小話
本編があまりにも暗いので救済措置。
ちなみに先生の名前は、赤木雅也。26歳です。
主人公は16歳。
最近、担当しているクラスの女子生徒の様子がおかしい。
紺野莉奈と言う生徒は、大人しくて無口で、正直に言えばクラスで浮いているような、そんな生徒だった。
しかし、最近の紺野はやたら笑顔を浮かべている。そして前より饒舌になって、何にも映していないような目をすることもなくなった。
それだけ聞けば何の問題もない。むしろ良い傾向だ。
問題なのは、紺野の興味の対象が俺だということだ。
俺は大概つまらない人間だと、自分でも自覚している。
教師と言う職業柄、コミュニケーション能力はそこそこあるが、それが取り柄と言うほどでもない。恋人が出来ても三か月と続いたことがないような、そんな奴だ。
こんなダメ人間に、どうして紺野が興味を抱いたのか。
いや、多分あれは興味ではない。
思春期の学生たちが夢中になるあの感情に違いなかった。なお悪いのは、紺野の瞳がただの一過性の熱に浮かされているだけではないと思われることだ。
あれは不味い。せっかくの高校生活を、俺と言う存在などで棒に振らせるのはあまりに可哀そうだ。
そう思い立ち紺野にきちんと考えを告げようと、俺は椅子を引き立ち上がった。職員室を出ていこうとドアに手をかけたところで、初老の教師から声をかけられる。紺野の担任だ。
「最近紺野くんと仲が良いみたいだね」
「そうですか?」
とりあえずしらばっくれておく。
担任はうんうんと一人で頷きながら言った。
「何事にも無関心そうな目をしていたけど、最近は笑顔も多くなったしいいことだね」
俺はそーですねと適当に返答した。面倒くさい。
「紺野もこれでクラスの奴らと仲良くなれるんじゃないですか?」
すると担任はぱちぱちと目を瞬かせ、次いで驚くようなことを口にした。
「何言ってるんだい?今のは君の話だよ」
(はあ?)
お前こそ何言ってるんだと俺は言いかけて口をつぐんだ。
ちょっと待て。
客観的に見て俺はそう見えるのか。
でも、今言われたことって俺が紺野に対して感じていたことと全く同じじゃないか。
つまり。
(つまり………?)
俺は早々に考えるのを放棄して、次の授業の準備に取り掛かった。
リクエストがあれば、小話くらいならまた書こうかと思います。
先生が恋人と続かない理由は、「何だか後ろめたい気がするから」だそうです。