第12話 選定試験開始
文章力がイマイチ。後で直すかも。ストーリーはそのままですのでご容赦ください。
今、目の前に鬼がいます。物凄く迫力のあるお方です。眼力が半端ないです。
「貴様か。遅れてきたバカは」
真道寺先輩が悪魔……失礼、今は神様でしたね――神様なら、この方は鬼です。冥界の鬼。悪魔と対をなす地獄の住人。
古沢さん、御免なさい。似ていると思ってましたが、全然違います。あなたの優しさが目にしみます。
周りの人達もその迫力に一歩引いている。いや一人、面の皮の分厚い人がいた。獅子堂さんだったか。
面白そうにこちらを見ている。俺は笑えません。涙が出そうです。最近、涙腺が弱いな。
その鬼に今怒られている。御免なさい。謝るのでもう許してください。
「ははっ……」
「何を笑っている、貴様。何かおかしいのか?」
すいません。何もおかしくありません。全部わたくしの不手際でございます。
心の中では謝り尽くすが、恐怖のせいか言葉にできない。
「い、いえ……」
「おい真道寺! コイツはもう不合格だ! 何故連れてきた?」
矛先が真道寺に向かう。よし、良いぞ。そのまま大怪獣対決をしていてくれ。
「門松さん、色々とあるんですよ。強いて言うなら上層部の意向ですね。例え貴方でも口出し無用です」
その発現に周りがざわつくが、一番驚いているのは自分である。
(上層部? おいおい、何か話が大きくなっているぞ。やめてくれ)
「まあ良いじゃない。特例はどこでもあるでしょ?」
「柴祁那か。お前もそいつの味方か。フンっ、なら勝手にしろ。俺は知らん」
ハイ。早速見放されました。上司に睨まれたら終わりです。雲行きが怪しくなってきました。
また上司に目を付けられるのか。やっとあのキチガイ山科から離れられると思ったのに。
ここ最近で何度目か分からない程増えた溜息を吐く。
これから先が思いやられる真人であった。
XXXXXX
都心から然程遠くない場所にそれはあった。
「ハァ……これが遺跡? 何かしょぼいな」
もっと宮殿や王城みたいなデーンっとしたインパクトを期待していた。
まるで只の山の中に無理やり入口を開けて創ったみたいだな。恥ずかしがり屋の皆さんだったのであろうか。
入口も一人用みたいだ。全員入れるのだろうか。
「こんな見た目ですが中は広いですよ。では、また後で会いましょう」
「私達は用事があるので失礼するわね」
真道寺と柴祁那が去っていく。ぽつんと一人取り残される。真人の周りだけ円を書いたかのように誰もいない。
どうも敬遠されているようである。目立つつもりはなかったのに、早速目を付けられたようだ。世知辛い世の中である。
全員が遺跡入口に集合している。いよいよみたいだ。
聴きやすいように試験生集団に近づき、一番後ろに陣取る。
門松さんが前に立ち、試験開始前の挨拶を始める。
「全員、これから試験を開始する。五つの班に別れて別々の道に向かう。各班には我々ベテランが一人ずつ就く。離れずに決して単独にならないように」
門松さんは茶色の短髪の40代のおじ様である。首元は太く体全体が鍛え抜かれた筋肉の塊である。
スピードを損なわないように調整されたバランスの良い筋肉。その実力の程が伺える。
「俺、七星さんの班がいいな~」
「俺は断然、柴祁那さん派だな」
俺の隣では今、熱い論議がなされている。顔の緩んだ締りのない蒼髪男とひょろっとした痩せこけた灰髪の男の二人組である。
彼らの話題はベテラン組の華、柴祁那先輩と七星先輩の優劣を決めるものだ。
<熱姫>こと七星焔先輩は真紅の髪が神々しい美人さんである。柴祁那先輩と比べても美人度は遜色ないレベルである。
「そこ! ふざけたことを言っていると失格にするぞ!」
門松さんからお叱りの声が飛びました。二人は恐縮して直立不動になる。何故か俺までもがギロリと睨まれる。というか、むしろ俺が一番睨まれている。
とばっちりで隣にいた俺までもが被害を被った形だ。お友達ではないですよ。赤の他人でございます。勘違いしないで頂きたい。
そこでふと七星先輩と目が合う。ニイッと獰猛な猛獣のような笑みを浮かべる先輩。もろ肉食系のお方とお見受けする。
普通の人よりも血の気が多そうである。これならば献血に大いに貢献できる。是非とも一度血を抜いてきて出直してもらいたい。
