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 ……ドロドロとした触手が絡み付く。体の動きを封じる様に、俺の心を黒に染める様に。

 ーーそうして、消えた筈の男が現れる。今は誰よりも明瞭な姿形で、あの時と同じ威圧を持って。逃げられない俺を床に押し付けて。

 叩き付けられる拳。腹に食い込む踵。抜ける程に髪を引っ張る手、すっかり脅えきった俺にのしかかる体、獣の匂い、草食動物を狩る獰猛な肉食動物さながらーー

 ……叫ぶ。蘇る恐怖は俺を狂わせる。思い出す痛み、思い出す屈辱。俺を絡め取り縛り付ける触手ーーもう、まともでは、居られない……




 ーー杉崎は、二歳上の俺の兄の同級生だった。真面目だった筈の兄が杉崎の所属する不良グループに足を踏み入れ出したのは、受験前頃からだった。両親が自宅から離れた居酒屋を経営している事から、いつからか自由に使える自宅が不良達の溜まり場になってしまっていた。

 不良達との接触を避ける為、俺はいつも学校が終わると両親の居酒屋に行き、宿題の合い間に店を手伝って過ごしていた。兄との関わりもなかった。ましてやその中の一人なんかに関わる事など考えもしていなかった。

 いつも心配する両親が寄越してくれる誰かしらの店の従業員と一緒に店から帰って来た俺を、ある日兄が呼び留めた。明日、俺は用事があって出掛けるんだが、杉崎って奴が大事なものを渡しに家に来るんだ。お前、代わりに受け取っててくんねえか?

 初めに考えたのは麻薬の類だった。嫌だ、と俺は即答した。別におかしなもんじゃねえよ、お前にも見せてやろうか、ただのアダルトビデオだよーー中身が明かされた処で、がらの悪い兄の知り合いに関わりたくはなかった。断固、俺は嫌だを通した。

 分かったよ、意固地なやつ、と兄は手を挙げる事なく諦めてくれた。安心した俺は、翌日も変わりなく学校から直接店に向かっていた。友人と別れて、後もう少しで店という所で、背後から俺は誰かに口を塞がれ後ろ手に腕を掴まれた。正面には兄、何が起きたのかを認識する前に腹を殴られ、俺は意識を失った。

 ーー目覚めたのは、不良達に占領されていた自宅の中、兄の部屋だった。間近から自分をしげしげと見つめるいつも兄と一緒に居る不良の一人、それが杉崎だったのだ。

 こりゃ楽しみだな、杉崎は愉し気なくらい嗤いを顔に浮かべ……突然頬をはたかれ俺は吹っ飛んだ。起き上がる間もなく背中に蹴りが入れられる。離れて腰掛けて旨そうに煙草を吸って、あんまし傷はつけんなよ人の大事な弟に、などと兄が言うのを俺は朧に聞いていた。

 ……容赦ない暴力が繰り返された。突き飛ばされ何度も壁に全身を打ち付けさせられた。髪を掴まれ挙げさせられた顔に、実に楽し気に歪んだ杉崎の顔が近付けられた、可愛い顔が脅えて泣き叫ぶ絵面、堪んねえだろうなあ、まだ足りねえよなあ……うっとりと囁く杉崎の声に被さる兄の笑い声、狂ってやがる……勝手にやってな。

 言い捨てて、兄は出て行った。杉崎の暴力は続く。終わらない痛み。徐々に反応を返せなくなってきた俺の体を暫く床に転がして、杉崎はやがてどさりと俺にのしかかってきた。ジーンズに手が掛かり、脱がされる。下着も同様にーー訳が分からないまま恐怖だけは感じ、俺は叫ぶ……そう、それ、と杉崎は満足気に嗤った。最大限に脅えた顔見せてくれよ、可愛こちゃん……。

 辱める為だけに裸にされた、杉崎はあくまでも俺の脅える顔を泣き叫ぶ声を誘発したいのであって、行われたのは純粋に力任せの暴力でしかなかった。

 初めは、そうだった。それが次第に拳と足での攻撃に飽きた様に、サバイバルナイフで脅され薄く肌を切られる様になり、服やタオルで手足を縛られる様になり、何だか暴力の風向きが違ってきた。そうして、異常な欲望が芽生えたのかーー性的な行為へと、杉崎の目的は変わっていた。

 ーー半年以上も、俺は杉崎に虐げられていた。忙しい両親には話せなかった。兄は時々俺を捕まえ杉崎の前に献上する役目を果たし、最初の方だけ見ていた、意外と可愛い顔すんのなこいつ、などと評価を加えたりしながら。

 ーー兄が暴力団の女関係で組員に狙われ命を落としたらしい事は、杉崎から聞かされた。そんな杉崎も、ある日を境にぴたりと姿を現さなくなった。体を犯されて二回、次にされたら舌を噛んで死んでやると本気で誓った矢先の事だった。

