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異端進化論(改訂前)  作者: 七草 折紙
第一章 能ない凡人は爪を隠す
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第5話 嵐は過ぎ去りて

ここで一区切り

安堵したせいか、一気に力が抜け音を立てて倒れ込む。疲労感が押し寄せたためその場で寝ることにする。


「後は勝手にしてくれ」


寝ようとしたが、すぐ近くで拍手が聞こえてくる。近くの大木の陰から真道寺先輩が姿を現す。そこにいたんなら助けろよ。


「いやー、流石ですね。山科先輩が推薦するだけのことはある」


山科先輩?……またしても班長のヤローか。クソッ、いつか呪ってやる。


「置いてけぼりにしてくださって、どうも(・・・)有難うございます」


とりあえず怒りが収まらないので、嫌味を込めて言葉を返す。


「ふふ。どう致しまして。信じていましたよ、貴方の事。予想以上に素晴らしい働きをしてくださいました」


嫌味を嫌味で返された。クソッ。コイツ、確信犯だ。


「まあ良いです。貴方とはこれっきりでしょうから」

「そうですねえー。ふふふっ」

「何ですか、その笑みは?」

「さあ、何でしょうね」


もうヤダ。この人相手にしていると疲れる。


「山科先輩にも良い報告ができそうですよ。彼には貴方の事をベタ褒めしておきますよ」


今更だ。それにしても山科か。この人何を吹き込まれたんだ。クソっ、あいつは俺専用の疫病神か。

それにしても、俺の昔の事なんて班長も知らないはずだが……

そういえば、コネ入社したんだから、師匠から俺の情報が伝わっている?だったら技術屋として雇うはずもないけど。直接、実戦班に回せば良いだけの話だ。こんな回りくどい真似するか?

とりあえず、コネ入社はやっぱり良くないよね。

……まあ、小卒が就職できただけでも奇跡だから贅沢は言えないか。終わったと思えば、憎さ半分可愛さ半分だ。

明日からは元通り……だよね?


XXXXXX


しばらくして加奈先輩達と合流した。

古沢リーダーと大和は既に気を取り戻していた。無事で何よりである。大円団ってやつか。


「しかし加奈先輩も大変ですよね」

「何が?」

「こんなむさ苦しい男の中に女一人。紅一点じゃないですか。どこ行ってもこうなんじゃないですか?」

「女一人? あっそうか、フフっそういうこと(・・・・・・)ね」

「?」

「気づいてないのね? まあ面白そうだからそのままにしておくわ」

「何の事か分かりませんが、まあ良いです」


疲れているので、複雑な話しは遠慮願いたい。


「そ、それからさっきはありがとうね」

「ヘッ?」

「助けてくれたでしょ。い、一応礼を言っておくわ。それだけだから」


!!!デレた。加奈先輩がデレたぞ。クッ何て破壊力だ。普段表情が変わらないだけにより一層悶えてしまった。やばい。襲ってしまいそうだ。自制心を総動員させて自分を戒める。


「おーい、こっちに集合だ」


古沢リーダーが呼んでいる。最後の締めか。今日は長かったなー。


「あーっ、今日はご苦労だった。途中、みっともない姿を晒してしまったが、真道寺がうまくやってくれたようだ」


俺の事は? まあ、色々と追求されるのは嫌だが、がんばった俺が報われない。やっぱり厄日だ。


「柊もご苦労だったな」

「えっ?」


急にお褒めの言葉が飛び出してドキッとする。


「真道寺や夏目から話しは聞いている。全員無事なのはお前のおかげでもある。感謝する」

「いやーっ、大和の奴を運んだだけですよ?」

「何、謙遜するな。加……夏目を助けてくれたんだろう?」

「あっ、そっちですか」

「? そっちというと他に何かあるのか?」


危ない、危ない。危うくボロが出るところだった。それにしても真道寺先輩は何故黙っていてくれたんだろう? 実は良い人……ではないな。元はといえばアイツのせいで酷い目に遭ったんだ。


「いや、こちらの話しです」

「? そうか。なら良いが」

「彼も疲れているんですよ。色々ありましたからね。そう、色々とね」

「何だ? 意味ありげな発言だな」

「まあ、彼と僕との秘密ですよ。ねえ、柊君」


そうコイツは絶対に良い奴なんかではない。悪の親玉……いや親玉は山科か。コイツは参謀だな。悪知恵が働きそうだ。


「あ、あの!」

「うん?」


振り向くと大和がもじもじしてそこにいた。

何だ、気持ち悪い奴だな。そっちの趣味はないぞ。


「どうした? 何か用か?」


大和は顔を赤くしながら俯きながら喋る。


「私を運んでくれたって……」


私? 軍隊口調じゃなくなっているぞ。


「御礼を言いたくて……ありがとう」

「おう、気にすんな」


軽くさらっと返答するが、大和はさらに言いにくそうにしてもじもじとする。

何だ?言いたいことがあればはっきりと言え。


「それで、あの……」

「何だ?」

「……その……重くなかった?」


何だその女子みたいな質問は? 男が体重なんて気にすんじゃねー。やばい。何か変な気持ちになってきたぞ。自分の顔が赤い気がする。冷静に、冷静に。俺はノーマル。男の中の男だ。


「?」

「ゴホンッ。いや、軽かったな」


途端に明るい顔をする大和。可愛い奴だな。


「そ、そうか。うん。ごめんね、変なこと聞いて」

「いや、お前が良いならそれで良い」


何を言っているんだ俺は。流されているぞ。何なんだ、今日は。


「フフッ、じゃあね」


スキップでもしそうな軽い足取りで去っていく大和。何だったんだ?

もう良いや、さっさと帰って寝よ。


XXXXXX


翌日。

結局、昨日は四人とも泊まったそうだ。駅まで見送りに来ている。


「じゃあ、柊。ご苦労だった。以後健やかでな」

「柊君。ご苦労様でした。また会いましょう。いや、近いうちにまた会うかもしれませんね。フフッ」


古沢リーダーと真道寺先輩が挨拶を交わし、車内に入っていく。


「フフっ、じゃあね。待ってるわよ」

「えっ?」

「時期分かるわ」


訳の分からないことを言いながら加奈先輩が車内に入っていく。

最後は大和だ。


「柊君。お世話になったであります」


軍隊口調に戻っている。この方が落ち着くな。


「おう。元気でな」


大和が車内に入って、列車が動き出す。

もう会うことはないだろうな、と思いながら手を振り見送る真人。


こうして嵐が去っていった。そう真人は思っていた。


次回、引越しします

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