第25話 A級ランカー
今回、ちょっと中二入っているかも……
――瑪瑙の遺跡入り口前。
古矢が踊るように異形とダンスを舞う。
相手の動きに合わせて雲のように自身の形を変化させる柔軟さと、それを風のような速度で実現する俊敏さ。
完全なる間合いの把握。同期するかのように周囲の全てと己の形を保つ。
まるで敵に合わせて動く捉えどころのない風雲の如し。
それがA級ランカー<風雲>の由来。
――天魔一体・風の領域
片方の導術にもう片方の導術が追従する『感応導術』。
天導で自身の身体能力を上げると同時に相手の動きを完全に見切る。
自身に合わせるように周囲の風を魔導で変化させる。
隙を見せたら最後。あっという間に切り刻まれる。
最後の異形を切り刻み、周囲を見渡す古矢。
「ふうっ、粗方片付いたか。さっき圧魔筒が破裂したような気がしたが……中は大丈夫だろうか」
周辺の異形を片付け終えたのを確認して遺跡内部に向かうのであった。
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――地下五階の小部屋。
敵は異形水晶騎士二体、異形泥騎士一体、異形鋼鉄騎士三体の計六体。
真道寺達が動き始める前に異形水晶騎士Aが専制して仕掛けてきた。
だがその標的は試験生に向けられていた。
異形水晶騎士Aが一人の試験生の前に現れる。
気付いた瞬間には迫り来る拳が目の前にあった。
「あれっ? これ死……」
試験生が死を悟った瞬間、凄まじい速度でいつの間にか玲が異形水晶騎士Aの脇にいた。
玲は瞬間的に魔導で超圧縮した魔力の塊を掌から解き放つ。
――武闘導技・魔導掌
随一の展開の速さを持つ『武闘導技』が炸裂する。
純粋な武術である『無導』とは違い、異能を核に組み立てられた武闘技。
高度な展開の速さを持つが故にそれを会得できる者は少ない。
玲が<最速>と呼ばれる一端であった。
試験生が殴られる前に間一髪で玲の攻撃が間に合った。
指向性を持つ魔力の塊が異形水晶騎士Aの腹部で爆発して豪快に吹き飛ぶ。
激しく壁にぶつかり瓦礫が崩れる。
埃が煙のように舞い上がりその凄まじさを語る。
だが流石に異形。たった一発では仕留めきれなかったようである。
立ち上がり隙をついた異形水晶騎士Aが別の試験生に斬りかかる。
禍々しい気配を放つ妖剣を前に試験生の足が竦む。
試験生が斬られようとした瞬間、それを見た玲が続けざまに魔導を放つ。
――魔導術・機関光弾
玲の指先に生まれた淡い光から無数の閃光が迸る。
魔導掌の一撃で瀕死だった異形水晶騎士Aが砕け散る。
次いで近くにいた異形鋼鉄騎士Aに光弾を浴びせる。
吹き飛んだ異形鋼鉄騎士Aにさらに追撃するように連続して次々に光弾が飛来する。
一つ一つが強力な貫通力を持つ光弾。それが雨あられと命中する。
流石に堪らずに悲鳴を上げる異形鋼鉄騎士A。
これも玲の<最速>の由来の一つ。速度に特化した魔導の使い手。
近接系に魔導掌、遠隔系に機関光弾。
玲に死角はなかった。
「グアアアアアアッ!」
異形鋼鉄騎士Aが消滅する。
さらに横にいた異形鋼鉄騎士Bにも光弾を当てる。吹き飛ぶ異形鋼鉄騎士B。
その光景を見て、周りの試験組が再び動き出す。この間一、二秒弱。
「柴祁那先輩ッ!」
「いつの間に? でも助かった」
「試験生は下がってなさい! 邪魔よ!」
試験生に注意を促しながら、異形鋼鉄騎士Bの前まで移動しさらに畳み掛けるように追撃する玲。
玲の魔導掌の一撃で異形鋼鉄騎士Bも砕け散る。
残り三体。
直ぐ様、最後の異形鋼鉄騎士Cに狙いを定める。
機関光弾を打ち出し、異形鋼鉄騎士Cは穴だらけになって消滅する。
さらに試験生の一人に襲いかかろうとしていた異形水晶騎士Bをターゲットに決定。
異形と化して跳ね上がった異形水晶騎士Bの速度を遥かに凌駕する玲の圧倒的速度。
それは元の速度に天導を加えたが故に誰も追いつくことはできない。
速度だけで云えばEX級ランカーにも匹敵する。それが玲であった。
異形水晶騎士Bの攻撃を掠らせもしないで自分の攻撃だけを当てていく玲。
魔導掌の連打で異形水晶騎士Bを確実に粉砕する。
咲耶も真っ青な速度と威力であった。
残りは異形泥騎士Aの一体のみ。
玲は可憐な声を高らかに上げて叫ぶ。
「潤! ソイツを!」
