『兄妹』拾参話
拾参話 ギルド登録
旅立ちの日
朝方に湊は珍しく兄より早く目を覚ました
「ふあ……。まだ、こんな時間……」
うつらうつら、と誰から見ても眠そうな湊はベッドから降り、ふらふらと危ない足付きで扉を開けて廊下に出る
「ミナト様?」
「……レイラさん」
「大丈夫ですか?眠そうですね」
「……………(コクコク)」
頷いている湊を支えながら、どこに向かおうとしているのかを聞く
「う…ん?」
「私の部屋に来ますか?」
湊が頷くとレイラは支えながら湊を部屋に招き入れる
「何か飲みます?」
いまだにうつらうつらしている湊はレイラの問いかけは耳に入っていなかった
レイラは苦笑しながら二人分の飲み物を出す
時間は過ぎて、日本時間10:00
湊は完全に目を覚ましていた。今はレイラとともに部屋に向かっていたのだが
「湊!」
「あ、お兄ちゃん!」
進行方向から命が走ってきて、湊の肩をつかみ、軽い拳骨を喰らわせる
「どこ行ってたんだ!」
「ご、ごめんなさい……」
頭をおさえてしゅんと小さくなるのを見てハァ、とため息を吐いた後レイラに向き直り礼を言った
「気にしないでください。それよりも謁見の間へ向かいましょう。ガイル王に今日のことを改めて話したいですから」
「了解。行くぞ、湊」
「はい……」
しょぼしょぼと後をついて行く二人を見送り、レイラは一度自室に戻り荷物を持って謁見の間に向かった
謁見の間に入ると命と湊の姿はなく、それ以外の人は皆集まっていた
レイラはガイルに一つお辞儀をして扉を閉める。ガイルは近くにいた騎士に未だ来ていない二人を捜すように言った時
「遅れてすまん!」
「お兄ちゃん、入るときはもっと静かにしないとダメだよ!」
ドタバタと遅れてきた二人はレイラに謝り、隣に立つ
「遅かったな。寝坊か?」
「似たようなものだ。すまない」
「別によい。恥ずかしながら私もさっきまで寝てたからな」
ガイルは大きく笑い、レイラに目を向ける
それに気づいたレイラは姿勢を改めて直し、口を開いた
「私達は旅に出たいのですが、許可をいただきたいのです」
「ふむ。それはいつ頃から計画していた?」
「投票の一週間前からです」
「なら、そちらが決めればよい」
ガイルの答えに三人は驚いてしまった。てっきり反対されるか、条件を出されるかと思っていたので一瞬言葉を発さなかった
「……よ、よろしいのですか?」
「ああ、構わん。その頃はレイラがこの地の姫であったのだからな。ミコト殿、ミナト殿」
二人の名前を呼び、ガイルはイスから立ち上がり深く頭を下げた
その行動に大臣や騎士や魔法使いは目を見張った
それは三人も例外ではなかった
「今までの行いを許して欲しい」
それは召喚されたときに剣を向けてきたことや、いきなり勝負をふっかけてきた事だろうと本人である兄妹はすぐに分かった
「私からこんな事を言うのもおかしいが、レイラをよろしく頼む」
さらに深く頭を下げるガイルに湊は頭を上げるように言い
「私も生意気なこと言ってすみません。レイラさんのことは必ず守ります」
「そうだな。そしてここにまた戻って来ような」
「レイラ、ミコト殿とミナト殿にあまり迷惑をかけるなよ?」
「はい。ありがとうございます、ガイル王」
三人はガイルに深く頭を下げ、今度はガイルはそれを見て頭を上げるように言った
「さて、旅に出るのならば『ギルド』に行ってみてはどうだ?」
「そうだな。ギルドに行って、登録をすませるか」
「ギルドでしたらお金を稼ぐことも出来ますからね」
ガイルの提案をのみ、三人は早速登録をするためにガイルにお辞儀をして謁見の間を出て、城を出る
外に出る直前でローブを着て、フードを被る
暫く城から歩いたところに周りの建物より少しばかり大きい建物が見え、それがギルドだと分かった
「お兄ちゃん、あれ」
湊がギルドの前に一人立っているのに気づいた
目を凝らすとその人物の服装は城の魔法使いの着ている制服だった
「リンさんですね」
レイラはその人物が誰かすぐに分かったようで、駆け足でそばに行った
その後ろを歩いて命と湊が追いかける
「リンさん」
「……レイラ?」
名前を呼ばれて反応したところ本当にリンだった
だが、リンはレイラの服装を見てレイラだとは気づかなかった。それは後ろにいる兄妹にも同じことが言える
「リン、どうしたんだ?」
「こんにちは、リンさん」
「……ミコトとミナト?」
声だけだったので疑問系になっているが、フードを外して顔を出すとリンは三人の顔を見て言った
「……私も、行きたい」
「ダメだ」
リンの願いを命は即答して断った
「……どうして」
「……………」
リンにそれを答えることはしなかった
何故か、それは理由がないからである
あるとすれば、危険な目に遭わせたくない、これだけではリンは納得しないだろう。だから理由はない
「……何で?」
「理由はない。だが、連れてはいけない」
「……私、嫌い?」
「そうじゃない。ただ駄目なんだ」
――守りきれない
頭によぎるその言葉を口には出せなかった
今、世界に出てレイラと湊を守れるかも分からないのだ。そこにリンも入っては守りきれる自信がないのである
「待ってて、くれないか……」
