのだろうか、とふと思ってしまった


「この星が地球に繋がってたらどうする?」


命がそれを言ったら湊は笑い出した


「お兄ちゃん、私と同じ事考えてる」


命はそうかと言って湊の肩に手を置きぐっと近づけた

湊はそれを嫌がらず素直に受け入れ、命の肩に頭を預ける

二人はそのまま夜空に広がる星を見上げている。こんな景色が見れるならこの世界も悪くはないな、と冗談混じりに思っていると


「あ、あの~タカツキ様」


不意に後ろから声がかけられ二人一緒に振り向く

驚いて離れる、ということもせずに港はゆっくりと名残惜しむように命の肩から頭を離す


「どうした」


「はい。大臣様がお呼びです」


呼びに来た兵は兄妹とは思えないやりとりを見て気まずくなっている

が、二人はそんな事は知らずにガイルの所に行く


「おお来たか」


「何用?」


「それがな貴族の皆が本当に強いのか見たい、と言っててな」


「力量を計りたいってことか?」


「まあそう言うことだ。嫌なら拒否しても構わないが……」


別にここで戦う必要はないが、この世界で自分たちがどれくらい通用するのかも気になったのでとりあえずやってみようかなと命が答えを言おうとしたら


「お兄ちゃんは負けません!」


湊が一歩前に出てそう言った。どうしてそういう言い方してしまうのか、そう思ったがもう引っ込みはつかないので命は珍しく湊が強気に出ている湊に任せようと思った


「と言う事は勝負してくれると?」


「はい。その代わり私達が勝てばこの城で好きに行動させてください」



「では負ければ一生この城で仕えてもらおうか」

ニヤニヤしながらガイルに命は一瞬イラッとしたが湊に任せると決めていたので何も言わない


「勝負はチーム戦。人数は二人~三人で」


「此方は三人でいいと?」


それに湊は頷き、命の手を取り部屋から出ていった

その時の命の顔は面白くなりそうだ、と言った顔つきだった




部屋に戻ってくると湊は座り込んで泣きそうな顔になった

あれだけの人の前で啖呵を切った時は成長したのかなと思ったが、どうやらそうではないらしく勢いで行ってしまい収拾がつかなくなってしまったらしい

まあ、久しぶりに強気な妹を見れたから何かを言う気はない

それより、何か戦う時に使えそうなものはないかを探すためにこの世界に来た時に落ちていた自分のカバンを漁る。湊もやらなければならないことがあるとわかっているようで自分のカバンの中身を漁り始める


「ごめんなさいお兄ちゃん」


言葉を交わすこともなくカバンの中を探っていると不意に湊が謝ってきた


「気にしてないよ。久しぶりに強気な湊が見れたし」


怒られると思っていた湊は先ほどの自分を思い返して顔を真っ赤にする

それを見て命は笑いながら言った


「湊にしては言いたいことを言うのは久しぶりだったからな。親が死んでからは遠慮していた感じだから心配してたんだ」


二人にはもう親はいなかった。湊が小学四年生、命が小学五年生の頃に死んでしまい

それから親戚の家に引き取られたが湊は兄である命以外とは最低限の会話しかしなかった

命は特に親戚に変な意識は持っていなかったので普通の会話をしていた

だが中学にあがってからも湊の態度は変わらなかったので命が頼み込み二人きりで生活をしていたのだ

その事が湊の中では兄に悪いと思ってしまい迷惑をかけまいと言いたいことはハッキリと言えなくなっていったが今回のことは命から見ればハッキリものを言う湊に安心したのである


「別に遠慮は……お兄ちゃんが逃げたって思われたくなくて」


「俺は湊となら世界の果てまで逃げてもいいけどな」


妹に言うセリフではないの気がするが命はさらっととんでもない事を言った

それを聞き逃さなかった湊は嬉しさのあまり抱きつく


「ありがとうございます、お兄ちゃん」


「礼を言われるようなことはしてないが?」


「ううん。お兄ちゃんは私にとって幸せの言葉を言ったよ」


「そうか」


あまり自覚がない命は背中に抱きついている湊を好きなようにさせ、自分は荷物の中身を漁る



暫くして漸く荷物の中身の整理が終えた二人はそれぞれ確認しあう


「俺の荷物は筆記用具、教科書、ノート、携帯、小説、財布、ポケットティッシュ、ハンカチ、鍵、後はこれ・・だ」

以上の10点が命の持ち物である


「私は筆記用具、教科書、ノート、携帯、財布、ポケットティッシュ、ハンカチ、口臭エチケット(ガムやタブレット)、ジャージかな」


以上の9点が湊の持ち物である

因みに二人とも学校までは歩いていける距離なので通学定期は持ってない


「ジャージってことは体育があったのか」


「うん。それを今朝に思い出して慌てて鞄に入れたの」


「でもこう見ると使えそうな物はないな」


「携帯も繋がらないよね」


湊は携帯を開き、画面には圏外となっている

命はそれを見た後何を思ったのか自分の携帯を開き電話をかける


プルルルルル………


「え!?」


県外のはずだが命のかけた電話は湊の携帯に繋がった。湊が恐る恐る通話ボタンを押すと


『……繋がったな』


『……繋がっちゃったね』


二人は嬉しさか感動かは分からないがどちらともなく一緒に笑い出した

ひとしきり笑った後携帯の通話を切り、筆記用具の中身を確認しあう


「俺はシャーペン、消しゴム、シャーペンの芯、ボールペン、カッター」


「私はシャーペン、消しゴム、シャーペンの芯、ボールペン、カッター、ハサミ、ノリ」


似たようなものが多いが湊の方が二つほど多い


「使えそうな物はカッターとハサミくらいかな」


ため息を吐きながら言う湊に命は困った顔で頷く

ボールペンとシャーペンでは剣には絶対に勝てないし、あの甲冑を貫くことも不可能だろうと誰から見てもわかっていることだった


「ま、後は頭だな」


「良い考えがあるの?」

「それはこれから考えるんだ」


命は自分の持ち物の一つを見てニヤリとした

この世界ではあるかどうかわからないが、不意打ちが成功すれば勝てるかもと思った

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