その血の気が俺に飛び火しないことを祈るばかりである。
危険を感じて目を合わせないように逸らす。だが強烈な視線は感じたままである。気づかない振りを通す。男たる者、引き返せないときもあるのだ。
それにしても顔色が悪い連中が何人か見受けられる。ちらちらと真道寺の方を意識しているようにも見える。
俺を見る目にも何だか哀れみを感じる。何だろうか。知り合いではないはずだが。遅刻してきたからバカな奴とでも思っているのであろうか。
まあ、真道寺は素行に関しては怪しすぎるからな。色々な奴らから恨みを買ってそうだ。
実は先日の真人と真道寺のやり取りを見て眠れずにやってきた者達なのだが、真人が知る由もない。
やがて班分けが始まる。
「アナタ遅れてくるなんて勇気あるわね~」
考え事をしていた真人に横から声がかかる。外部試験生らしき女性である。
「えっと、君は?」
「私はマリア。樹マリアよ。よろしくね」
外人? いや、ハーフか。透明感のある綺麗な蒼目が目立つ。髪は国内では珍しく黒である。異能が世界に溢れて以来、本来の髪色をした人間はいない。
日本人で黒髪はありえないのだ。
「こちらこそよろしく。俺は柊真人だ。マリアは外部の人間だろう? どうして試験を受けたんだ?」
「私はフリーライターみたいな仕事をしていたんだけどね。遺跡に興味があって応募したのよ」
興味があるだけではこの場にはいない。余程、腕に自信があるのだろう。
「へえ、趣味が高じてってところか」
「まあね。あなたは?」
「俺は強制参加だ」
「へ? 強制? それはまた……」
強制という言葉に哀れみの視線を向けられる。それには俺も同意見である。同じ感性の人間がいてくれて助かる。貴重な人材である。
「何も言うな。今日も二回も怒られたし散々だよ。さっきも近くにいただけであいつらの仲間だと思われたみたいだしな」
「アハハッ。災難ねえ」
「笑い事じゃねえ……」
「まあ、良いじゃん。もう目を付けられていたんだからさ。一回も二回も似たようなものじゃん」
「そういう問題かよ。はぁ……」
「気にしない、気にしない」
肩をバンバンと叩かれる。陽気な性格のようだ。多少心が軽くなった気がする。
「一応、礼を言っておく」
「ん? ふふ、どう致しまして……もしかして照れてるの?」
「そんなんじゃない」
「ハハッ、お互いがんばろうね。同じ班になれたら良いね」
そう言うとマリアはどこかに去っていった。どうやら名前を呼ばれたようだ。
気立ての良い奴である。そういえば優しい言葉を掛けられたのはいつ以来だろう。それを思うと切なくなる。
「強制参加? 彼は一体……」
そう言ったマリアの呟きは真人に聞こえることはなかった。
マリアは別の班のようである。そういえば俺の班はどこだろうか。只今、班分けの真っ最中であるが、未だ俺の名前は呼ばれない。
自分の名前が呼ばれるのを待っていると誰かが近づいてきた。<唯我独尊>と呼ばれていた大男こと獅子堂先輩である。この人の班なのだろうか。
「よう、柊といったか。初日であの門松に目を付けられるとは、お前おもしれー奴だな。俺は気に入ったぜ。獅子堂一樹だ。よろしくな」
「はいっ、よろしくお願いします。柊真人です」
獅子堂先輩が気さくに笑いかけてくる。初印象とは違い案外良い人である。<唯我独尊>などと言われていたのでもっと嫌な人かと思った。
「あの、俺って獅子堂先輩の班なんでしょうか?」
「ああ、違う違う。ちょっと声を掛けてみただけだ。さっきも巻き込まれて気の毒だったしな。まあ、頑張れや」
この優しい言葉。身の隅々にまで沁みて感動で震える。連続での人の優しさに触れホロリと涙が溢れる。
最近、悪魔共に毒されていた自分に反省する。世の中は優しさで溢れている。
「お前の班はアイツの所だ」
獅子堂先輩が指差す方向を見るとそこには真道寺がいた。
「柊君、君は僕の班だよ」
浸っていた気分が台無しである。無粋な奴だ。俺はどうやらコイツに呪われているらしい。いや、憑かれているのか。
「以上だ。では幸運を祈る」
班分けも終わり、門松先輩が言葉を締める。
試験生達が各班毎に分かれ、ベテラン組にリードされながら次々に遺跡の中へと入っていく。
こうして選定試験が始まった。




