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『兄妹』拾壱話

拾壱話 旅の準備





「旅、ですか?」


時間は日本時間にして13:00頃

命と湊はレイラに旅に出たいと伝えた


「ああ、旅に出れば還る方法も分かると思うんだ」


「そう、ですか……」


レイラは下を向いてしまった

二人が居なくなるのが寂しいからである


「その準備のため、俺達ちょっと城下まで行くから」


「あ、ちょっと待ってください!」


レイラは二人を止めると一度部屋を出て、数分して戻ってきた


「お二人はこの世界の硬貨を持ってませんので、これを」


そう言って渡されたのはかなりの量が入っている巾着袋だった


「こんなに、いいのか?」


この世界の硬貨については知っているが、これほどの量とは思わなかった


中身は数十万ウルぐらいだった

ウルとはこの世界共通の単位で1ウル=10円である

つまり数十万ウルは日本円で数百万である


「旅の資金も入ってます」


「レイラは……一緒に来れないよな」


「え?」


レイラは命の言った意味が分からなかった

湊はレイラに簡単に説明する


「私達は図書館で調べただけで、他のことが何も分からないの」


「だから、一緒に……ですか?」


二人は頷き、レイラはうーん、と考えると何かを思いついた


「一週間だけ待ってもらえますか?五日後にはこの地で投票があるんです」


「投票?」


湊が頭に?を浮かべると、命が軽く湊を殴った


「散々調べただろ。投票は年に一回、この地、つまり〈北風の地ボレアース・ガーデン〉ではこの城の王又は妃を決めるために投票するんだ」


命の説明にレイラが続ける


「投票権があるのはこの地を生まれとするものと一年以上この地に滞在したものだけです」


「投票日はレイラが言ったように五日後だ。その次の日にこの地の当主が決まる」


「ですが、前当主の方は次の投票者として名前が挙がらないのです」


連続してなることがいけないのはその者の権力を利用させないためである


「うーん?分かったような、分からないような」


「ゆっくり覚えてけばいい」


湊は半分くらいは理解したのかは分からないが、当分はこの世界に留まるのでゆっくり焦らず覚えさせていけばいいかな、と思った

それと同時にいつまでここにいるのだろう、と一瞬だけ思ってしまった

向こうでは叔父や叔母も心配をしているだろうし、学校のこともある。それに何より、灰乘 月のことが気になっている。彼女はいきなり自分たちがいなくなって傷ついているんではないかと、だとしたら早く元の世界に還る方法を探さないといけない


「……様?ミコト様!」


「うぉ!な、何だよ。いきなり大声だすな」


「いきなりではありません。先程から呼んでました」


湊もうんうんと頷いているのを見ると、本当に呼んでいたみたいだった


「それは、悪かった。それでなんだ?」


「城下に行くようでしたら、早めの方がいいですよ」


レイラの言う通りもうすぐ投票なので城下は今頃お祭り状態である

それを聞いた命と湊は急いで城下に向かった



「本当にすごいな」


「レイラさんの言ってた通りだね」


外に出ると露店が沢山並んでいた

こんなにも活気づいているのを見るのは初めてで命は呆気にとられ湊は少し引いていた


「と、とりあえず、歩くか?」


「うん……」


はぐれないように手をつないで歩き出すが、二人の容姿、髪と瞳が黒というのは非常に珍しいので注目を集め、湊が微かに震えた


「(あれが、城に召喚された奴らか?)」


「(多分な。でもこうやって、城下来るのは初めてらしいぜ)」


「(黒い髪と瞳って珍しいわね)」


「(本当に。彼らの場所では当たり前なのかしら?)」


歩く度に道が分かれて歩きやすいのだが、ひそひそと喋り声が聞こえてくる

命達が別世界から来ていることは知っているようで、好奇と奇異と異端な目で見られている

だがそんな事は気にしない命は呉服店を見つけ、そこにあるローブを手に取った


「これ……いいな。フードも付いてる」


「お兄ちゃん、これ買っていくの?」


「ああ、黒でいいよな?」


「うん。あ、レイラさんのも買う?」


もしかしたらレイラも一緒に行くかもしれないので、湊に賛成する


「そうだな。すみません、このローブ三つ見繕ってください」


奥からガタいの良い男が出てくると、ローブを手に取り奥に戻った

暫くすると男が戻ってきて、ほら、とかなり低い声で渡してきた


「ありがとう。これ代金ね」


「少し待ってろ」


代金を受けとった後、それだけ言って店の男は奥に戻っていった

命と湊は大人しく待つことにした

先程よりか早く男は戻ってきて


「持ってけ」


と言って強引に命に渡した

命は受けとった物を見るとそれは二つの指輪だった


「これは?」


命が男に聞こうとしたが、男はもうそこには居らず店の奥に引っ込んでいた

指輪をありがたく受け取り、最後にありがとう!と大きな声で言って命は湊を連れて他の店に行った



「今日は、もう帰るか?」


「う、うん……」


日本時間にして16:40頃に湊がとうとう限界に達したので城に帰ることにした

湊はあまりの人の多さに気絶をしてしまい、介抱をして、起きた湊に帰るかどうかを聞くと素直にうなづいた

今日の買い物は結局ローブ三つと店の男から貰った二つの指輪だけで他に欲しい物は特になかった


「大丈夫か?」


「ちょっと、大丈夫じゃないかも……」


「仕方ねぇな」


「ありがとう。ごめんね、お兄ちゃん」


命は湊をおぶさり、湊を休めさせるために早歩きで城に戻る


「気にしてないさ。でもいい加減直さないとな?」


「うん……」


湊は命の首をぎゅっと抱きしめて兄に迷惑をかけている、と感じていた


「明日からは荷物をまとめとけよ。後、明日から四日間は買い物に行かないから、買うとしたら当日だ」


「うん」


「頑張ろうな、湊」

「頑張ろうね、お兄ちゃん」


お互いに一緒のタイミングで言ったので二人は可笑しくなった

笑いながら命はいつの間にかゆっくりとした足取りで城に戻っていった


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