 暫くして全校集会でその理由を知った、バイク事故で崖下に転落し、遺体が三週間ぶりに発見されたのだと。

 そうしてようやく、俺は地獄からの解放を得たのだった……。




 ……眠れない。眠りの中に、あいつはやって来る。

 ーー死んだ筈だ。頭では分かっている。だがそいつが自分の居る黄泉の奈落に俺を引き擦り込もうと甦ったのだと、俺はそう信じきっていた。復讐にきたのだと。

 逃げる事は出来ない。実体のない幻影に俺は押さえ込まれ、身動きが取れないのだ。叫ぶ。縋る様に名を呼ぶ。もう少し早く行動を起こしてさえいれば気持ちが通じ合っていたかも知れない、大好きだと分かった人の名を。喚く。無駄だ、と囁くそいつに、そうして希望はへし折られる。

 心が、壊れていく。もう戻らない、と俺には分かっていた。幾ら呼んでも、俺の声は高原には届かないのだ。以前よりも絶望は深い。……僅かにも期待を抱いた分、替わる失望や喪失は余りにも大きかった。

 ーーそうして唐突に、ぷつりと何かが切れた。俺は無になった。迫る男を感じながら、押し倒されのしかかられ殴られながら、体の痛みも精神的苦痛も何も感じていなかった。こみあげる吐き気も、最後に待ち受ける屈辱への恐怖も、ただ幻影から受ける陵辱だけは続くのに、俺は空っぽになった意識でそれをやり過ごしていた。やり過ごせていた。




 肩を掴む手がぐらぐらと激しく体を揺らしてきた。今迄にない、遠慮がちな触れ方。

 間近に顔が迫る。いつでも人を見下す目で、ちゃちな楽しみにしか笑えない口元を歪ませて。

 不快も嫌悪も畏怖も、もう何も感じない俺は、視線をどことも向けずに体を揺らされるままに任せていた。どこか遠くから、聞いた事のない雑音が混じった。

 断片的に聞こえてくる大きな声。……くん、……なくん、ちばなくん、たちばなくん!!

 女性の声だというのが、俺の意識を不意にはっきりとさせたらしい。あいつには名前など一度も呼ばれた事はない、との事実もあいまって。

 ばしっ、と頬に痛みが走った。現実の体に触れる誰かの手、目の前で肩を揺さぶりながら名を呼び続ける誰かーーしっかりと目が捉えた高原のお姉さんの顔を、戸惑いと共に俺は見返した。

 焦点が結ばれ意識のはっきりした俺に気付いたのか、恐らく頬にもう一発喰らわせようとしていた平手を止めて、お姉さんは噛み付く様に言葉を投げてきた。

「しっかりしてよ、橘くんっ!! あの子死にかけてんのよっ!! 君に来てもらわないと、君に呼んでもらわないと、あの子死んじゃうかも知れないのよ?! 橘くんだけが頼りなんだからねっ!! 呆けてる場合じゃないわよ?!」

 矢継ぎ早に言われて、お姉さんの台詞の理解が直ぐには出来ない俺は、まだぼけっとお姉さんを見返すだけだった。やっぱりもう一発平手を俺の頬にお見舞いしようと考えたのかお姉さんの腕が後ろに引かれる、同じ顔の懐かしさにただじっと、その生き生きとした姿を見上げるだけの俺に、やがてはあっと小さく息をこぼして。

 もどかし気に俺の手首をぐいっと掴み、お姉さんは強引に俺を立たせた。凄い力、冷静に感心する俺を更も引っ張り、お姉さんは俺を外に連れ出そうとするーー玄関先で突然俺からの抵抗を受けて足を止めさせられたお姉さんは、睨む様に俺を振り向いた。

 突然の現実にまだ対応出来兼ねている俺には、家から外に出る心の準備など出来ていなかったのだ。予想もしない人物の登場であいつは吹き飛び、無になっていた感情や感覚は戻ってはいたけれど、それでも自分を守る家から外になど出たくはなかった。

「た・ち・ば・な・くんっ!!」

 腹の底から響く程の怒声でもって、お姉さんは俺を射ったーー

「あたしじゃ駄目だったのよ。父でも母でも。あの子の心に響くのは、あなたしかいないのよ。お願い、橘くん、まさなおを助けて」

 あの子死にかけてんのよ、初めに叫んだお姉さんの言葉が、俺の脳をがつんと揺らした。高原が死にかけてる? 高原がーー

 唖然と遠くを見つめる俺の手を、無言でお姉さんはまた引っ張った。ガチャッとドアが開けられる、力の抜けた俺の体を引っ張り、お姉さんは走り出した。




 車に乗せられ、硬い表情で運転するお姉さんからの説明はなく、自分から聞きたいけれども勇気のない俺も黙ったまま、高原に何が起きたのかをただ俺は考えていた。

 死にかけているーーお姉さんやご両親の呼び掛けにも応じずに? 意識不明という事なのか? 事故? 事件? 病気? 助けて、とお姉さんは俺に縋るけれどもーー

 俺に、高原を救える訳がない、と冷静な部分が囁いている……遅過ぎた俺に、自分からは何も努力をしなかった俺に、もう俺を見限った筈の高原が応える訳はない。お姉さんには悪いが、俺に出来る事など何もないだろう。ただ死なないで、と祈る意外には、何も。




