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異端進化論(改訂前)  作者: 七草 折紙
第一章 能ない凡人は爪を隠す
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第6話 本部への栄転

見てくれた方、ありがとうー。

嵐が去って早二ヶ月。

今日はいつもはやらない朝礼などをやっていて技術班全員が集まっている。何だろう?

憎き山科宗次郎こと技術班長がにこやかに告げる。


「おめでとう。本部へ栄転だ」

「NOーーーーーー!!!」


頭を抱える真人。どうしてこうなった。全ての元凶は目の前の男にあると殺意を抱きそうになる。

涙で前が見えない。願わくば時間を戻して欲しい。

真人が真っ白に燃え尽きていると、周りから拍手が送られてくる。「おめでとー」という者までいる。

テメエら、絶対羨ましいとは思ってないだろ。


「ちょっと、いきなりどういうことですか。何で俺?」

「いやー、あちらさんがお前の仕事ぶりを感心してな。勤務時間No.1の仕事量、仕事は無駄なく丁寧、挙句には異能災害討伐チームとして立派に貢献したときた。

優秀な人材として異例の抜擢というわけだ」

「何故に……こうなる」


ガクリと項垂れる。異形の件から嫌な予感はしていたが、二ヶ月経った今とは。安心しきったときに不意打ちとは嫌がらせか。


「早速、荷造りをしてもらう。引越し業者に手配はしてある。向こうで住む場所も確保済みだ。引越しは二日後だ」

「はやっ。もっと早く言ってくださいよ。俺にも心の準備ってものがあるんですよ」

「そんなものは必要ない」


クッ、相変わらず嫌なおっさんだな。外堀を埋められていくこの手際。二日という考える隙を与えない日数。狙っていたな、この野郎。


「今日はもう帰っていいぞ。荷造りも時間がかかるだろう」

「……ハイ。ソウシマス」


最初から拒否権はなかったようだ。哀愁を漂わせて部屋を出て行く真人。

嗚呼、さようなら。この寂れた田舎に咲く一輪の花、受付の愛理(アイリ)ちゃん。特別美人じゃないけど、その平凡な容姿の中に溢れるおっとりとした優しさ。彼女というより嫁にしたいタイプだよね。今までコツコツとポイントを稼いできたけど、告白する前にお別れすることになるとは。


はあ、帰ったら荷物をまとめないとな。


XXXXXX


引越し当日。

見送りは誰もこない。引越し業者が部屋に入り、次々と荷物を運び込んでいく。


「ハァ~、俺友達少ないのか……」


真人の友達といったら、海外、しかも裏の仕事に関わった者達ばかりである。

ここに来て早五ヶ月。普通の友達を作る暇もなくまた引っ越すことになろうとは。

憂鬱に吹けっていると、誰かから声をかけられる。まだ荷物運びは終わっていないはずだが。振り向くとそこには見知った顔があった。唯一、職場で縁のあった他部署の同期の奴らだ。


「やあ、柊君。もう出世なんて凄いね。先を越されてしまったようだね」

「お前らか……」


コイツは実戦班の(かずら)柚姫(ゆずき)。口調は丁寧だが、荒っぽい奴だ。

外見は赤い髪のショート。コイツの性格を表しているかのようである。美人なだけにタチが悪い。同期の一人だ。波導具(フォース・ウェイバー)のことで何かと俺にイチャモンをつけてくる。

波導具とは異能を流して使う戦闘補助の武器道具の事だ。神器の劣化版のようなものである。最も異形に対しては使えないが。

とにかく五月蝿い。細かい注文が多いのだ。俺の安寧を損ねる存在の一人である。コイツのせいで余計な仕事が増え、俺の仕事量は同部署No.1という悲しさであった。

新人同士で通じ合うものがあるのは分かるが、ベテラン連中に持っていかず、何故か毎回俺の所に来るのだ。おかげで支部内の男達に睨まれる羽目になった。


「君が居なくなるのは残念だが、私も時期そちらに行く予定だ。腕を磨いておいてくれたまえ」

「ああ、元気でな」


こちらはもう会う予定はない。若干皮肉の入った冷たい態度で返事を返す――最も近いうちに再会することになるのだが。


「ううー、柊ちゃん、残念だよう。僕の事、忘れないでよ。絶対、会いにいくからね」


この僕っ子は情報班の(すめらぎ)優羽(ゆう)。長い銀髪が似合う小学生……いや、同い年だったな。この子はかなりの情報通である。他の情報班員が知らないようなことまで知っている。何故だ?

この子にはお世話になった。レスポンスが速いので一般常識やエンターテイメント情報、イケナイ情報等、色々と教えてもらった。この子も同期である。


「おう。優羽にはホントに世話になったな。風邪ひかないように、体を大切にな」

「ムッ、私のときと反応が違うね」

「フンッ、お前には散々迷惑を掛けられたからな」


二人とじゃれあっていると、背後に誰かが見える。


「ん? あと誰かいるのか?」

「柊さん……」

「愛理ちゃん! 君も来てくれたのか!」

「あの、はい」


最後の一人は我が心のオアシス、営業班の一ノ宮(イチノミヤ)愛理(アイリ)ちゃんだ。

第二十八支部の受付を務める笑顔のかわいいおっとりさん。癒し系同期。蜂蜜色の長髪がまた控え目で俺をそそる。だが、心なしか表情が暗い。


「行ってしまうんですね。寂しくなります」


おおーっ、まるで恋人同士みたいだ。これだけでも今までの俺が報われる。


「愛理ちゃんも元気でね。本部に行っても忘れないから」

「……はい」

「ほら、笑って。そのうちまた会えるよ」


この子に悲しい顔は似合わない。これからも笑顔で頑張ってほしい。


「……そうですね。最後なんだから笑顔で送り出さないと。よし、ファイトッ」


気合を入れる様もかわいい。その健気な姿を見て思わずニタリとしてしまう。


「何にやけてるんだね? 気持ち悪いよ」

「うるさいっ、黙れ」


ちなみに男の見送りは一人もいない。この三人のせいで睨まれている。田舎でただでさえ少ない女子の三人だ。当然、競争率も高い。

話しているうちに引越業者のお兄さんがやってくる。荷物が運び終わったようだ。


「じゃあ、皆元気でな」


トラックに乗り込み、名残惜しそうに手を振る真人。その対象は主に愛理であったが。

やがてミラー越しの三人の姿が小さくなっていく。


こうして真人は入社半年も経たないうちに望まぬ出世をするはめになるのであった。


色々と改善中です。

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