第14話 瑪瑙の遺跡~聖域~
またお気に入り増えてました。有難うございます。
場所は変わって、異能災害本部、本部長室。
五十歳前後の中年男と二十代後半くらいの麗しき女性が話していた。
中年男は本部長、女性は秘書長という肩書きであった。
中年男の方には長年社交界の古狸達と渡り合ってきた風格と呼ばれるものが備わっていた。
女性の方はその身のこなし具合から、只の秘書ではないことを現している。
異能災害対策室には各支部に六つの部署が存在する。
――異能災害を現地で対処、又は護身術教室を運営する「実戦班」
――情報収集や各部署への通知、本部や支部との連絡を行う「情報班」
――避難勧告や安全通知などを行う「広報班」
――各部署のサポート、関連企業との交渉や部品の仕入れ、電話相談や窓口を担当する「営業班」
――実戦班のサポートや異能災害被害者への無料サービスを行う「医療班」
――実戦担当の武器や道具の作成・修理・準備、又は複雑な特殊機械の操作を行う「技術班」
以上の六部署である。加えて本部には、さらに四つの部署が存在する。
――優秀な人材の調査・スカウトや雇用、各支部への配置、人材育成を行う「人事部」
――異能災害対策室を牛耳る「役員上層部」
――役員上層部をサポートする「秘書部」
以上の三部署、そして新たに加わった「遺跡探索班」の計四部署である。
本部長は本部の統括で役員上層部の一人。秘書長は秘書部のリーダーである。
それぞれが広い人脈を有している。その二人が真剣な顔で話し合っていた。
「異形が生まれる気配を感じたとの報告を受けた」
「異形ですか? そんな兆候はありませんでしたが?」
「そうだ。ここ数日で異常な速度で孵化しようとしている。何者かが暗躍している可能性がある。いや、多分ヤツらの仕業であろうな」
「場所は丁度、門松君達が居る遺跡付近だ。至急、神器が必要になる。準備してくれ」
ヤツら。その言葉が示すのは尋常ではない事態。このタイミングで動きだすとは何を狙っているのであろうか。
「どうやって、持っていきますか?」
「ヤツらが一緒にいる可能性もある。それ相応の実力がないと危険だ。確かこの間、異形を倒したチームがあっただろう」
「ええ」
「彼らにしよう。至急、此処まで呼び出してくれ」
「報告ではそのうち二名が既に現地にいるとの事ですが……実戦担当一名、技術担当一名です」
「……では、技術班から実戦に長けた者を一人選んでくれ。あとは……確か、残った遺跡探索班員が一人いたな」
「ランクA、<風雲>ですか。あの男なら本部にいると思いますが……」
「では、彼に頼むとするか。最悪、門松君達が……いや、彼が何とかしてくれることを祈ろう」
「彼? あの曰く付きの新人ですか? 彼は一体、何者なのですか?」
「うむ。真道寺君や進藤先生が頻りに押していたからな。事情はどうあれ、役には立つだろう」
選定試験の傍らで不吉な風が吹こうとしていた。
XXXXXX
真道寺率いる三班は最初の広場から移動し通路を進んでいた。
十八名いた試験生は五人のグループが二組、四人のグループが二組の計四つのグループにまとまって行動していた。
順調に進んでいた一行だが、真人は妙な違和感を感じていた。
「この壁、傷一つなくて綺麗ですね」
「うむ。基本、聖域と呼ばれる遺跡はオーバーテクノロジーの塊だからな。特殊な材質で出来ているのだろうな。再生するとも言われておるしな」
「ほぅ、お主物知りだな。恐れ入る」
「何だ、その喋り方は?」
「えーっ、刀祢を真似してみたんだけど……駄目だった?」
「其方にはいつもの喋り方が似合う」
「そ、そうかな? エヘヘ……」
前方で刀祢と咲耶が親しげに会話をしていた。この短期間で随分と打ち解けたようである。
「何か雰囲気あるわよね」
「この遺跡は罠も無く簡単な部類だと聞いたことがある。恐れることは何もない」
「ふ~ん。足を引っ張らないでね。無理やり入ってきたんだから」
「僕はCランク、Dランクの君よりも上だ。余計な心配はしてないで、自分の心配でもしたらどうだ?」
「ランクが全てではないでしょ。そんなことも分からないの?」
「そんなことは承知している。そうではなくてだな……」
刀祢達の後ろ、真人の前には智と統吾が皮肉合戦を繰り広げている。
智ちゃんあ当初の印象よりも幾分か気が強いみたいだ。気の弱い第二十八支部受付嬢、愛理ちゃんとは違うんだな。
だが、あの子は空気を読むタイプとみた。是非とも親密になりたい。
……やはり何か変だ。おかしい。だが、今原因が判明した。
前列、刀祢+咲耶。
中列、智+統吾。
後列、真人一人。
コレだ。統吾の奴、割り込んできた分際で俺のポジションを奪いやがった。智ちゃんとのパラダイストークの野望を。
智の横で満更でもない顔で喋る統吾を見て、嫉妬の炎が燃え上がる。
嫉妬心はやがて悪意へと変わる。