 小さな病院に車は止まり、お姉さんはまた俺の手首を掴み院内に入って行く。真っ直ぐに病室に向かっているのだろう、死にかけているという高原の容態が気になって、俺の足も早くなる。

 着いたらしい部屋のドアをガラッと一気に開け、お姉さんは驚きの後に神妙な顔で目を反らす同室者らしい患者さん達の前を進み、一番奥のベッドに向かった。




 ーー空っぽだった。ただの不在だと思うには、ベッドの上や周囲に散乱した医療機器は不自然にそこにあった。置きっ放しの心電図のモニターのスタンド、救急の際に使うらしいカートは開きっ放しで、マスクや何かが飛び出したままだった。

 ……そこから考えられる事実は二つ、急変して治療の必要な場所に移ったか、或いは既にーー

 震える足が、体を支えられなかった。ぺたん、と俺は床に座り込んでいた。放心して、ただベッドを見つめていた。……もう失ってはしまった人だった、だけどそれは俺にとってというだけであって、その命は俺とは関わりのない所で続いていく筈だった。一番に死から遠い所に居た様な、日向のひまわりの様な人。

 高原。呼ばずに居られなかった。高原。涙で喉が詰まる。高原。後ろに居る筈のお姉さんや同室患者達の存在も忘れ、俺は声に出して呟き続けていた。ただその名を。高原。大好きな人。大好きな、大切な人。高原。縋る様に、祈る様に。いつも心が求め続けていたその人の名を。高原……!!

 ーーふわりと、暖かな腕が降りてきた。よく知る温もり。と思う間に、ぎゅうっと背中から体を包まれた。

 言葉を止めて、俺は息を呑む。この感触。この優しい暖かさ。体が覚えている、他ならぬ高原の抱擁。

 何故? 死んだか危篤の筈……これは、高原の生き霊なんだろうか? パニックになり身を硬くする俺の耳に、懐かしい高原の声が落とされた。

「橘。橘……たちばな。ごめんね、やっぱり俺橘の事大好きで我慢出来ない」

 ーーああ夢なんだ、と俺は目を閉じる。こんな都合のいい言葉、俺の願望が作り上げた幻なんだ。最後にそうして欲しかったと望む気持ちが作った、これは俺の贅沢な希望ーー

 『俺に都合のいい夢』は、まだ続いていた。更にぎゅうっと強く抱き締めてくれながら、願望の高原は囁くのだ。

「今来てくれたのが、今泣いてくれてんのが、ただの心配からってだけでも俺には嬉しい。今少しだけ、あともうちょっとだけこうさせて。……ごめんね、この間。俺橘を突っぱねちゃった。しかも、思ってもない冷たい事言っちゃった。橘泣かせて、放ったらかしにした。最低だったね俺。あん時さ、言われたのだけ信じて、橘自身に確認するの恐くて逃げてたんだ。完璧誤解だったのにさ。ごめん、……どんだけ謝っても足りないだろうけど……ごめんね」

 囁きはゆっくりで、その分長い時間高原の温もりに包まれて居られるのが嬉しかった。けれどもそうしながら、俺は自分の妄想が告げる台詞の内容を、自分が言わせている筈なのに何だか違う考えの言葉の羅列に、何とはなしに違和感を感じていた。

 更に方向性を違える言葉が、続けられる。

「考えたら分かるのにね。橘親を使う様な卑怯な人じゃない事位さ。けど俺さ、橘に嫌われたくないのと同じ位、橘に傷付いて欲しくないからさ、信じちゃったんだあの時。俺がいなくなれば、それ以上橘傷付かなくて済むのかなって思ってさ。……けどさ、誤解で良かった。苦しくてさ、俺もう死のうかと思ってた。橘の事我慢すんの限界でさ。ここ迄きたらもう関係ない、橘も道連れに死んでやるって本気で思ってたんだよ」

