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冥婚から始まる皇妃戦略 - 棺桶で叩き起こされた最強の妻  作者: 白狼九音
第一卷 冥婚から始まる鎮魂歌
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太后の面接

私は二人の宦官に両脇を固められて、いくつもの宮門を通り抜け、太后の寝宮へ向かっていた。


「固められる」って言うのは、ちょっと正確じゃないかも。彼らはただ左右に一人ずついて、物凄い速さで歩くから、私が小走りでついていかなきゃいけないってだけで、これって多分、一種の礼儀?それとも威圧?まあ、前世の経験から言うと、見知らぬ環境でバランス感覚を失わせるのは、心理的プレッシャーを与える古典的な手法だ。


残念ながら、彼らの相手は私だ。


前世、私が担当したトップの中には、大河ドラマに出た奴も何人かいる。奴らがNHKのスタジオで撮影してる時に、差し入れがてら遊びに行って、ついでに『葵徳川三代』と『功名が辻』を全部見ちゃったんだよね。別に暇だったわけじゃない。職業柄、必要なんだ、クライアントが何を演じてるのか知らなきゃ、CPを盛り上げたり、イメージを洗浄したり、話題を仕込んだりできないでしょ。


だから私は今、小走りしながら、つい心の中で目の前のセットを採点してる。


宦官の歩く速さ、8点。圧迫感は十分。

宮道の長さ、7点。VFXの奥行きには敵わない。あと五十メートルあればもっと効果的。

両側に立つ護衛、9点。目をそらさず、プロフェッショナル。

頭上のお天道様、10点。眩しくてクラクラする。これはキツい。


そして、女官たちのひそひそ話が聞こえてきた。

「見た?あの人よ、三皇子の冥婚のお嫁さん」

「棺桶から這い出てきたんだって、生きてるんだって!」

「しーっ、小声にして。太后様の人が見てるわ」

「太后様、どうするのかしら?」

「さあね。とにかく三皇子が亡くなってから、太后様は三ヶ月もまともに食事されてないって。誰かが三皇子の話をすると、すごく怒るんだって」

「淑妃様の方は大喜びみたいよ。最近は七皇子が毎日欠かさずご機嫌伺いに行ってるんだって」

「天極閣の七人もすごいわね。七皇子の支持率が三割から七割に跳ね上がったんだって。たった三ヶ月でよ」

「もうやめてやめて、人が来るわ」

私は彼女たちの前を通り過ぎる時、目の端でちらっと見た、三人の小女官、十五、六歳、丸い顔をして、怖がってうつむいて私を見ないようにしてる。

面白い。

情報の断片が自動的に頭の中で一枚の図に組み上がっていく。

第一、太后は権力の中心で、しかも三皇子をすごく可愛がってる。

第二、淑妃と七皇子は別の派閥で、今まさに台頭してきてる。

第三、天極閣、あの前世のクズとそっくりな七人、は七皇子のブレーンだ。

第四、この「棺桶から這い出た女」である私は、今は未知数で、全員が様子をうかがってる。

職業病で自動的にモードに入る、世論分析完了。次はクライアントの人物像だ。

太后——六十歳前後。孫を亡くして三ヶ月。情緒不安定で権力欲は強いが、三皇子への愛情は本物。

ニーズ顧念理由が欲しい。出口が欲しい。孫が無駄死にじゃなかったと信じられる何かが欲しい。

太后は淑妃派にじわじわと追い詰められていて、味方が必要。

弱点は、第三皇子——蕭景瀾。

こんなクライアントを相手にする時は……

私は深く息を吸い込んで、表情を調整した、あまり卑屈になりすぎない。何しろ私は皇子妃だ。舐められる。あまり偉そうにしない。不敬の罪で斬首される。ちょうど良い塩梅の「柔弱さの中に強さを秘めた百合の花」、これは昔私が担当した若手女優のクラシックなキャラ設定で、これで日劇学院賞を取ったんだ。

宦官が寝宮の前で止まり、甲高い声で取り次いだ。

「第三皇子妃、参上、」


私は入っていき、うつむきながら、目の端で周りを見た。

太后が上座に座っている。全身黒の普段着、頭には一本の白玉の簪だけ。全身に余計な装飾品は一つもない。でもその一目で分かった、この人は只者じゃない。

彼女の気場がすごいからじゃない。彼女の目だ。

その目が私を見ている。一切の感情が込められていない。

怒りでもなく、悲しみでもなく、好奇心でもなく、嫌悪でもない。ただ……何もない。

死水のようで、一塊の氷のようで、時代劇で見るあの年老いた芸術家級の俳優が北政所を演じる時の目つきのようだ、でもあれは演技だと分かってる。そして目の前のこの人は、本物だ。

私は彼女の三歩手前まで行き、ひざまずき、元の身体の記憶にある礼儀作法通りに頭を下げた。

「顧念と申します。太后様、お目通り叶い、光栄に存じます。」

「顔を上げよ」

顔を上げた。

私たちは見つめ合った。

三秒。五秒。十秒。

私は逸らさない。

これも私の職業病だ、相手が目で圧迫しようとしてきたら、逸らしたら負けだ。相手を見なきゃいけない。でも挑発的にじゃなく、卑屈にでもなく、普通のクライアントを見るみたいに、平静に、礼儀正しく、ちょっと好奇心を込めて見るんだ。

「そなた、わらわを怖がらぬのか?」

怖い?そりゃ怖い。でも——正直に言うのが一番だ。

「怖いです。でも——」

そこで、わざと間を取る。

「怖がっても無駄だし。怖がったら殺さないでくれるわけじゃない。だったら、怖がらない方が、ちょっとだけマシかなって」

太后が、ぽかんとした。

(やった。一勝ち)でもこの表情、最初の勝負は勝ったなって分かった。

それから彼女があの言葉を言った、

「わらわの孫は死んだ。お前は生きている。わらわにお前を殺さない理由を一つ申してみよ」



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