帰ってきた少年
初投稿です。
見づらいかと思いますが、ご容赦ください。
空港に降り立つ一人の少年。
彼にとっては五年振りの祖国への帰郷である。
辺りには長い座り旅に疲れを残し、身体を解している姿が多く見られる。
今は冬と春の境目。
機内から一歩踏み出すと、寒気と暖気が混じり合い、心地よい風となって、少年の髪を撫でる。
少年には快適で居心地が良い気候である。
懐かしい空気の匂いに様々な想いを乗せて、感慨深げに一息つく。
「ふうっ、やっと帰ってきたか」
国内には辿り着いた。
だが目的地まではまだ遠く離れており、これから数回の乗り継ぎを必要とする。
まだ到着ではないのだ。
久しぶりの祖国の景色をゆっくりと見渡しながら、周りの乗客に迷惑をかけないように規則正しく歩いていく。
「しかし俺が言うのも何だが、良く仕事が見つかったよな。師匠、どんなコネを使ったんだ?」
少年は就職のために祖国に戻ってきた。
社会勉強の一貫という理由で師匠の伝手を使い、仕事を紹介してもらったのである。
快く了承した師匠の思惑とは裏腹に、少年はこの仕事に骨を埋める覚悟でいた。
「俺は中学すら卒業していないからな。学歴は小卒?……そんな奴他にいるのか?」
少年の学歴上、就職口が見つかったのが奇跡であり、この先そんな幸運は訪れない。ある意味、少年は現実主義者であった。
少年の年齢は現在十八歳。
五年前といえば十三歳、中学に入ったばかりの頃である。
少年は孤児であった。
戦争で親を失ったなどと綺麗なものではない。
生まれて直ぐに捨てられたのである。
理由は今の世界で異端とされる少年独自の事情にあった。
この世界にそぐわない存在であった少年。
それでも孤児院で同じ境遇の仲間、家族達とそれなりに幸せに生きてきた。
だがそれすらも失ってしまった。
そんな時であった。少年が師匠に出会ったのは。
師匠に頼み込み弟子入りさせてもらい、今日まで祖国を離れて各国を旅していたのである。
失った過去を否定しないため、何も失わない未来を掴むために少年は足掻いていたのだ。
穏やかとは掛け離れた殺伐とした日々。
様々な人々と触れ合い大切なものも出来て、それなりに幸せであった。
大事なものを守れる力も手に入れた。
その人達に会えなくなったのは寂しいが、人間平穏が一番である。
落ち着いたら暇なときにでも会いに行けば良い、一般人として。
今日から新たに静かな生活を築いていくんだ、そう少年は固く心に誓っていた。
「最低限の知識は師匠から習ったから良いけれど……」
異能が当たり前になった社会。
かつて異能が夢物語でしかなかった時代を「旧時代」と呼び、異能の溢れる今の時代を「新時代」と呼んでいた。
旧時代が、歴史でしか語られない遠い過去の記憶としてしか、繋ぎ止めることができなくなった現在。
電気エネルギーが縮小される一方、異能エネルギーが大半を占め、世界はもはや異能無しでは生きていけなくなっていた。
「日本か……久しぶりだな」
そんな時代に少年は生きていた。
小説書くのって大変だね。