(クソッ、いじって遊んでやる)
「あっと、足が滑った」
落ちていた瓦礫をピンポイントで統吾の尻に蹴り上げる。尖った部分が丁度良い角度で突き刺さる。
「ニョッ」と変な声を上げ、統吾が仰け反って尻を抱える。
「クッ……何をするんだ」
「ごめん、足元を見てなかったんだ」
「全く、気をつけてくれよ」
コイツ、天然であろうか。お人好しすぎる。悪意を微塵も感じていない。
再び悪戯しようとするが、ふと横にいた智ちゃんと目が合う。
「真人君、気をつけようね」
含みを込めた強い口調で智に注意される真人。目が笑っていらっしゃらない。
あれっ? 智ちゃんはそちらの陣営ですか。空回りする真人。
「聖域には色々な説がある。未来から転移してきた、あるいは宇宙人が勝手に建てていったなどといったものまで……ん? 其方らどうした?」
前列で咲耶と喋っていた刀祢が真人達のやり取りに気付き、振り向いて問いかける。
「な、何でもない。そ、それにしても、階段まで結構遠いんだな」
これ以上、悪印象を与えたくない真人は話しを切り替える。
「ふむ。この遺跡はすり鉢状になっており、最上部だけは通路が長いと聞いておる。次層からは極端に短くなるはずだ」
「へぇ~、流石にこれがあと十階層も続くんだったら、しんどかったね」
刀祢の解説に合わせるように咲耶が感想を述べる。刀祢の事をずいぶんと気にいったようである。
「君達、もうすぐ階段が見えてくるよ」
真道寺の言葉と共にうっすらと階段が見えてきた。気づけば真道寺が隣でにこやかに微笑んでいた。
「あの……何か用でしょうか?」
「いやぁ~、一人で寂しそうだったから、話し相手になろうかと思ってね」
余計なお世話である。こちらは特に話すことなどない。――と思ったが、兼ねてから聞きたかったことを質問する。
「この遺跡は先輩方が踏破したんですか?」
「そうだね。今回来ているベテラン五人ともう一人で踏破したんだよ」
「へぇ~、それにしても結構中は広いですよね。空気も妙な感じですし……外とはまるで違いますね」
「そうだね。聖域は隔絶された世界と言われていてね。外界とは何もかもが違う事もあるんだよ。『聖域』と呼ばれる所以だね」
成程、確かに聖域という呼び方がしっくりとくる。
「ここは現在国内で踏破したものの中でも最高ランクの遺跡でね。僕達が唯一踏破した遺跡でもあるんだ。あと国内では『草薙の剣』が発掘されたエイティスの遺跡が……Dランクだったかな。あとはFランクのミラルダの遺跡かな。あそこは確か神器『八咫鏡』が発掘されたと聞いている。後の二つは僕達とは別のメンバーが踏破したんだよ。今回は来ていないんだけどね。まあ時期会えるよ」
「ここが国内最高ってことは、ここで発掘された神器が一番強力なんですか?」
それならばもっとランクの高い遺跡ならば、より強力な神器が手に入るはずである。
低位の異能者でも楽に異形を倒せる日が来るかもしれない。
「遺跡のランクと神器の強さはイコールではないよ。そこら辺の因果関係は分かっていないんだけどね」
謎だらけということであろうか。好奇心旺盛な方であれば喜ぶ所かもしれないが、真人は喜べない。
何故そんなものが世界中の至る処にあるのか。知らぬ間に裏で何かが動いているような気がして気持ちが悪い。
「ここはレガンツェの遺跡と呼ばれていてね。通称『瑪瑙の遺跡』。
この国に保管されている三種の神器の一つ、神器『八尺瓊勾玉』が祀られていた場所だ」
「レガンツェ? 聞いたことがないですね。どういう意味ですか?」
「まあ、最深部まで行けば分かるよ」
意味深な言葉を吐く真道寺。後で分かるのなら敢えて聞かなくても良い。
「そういえば遺跡の化獣ってどこかから湧き出たりするんですか?」
「そうだね。倒しても数日後には増えてるからね。まあ、遺跡の防衛システムみたいなものさ。踏破済みの遺跡は実戦を経験するには最適の場所なんだよ」
話しているうちに階段入口にまで辿り着く。両脇に獅子の形をした石像が置いてある。今にも動きそうである。
「はい、ストップ。ここから戦闘が続くから、気を引き締めてね。準備はいいかい?」
「敵なんてまだいませんが……」
試験生の一人が戸惑いの言葉を吐く。
「うん。そこにいるのがそうだよ。Bランク相当だから油断しないようにね」
「え゛っ?」
そこと云うのはやはりあの石像であろうか。それ以外には見当たらない。緊張しながら近づく一行。
そこで気弱な発言をし出す真人。
「そういえば医療班は来てないんですか?」
「それも試験のうちということだよ。治癒してもらいたいなら誰かに頼むことだね。甘えないように」
甘い言葉で叱咤する真道寺。やがて石像が震え出す。付近の魔素が高まり、石像に集まっていく。いよいよである。
「来るぞ!」
遺跡での初戦闘が始まった。
文章の書き方が迷走している気が…




