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深夜の激動
七月の夜は、すでに暑かった。
昼間の熱をため込んだアスファルトと、唸りを上げながら熱波を放つ室外機、それに、いつまでたっても消えることのないネオンのせいだった。
新月だというのに、明るすぎる通りを逸れると、陰湿な静けさが身を包む。
老朽化した建造物は死ぬ直前の人間のようだった。
「次は、あれ」
そこに、場違いな声が響く。まだ、少し幼さが残る少女の声だ。
彼女の背後の不気味な巨体が唸りを上げる。
次の瞬間、大量の粉塵を待ち散らしながら、一つのビルが崩落した。
混乱した街を野次馬の流れに逆らいながら悠然と歩く少女は、不敵な笑みを浮かべた。