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『兄妹』弐拾話

弐拾話 旅立ち……





ギルドから寄り道せずに真っ直ぐクリスベルの家に戻ってきた命たち一行は、ギルド内の事を頭の片隅に追いやって明るく振る舞う


「ミコト君達はいつ旅立つの?」


「とりあえず、明日くらい」


「何の目的で?」


「私たちはミコト様とミナト様を元の世界に還すために旅をします」


「そのついでに、最近活発し始めた魔物の退治、ってところかな」


そこまで聞いてクリスベルは今まで二人の兄妹の髪色が違うことに納得した。最近異世界召喚されたのがこの二人だったのだ


「たったの三人で大丈夫なの?」


「ミコト様もミナト様も無知です。でも逆を言えば下手な知識は持っていないということになります」


レイラはそう言っているが、実際そこまでの才がある自信がない

湊もそう感じているのか、何の根拠もない期待に不安そうな表情を浮かべている。でも、それは命にしかわからない


「今日は泊まる?それとも宿屋?」


「折角ですから泊まっていきましょう」


「うん。私も賛成。お兄ちゃんもいい?」


「ああ、いいんじゃないか?」


湊はすぐに反応できたが、命はそうもいかずに曖昧に返事をする



夜になり、すでにみんな眠ったであろう時間に湊は目が覚める


(淋しい……)


一人一部屋と設けられた部屋は彼女にとって広すぎた。日本だと兄がいると確信できる安心感があるが、この世界ではその保証がなく、淋しさを感じてしまう


「お兄ちゃん」


彼女は兄を求める。確か左隣が兄、命の部屋だったはずだ

ノックをするが返事がない。もう寝てしまったのだろうか


「湊、何してんだ?」


突然声がかけられてビクリと体を震わせる。声の方を向くと命が不思議そうな顔でこちらを見ていた

いてくれた、その安心感により湊は抱きついた

突然の行動に命は驚きながらも部屋の中に招き入れる


「ご、ごめんね。急に夜遅く」


「いや、いいさ。それでどうした」


「ねえ、お兄ちゃん。私たちが外に行く必要ないよね?だってお城の人が還り方を見つけてくれるんだよ?」


今にも泣きそうな顔でそう訴えかける。確かにこの世界で外にでるのは危険だ。街の中にいれば安全であることは間違いない


「そうだな。そうかもしれない。でも、俺は早く還りたい。戻りたい」


「何で?命を賭けてやること?向こうにはお母さんやお父さんの物とかもあるけど、でも、だからって死にに行くのは間違ってるよ」


わかる。言いたいことはわかる。それに今戻ってもこの世界と向こうが同じ時間軸とも限らない。戻った先が数年後だったり、二人がすでに死亡扱いになってるかもしれない。それでも、命は戻りたかった


「彼女に会いたいんだ」


「……やっぱり、気になるの?」


「ああ、今日もそれを思って月を眺めてた。この世界の月は綺麗だよな」


彼女と同じ名前の月

月を見る度に彼女を思い出す。その度に還りたいという気持ちも強くなる


「私、怖いよ……。もし、お兄ちゃんが死んじゃったりしたらって思うと怖いよ……」


「でも、俺たちは前に進まないと。大丈夫だ、俺は死なない。湊も、死なせない」


「本当?お兄ちゃんはずっと私のそばにいてくれる?」


「ああ。そばにいてやる。お前は俺の妹だ。絶対に守る」


湊を優しく抱きしめる。その腕の中の温かさに湊は微睡みを感じていた。背中を優しく叩く兄に安らぎを覚えて、いつしか眠ってしまった


「大丈夫だ。大丈夫」


月明かりが窓から差し込む中、命は一人、自分にも言い聞かせるようにそう囁くのだった

今回は早めにできました

よかったですー


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