 段々と、言葉の意味が分からなくなっている。躊躇いがちに、俺は口を挟んでみた。

「あの……高原?」

「ん?」

 顔が近付けられたのか、息が頬に掛かる。随分と質感のしっかりした幻だ、とはもう思えなくなってきた……思い切って、俺は際どい質問を投げてみた。

「高原、生きてるの? 死にかけて出て来た生き霊じゃ、ないの?」

「生き霊って……」

 真面目に受けた後で、ふとその声が楽し気なものになる。

「ああ……飛ばしてたかも知れないね、俺。いつでも橘の事見ていたくて。ちょっとでも橘の気を引こうとしてさ」

「違う。今。高原死にかけてるんだろ? 死ぬ前に、最期に出てきてくれただけなんだろ?」

 抱き締める腕の力が緩んだ、いつかの様に体を回され、俺は高原の方を向かされていた。懐かしい顔は、眼鏡をしていないせいかより真剣さを増して、俺を不安にさせた。

 目を反らしてもう続けられない俺に、死にかけてなどいなかった高原が柔らかく問いを投げてきた。

「死にかけの俺は、橘に何を言うの? 橘は、俺に何を望んでるの?」

 それは、言えない。遅過ぎた俺のせい、自分から行動を起こせなかった俺に、期待なんてする権利はない。

 頑なに口を閉ざす俺に、高原はふわりと笑った様だった。高原の右手が伸びて、緊張した俺の頬にそっと触れてくる。

「誤解、だったんだよ……って、橘何の事か分かる訳ないか。今話してもいい?」

 高原の手がずれない様にぎこちなく頷いた俺に、高原が話し始めた。

「さよならって言ってから、俺最初橘の事着信拒否してたんだ。拒絶されんの恐かったからさ。大人げない事してごめんね。その後すぐ解除して、言い訳じみたメール何回も送ったし電話もしたんだけど、今度は橘が俺を無視してた。と、思ってた。それがまず誤解。橘の携帯、今どこにある?」

 急に聞かれて、部屋の中を探してもいない事を思って、俺はまごついた。ぱっと挙げられた高原の左右の手の中に同じ色の携帯が各々一つ、同じ機種、見慣れた形。一つは高原のものらしいけど、もう一つはーーまさか、高原のを真似した俺の……?

 ぽかんとそれを見つめる俺に、高原が説明を続けてくれる。

「どこで落としたのか分からないみたいだけど、橘のこの携帯、最悪な事にあの四人組に拾われてたんだよ。俺が送ったメールだけ見てあいつら、フラれた俺が未練たっぷりにまだ橘に迫ってると捉えたらしいね、まあ近いけどさ。そんであいつら、橘の携帯から橘の両親と見せかけた年輩の男女に電話させてきたんだ。あなたに付きまとわれて嫌な事をされて息子が悩み傷付き苦しんでいる、今日はとうとう手首を切った、二度と息子に近付かないで下さい、って涙ながらにね」

 俺の知らない所で展開されていた出来事の詳細に、俺は聞き入っている。そっと携帯を下ろして、高原は続けた。

「橘休んでた時期もあっただろ、そんでそれ聞いたそばから委員の当番日に倒れてるしーー痩せて真っ白でさ、確かに腕とか傷だらけだし、確かめる迄もなくそれが事実なんだって思ってさ。そしたら何だか混乱しちゃって。橘の事諦めなきゃっていうのと、いや諦めたくないってのでぐちゃぐちゃになっちゃってさ。結局橘に冷たくしちゃったんだ。……馬鹿だよね、そん時ちゃんと橘の話聞いてあげてれば……橘も、俺も、こんなに悩まなくて済んだのにね」

 自由になった両手で、高原が俺の頬をまた優しく包んだ。杉崎が遺した『傷だらけの腕』を見られてしまった事に動揺する俺は、咄嗟にそれから逃げようとしてしまった。

 だけど、強い高原の両手が、それを許さなかった。ぐっと俺の顔を自分に対峙する直ぐ真ん前に固定して、高原は毅然と告げた。

「駄目。逃がさないよ。もう絶対、捕まえたこの手を俺は離さないからね。二度と後悔したくないから。俺が悲しみたくないし、橘の事も悲しませたくないからさ。離さないよ」

 最後は、囁く様に。俺を見つめる、見慣れた優しい瞳。嘘偽りなく愛情に満ちた表情。

 ーー浮かんだ涙を、俺はどうすればいいのか分からずにいた。あの時言えなかった想いを、遅過ぎた本心を、今口にしてもいいのだろうか……?

 まるで俺の考えを読み取った様に、高原はにっこりと、俺が一番に欲していた大好きな笑顔を俺に向けてくれている。いつ迄も見つめる俺を、ただ優しい目で。

 ……涙が落ちた。俺は、高原が好きだ。高原が居ないとまともではいられない。高原が傍に居てくれないと、俺は……

 言いたくて、あの時言えなかった想いを伝えたくて、俺は口を開く。でも言葉は喉元で絡まって、一番に言いたい事なんてそれだけなのに、ーー遅過ぎたよね、嘲笑ういつかの高原の顔が不意によぎって、俺は何も言えずに居た。

次が最終話になります。


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