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『兄妹』拾捌話

拾捌 救出……





教会のそばで見張っていた湊とレイラはお喋りをしてるふりをしながら、路地から人が出てく来ないかずっと見ていた。その時に一人の男が路地から出て来たのを見て、湊とレイラは立ちあがった。--先ほど見た男だ.二人は尾行するか考えたが、命を待つことにした。もし撒かれたりしたら仲間にそのことが伝えられ、クリスベルの救出は出来なくなってしまうと思ったからだ

人混みに紛れて見えなくなるまでさり気なく男をずっと見ていたら二人を呼ぶ声が聞こえた


「すまん、待たせたな。大丈夫か?」


「問題はありませんでした。ですが、まだ場所が特定出来てなく……」


「なら待つか。もし誰か来たら捕まえりゃ良いだけだからな」


「お兄ちゃん。さっき、向こうに怪しい男を見たの。もしその男が戻ってきたら」


「そいつを捕まえる、か?」


コクンと頷いた湊を見てからレイラを見る。レイラも頷き命は捕まえることに決めた。男が行った方を一度見てから命は特殊鎖マナコイル、命名〈飛来する鎖ウィズ〉を撫でる




「湊、寝るなよ」


「だ、大丈夫。クリスベルさん助けたいから」


夕方頃そろそろ湊が寝そうなときに事が起こった


「ミコト様!!」


「!!」


レイラが呼び前を見るとしきりに辺りを気にしている男がいた。命があの男かどうか確かめると湊とレイラは頷いた

男が協会の路地に入ったところで後を付ける。男が屈むと手探りで何をしているのかと思ったら階段が現れた。その階段に入ると地面を元に戻す


「なるほど。隠し階段か」


「すぐに乗り込めますか?」


「クリスベルがそこにいるのなら乗り込む。行くぞ」


三人は先程男が入っていった地面を調べ、階段を見つけ出す

三人は頷き合い地下へと乗り込んだ




中はかなり暗く足元を見るだけでやっとだった

途中で骨らしき物を見つけたが、先頭を歩いていた命はその骨を端に寄せ後ろを歩く湊とレイラには見せないようにした


「(此処で階段は終わりだ)」


必要最低限のことは喋らず、慎重に歩を進める。と不意に命が立ち止まり後ろを歩いていた湊が命の背中にぶつかった


「(どうしたの?)」


命が見てる先は仄かに光が漏れていた。その先に何があるのか気になり、命の肩越しにのぞき込もうとしたら命が叫んだ


「見るな!!」


湊の顔を覆い、その後ろにいるレイラにも首を横に振る

命が見ていたもの、それはまだ真新しい死体だった。何故真新しいのかが解るのかというと、血が乾いてなかったからである。さらに死体は一つや二つではなく、およそ十体はいた

命は湊を覆いながらレイラは二人を見ながら道を変えた

先程の命の叫びは此処にいる奴らに聞こえているだろうと半ば予想しながらゆっくりと歩いていくと、灯のともった部屋経て出た


「やあ、待っていたよ」


その部屋に入った途端、奥から人の声がした。三人は咄嗟に身構え、いつでも先頭には入れる準備をした


「クリスベルはどこだ」


確信を持った声で命は尋ねる

よく見ると男には頬に蛇を模した刺青があった。その刺青に気づいたレイラは男を指さしながら言った


「あなた、『毒牙の錆』!!」


「へえ、よく知ってるね」


「何だ、『毒牙の錆』って?」


目の前の男を警戒しながらレイラに訊ねる


「『毒牙の錆』とはお金のためなら何でもする集団です。情報収集、人助け、人攫い、人身売買、殺人他にも色々」


「決して悪い集団じゃないだろ?人助けもしてるんだから」


「みたいだな。ただ欲望に忠実なだけか」


ではクリスベルを攫ったのも、誰かに頼まれた事か、そう思った命は男を睨みつけた


「此処に来るときに死体を見た。あれはなんだ?」


「殺しを依頼されたからと、無能な奴らを処分しただけだよ」


悪びれた風もなく言う男に命はイラつきを何とか抑える。よくここまで抑えられるな、と思ったが別にクリスベルが何かされたわけではないので、そこまで怒る必要性もないな、と思い直した


「何故、クリスベルを攫った」


「彼女の家族に頼まれたんだよ。娘を連れ戻せ、とね。報酬はクリスベルが売れた分の三分の二だ」


その言葉を聞いて命、湊、レイラはクリスベルが危険だと悟った。同時にまだ生きていると言う安心感も出てきた


「君達もついでに売ろうかな」


その言葉と一緒に男の後ろから三人の男が出てきた。当たり前だがそれぞれ武器を手に持っていた


「やってや――」


「二人は下がってください」


レイラが命と湊に言った。命は振り返りレイラに何か言おうとしたが言わなかった――否、言えなかった。レイラの眼には怒りがあった。それを見たとき命は何も言うことが出来ず、湊と共に下がる


「私は貴方方を許しません」


後ろで結っていたゴムを外し、武器である短剣を手に持ち、一度目を瞑り深呼吸、目を開くと片目の色が透き通る翡翠の目から燃えるような真紅に変わり、炎のようなオーラが纏っている

その目を見て頬に刺青を入れた男が目を見開いた


「『呪われた子供ハッセンチルドレン』!?」


「よく、ご存知で。ですが、サヨナラです」


レイラが地を蹴ったと思ったら一瞬で男の目の前に現れた

そこからもほとんど見えていなかった。改めてみると男たちが倒れていて、立っていたのはレイラだけだった。と言うことしかわからなかった


「レイラ、お前……」


「……何も聞かないでくれると、嬉しいです……」


二人は頷き、奥にいるであろうクリスベルを助けにいく

その部屋も暗かった。ただわかるのは部屋が狭く、まるで夜中の路地裏にいるような感じだった

その奥に人のすすり泣く音が聞こえ、湊は今いる場所から呼んでみた


「クリスベルさん?」


「ミ、ミナトちゃん?」


その声がクリスベルのものだとわかり、急いで駆けつける

奥に進むとクリスベルの姿があり、顔に傷は見られなかった。そのことに安心してクリスベルを繋いでる鎖に気づき、レイラに頼んで壊して貰った。自由になったクリスベルは湊に抱きつき、泣き叫んだ


「怖かった……怖かった、よ……うっ、うっ……」


湊はクリスベルをあやすように優しく頭を撫でる。大丈夫、と何度も言いギュッと抱きしめる

それから数分が過ぎ、命がクリスベルが泣き止んだのを確認してから言った


「此処から出るぞ。まだ奴らの仲間が居るかも知れない」


「そうですね。ミコト様、後ろを頼んで宜しいですか?」


「いや、俺が前を務める。レイラは後ろを警戒してくれ」


「わかりました。では行きましょうか」


それから暫くして地上を出ると、既に空には星が瞬いていた

今日は全員クリスベルの家に泊まることになり、静かな夜を過ごした

四人は今日一日がとても長く感じられた


後日、ガイル王にこの事を報告したら『毒牙の錆』の姿はどこにもなかった。さらに十体はいた死体すらも消えていた

それを聞いて四人は思った

――あれは夢だったのか?と……

読んでくれてありがとうございます

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