潤、とは誰だ? 皆がそう思った。
皆が戸惑っている中、一人の男が動き出す。真道寺である。
そういえば潤という名前だったな、と真人は一人思い出す。
「分かったよ」
――双魔導術・神焔
魔導に魔導を重ねた『乗威導術』。
真紅の炎が異形泥騎士Aを魂すらも焼き尽くす。
白く輝き舞い散る灰が神々しさを感じさせる。
かくしてこの場にいた異形は数秒足らずで倒されたのであった。
この時、真人は一人でこう思っていた。
アンタ、実力出せば異形を倒せるじゃないか。
いつぞやの初対面時の出来事を思い出して苦言を呈さずにはいられない真人であった。
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――地下一階、通路。
天導で強化した肉体が生み出す凄まじい速度で駆け上がる門松、獅子堂、七星の三人。
目の前には何度目かの遭遇か、異形の集団があった。
「またか……フンッ!」
異形鋼鉄騎士が襲いかかってくる。
それを気合いと共に敵の攻撃を受け止める門松。
そのままゴムのように弾力で反動をつけて逆の方向に押し返す。
それと同時に変化した鎧が異形鋼鉄騎士を追撃する。
――地魔一体・積層形多重属性鎧
地導と魔導の性質を併せ持った『複合導術』。
具現化した重厚な鎧の上にさらに四層の属性膜で覆う。
魔導の基本となる火・水・風・土の四大属性。
派生する其の他の原型であるが故に全てに通ずる。
物理攻撃と魔導攻撃の両方に強い鎧が誕生する。
さらに地導と魔導が互いを補強し合いそれぞれが通常以上の力を発揮することができる。
単純な衝撃、衝突時に生じる風圧、摩擦による火種。
あらゆる要素を削り取って受け止めた攻撃を中和していく。
さらに変幻自在の鎧は刃を生み出して斬り裂き又は貫き通す。
攻防一体の鎧であった。
<重層>の厚い護りが何者をも受け止めて倒す。
「"収束せよ"」
七星の簡潔な一言で目を焼くような眩い光が放たれる。
光で胸を貫かれた異形鋼鉄騎士は欠片すら残すことなく溶けていく。
――天魔一体・天を射抜く光
天導によって魔導を変質させる『変調導術』。
天力によって変質した魔力の炎が白く変わっていく。膨大な熱量を放つ白い炎。それを凝縮して放つ。
単純な熱では溶けないような熱耐性の防御も貫く、異質の熱エネルギーを作り上げる。
概念と言っても過言ではないレベルの『溶解』と『熱伝導』の力を宿す白い炎。
それは触れただけでも全身が焼失する程の溶解度と伝導率を生み出す。
収束し凝縮された白い炎は無敵の貫通力をも実現する。
<熱姫>の熾烈な一撃がどんな者をも貫き滅する。
「……!」
血走った目をして無言で敵を斬り裂く獅子堂。
強烈な一撃で骨すら粉々にして斬り裂いていく。
――天地一体・狂者の大剣
理性を犠牲にして膂力を上乗せする『儀式導術』。
狂化の能力を持つ大剣を具現化させる。
自己を直接強化するのではなく、核となる大剣に全労力を費やし、狂者としての能力のみを純粋特化させて己にフィードバックする。
剣に全てを任せるために理性は失われるが、唯一、敵か味方かの二択のみは残される。
敵と味方の区別以外は全て無視。視界に入る敵を全て叩き斬る。
それがこの導術の真髄。理性すらも省き、無駄を最大限に無くして辿り着く極致。
本能のみで動くため、予測も困難な動きを可能とする。
<唯我独尊>の予測不可な斬撃が荒れ狂い全てを叩き斬る。
異形には異能が効きにくい。だが全く効かないわけではない。
低級の異形であれば、神器がなくとも高位の異能者で倒すことも不可能ではない。
他を圧倒する壮絶な力量のみがそれを可能とする。
彼らはそれを実現しているのだ。
頻繁に足止めされていた急行組の三人。
その三人に残りメンバーが追いつく。
A級ランカーであるベテラン組の戦闘を見ていた試験生達。
自分達の目指すべき高みを魅せつけられて只々呆然としている。
「何だ、追いついたのか」
門松がやれやれと言わんばかりに首を振る。
結局、全員で最上層部に向かうことにする。
だが近づくに連れて巨大な異能を感じるようになる。
それを感じた門松が驚愕の声を発する。
「何だ!? この強大なプレッシャーは……」
それは彼らにとって、未だかつてない程の悪夢であった。