「……?」
「もう少し、俺が強くなるまで」
「……ミコト、約束」
「ああ、約束だ」
リンはその言葉と一緒に命に抱きつく
命も頷きながらリンの頭に手を置いた
しばらくしてリンは城に戻っていった。その時にレイラとミナトに一言だけ伝えておき、手を小さく振りながら戻っていく
改めてフードをかぶり直し、ギルドの扉を開けると、中にいたのは八割が男だった
女性はギルドの従業員が大半で本当に少なかった
「すみません」
「お?兄ちゃん、ギルドへの依頼なら向こうの受付だぜ」
頭にバンダナを巻いた大柄だが、人は良さそうな男性は隣の受付を指さす
恐らく背格好から依頼の申請だと間違えられたのだろう
「依頼じゃなくて、登録をしたいんだが」
「そうだったか。悪いな、この城下はあんたらみたいな奴はギルドに依頼登録しか来ねえからな」
ギルドの登録に年はあまり関係ないようで、男性はがっはっはと豪快に笑った
「新規か?それとも追加か?」
「新規だ。あと、チームを作りたいんだが」
「そうか。ほら、これに書きな」
二枚の紙とペンを渡してくるのでそれを受け取り書こうとしたのだが
「ミコト様、どうしました?」
「字が書けねえ。レイラ、パス」
紙とペンをレイラに渡して記入欄を埋めて貰おうとしたのだが
「新規は埋まりましたが、此方のチーム名はどうします?」
「そうだな、どうする?」
「ミナト様は何か案がありますか?」
「私は…………月」
小さくそれも聞き取れるか分からないくらい小さな声だった
「湊、お前……」
「彼女だけ日本にいるんだよ?せめて、何か繋がりが欲しいから……」
フードを被っていて見えないが、その覆われているフードの中は多分哀しみか寂しさかどちらかの顔だろう
前に湊は日本には思い残すような物はない、そう言っていたがそれは嘘だった。月のことがずっと気になっていたのだ。今は何をしているのか、心配していないか、もしかしたら学校にも行ってないのではないのか、と湊は心の中で兄には秘密にしてずっと思っていた。どんなに心配しても連絡ができないのでは何の意味もない、自分達が生きていることも教えることができない
「チーム名は月にしてくれ」
「わかりました」
レイラは何も知らないが、聞こうともしなかった。詮索は二人にとって不快な思いをさせるだけ、そう思って二人が話すか、時が来るまでは聞かないようにする
「では、少し待っててくださいね」
レイラは受付で男性に紙を渡す
その名前を見て男は驚いていたようだが、レイラが何かを言って男を静めた
「それじゃあ、最後の確認だ。登録者はミコトC-ランク、ミナトD+ランク、レイラさ……レイラCランク」
レイラ様、と言おうとして慌てて訂正する
どうやら命と湊の後に高槻は付けなかったようで安心した
「チーム名は月構成は三人。チームリーダーはミコト。チームランクはC-ランクでいいな」
ギルドのランクは自分で選ぶことができる。だが、自分で選んだランクは試験として試され、依頼をこなさなければならない。もし失敗すればその町のギルドに登録することができない
だからと言って低すぎる物を選ぶと、慣れるまでと言うことで二ヶ月半はそのランクで過ごすことになる
因みに一番低いランクはF-ランクで一番高いのがSSランクである
位はF-、F、F+、E-、E、E+………A+、S、SSとなる
チームランクは個々のランクの平均値を出してギルドの運営者側が決める
「それじゃあ、この中から選んでくれ」
依頼は全部で三つ
一つ目は
ランク:D+
報酬:100ウル
依頼内容:近辺に生息するクサグモが貴重な薬草を荒らして回っているので退治して欲しい
と書いてある
二つ目は
ランク:D+
報酬:一人120ウル
依頼内容:街の老人たちの世話をして欲しい。老人は二十人弱で若い人の元気が欲しい
と言う内容だ
三つ目は
ランク:D
報酬:130ウル
依頼内容:三日間だけ家族として付き合って欲しい。報酬は接し方により上げます
の三つである
その中で命と湊は揃って依頼を選んだ
「「三つ目の依頼を!」」
二人の気持ちは同じでこれ以外は目に入っていなかった
レイラから見れば一つ目の依頼で実力を見せたり、魔法について教えることができるのでそちらの方が良かった
「どうしてこの依頼なんですか?」
だから理由が気になった。何故この依頼を真っ先に選んだのかを
「俺達には家族がいないから」
「だからこの依頼を無視するようなことはできないの」
二人の決意は固くまだこの依頼を指さしている
それはレイラの心を動かすのには十分だった。レイラも家族を早くに亡くし、家族は居らず、ユフィが唯一の家族と呼んでも良い人だった
城の人たちはどこかよそよそしく、姫と家臣という壁が出来てしまい家族とまでは呼べなかった
「では、この依頼でお願いします」
「はいよ。この紙は無くすなよ」
男は紙の一部を切り取り、命に渡す。受け取った命は早速、依頼人の元へ向かおう、と言いギルドから出て行った
初のギルドの依頼が成功するかは………………分からない
読んでくれてありがとうございます
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