二人の下男
金の簪を取り出し。
棺の蓋をこじ開けるわけじゃない。
そんなバカなことはしない。
棺の外は皇陵で、葬列がいて、景琰が残したかもしれない者たちがいる。棺をこじ開けて這い出したら、唯一の結末は化け物としてその場で撲殺されることだ。
別の方法を使う。
棺の中にうつ伏せになって、棺の板に耳をくっつけて、じっと聞いた。
葬列は移動している。
前は十六人で担ぐ金糸楠木の大棺、後ろは私の棺。さらに後ろは儀仗隊、宦官、女官、人が多くて足音が乱れている。
でも私が聞いているのはそれじゃない。
私が聞いているのは、あの薄汚い棺桶の方向だ。
足音。二人。
だんだん近づいてくる。
「早く早く、向こうが気づかないうちに、運び出せ!」
しわがれた声が急かしてる。
あの二人の下男だ。
私の棺を共同墓地に運びに来たんだ。
棺が持ち上げられた。
今度はたった二人で担いで、ふらふらと揺れて、棺の板が「ギシギシ」と軋む。
私は隙間から外を見た。
やっぱり。
二人の下男が、こそこそと別の方向に歩いてる。あっちは裏山、共同墓地の方向だ。
前方、皇陵の正門では、あの豪華な棺がゆっくりと運び込まれている。十六人の屈強な男たち、整然とした儀仗、荘厳で厳か。
一方こっちは、たった二人、慌てふためいて、人に見せられないものを運んでるみたい。
「兄貴、お、私たち、本当に共同墓地に捨てるのか?」
若い方が小声で尋ねた。
「これ、皇子妃だぜ……」
「皇子妃だと?単なる身代わりの死に損ないだ!」
年長の方が声を潜めた。
「殿下のお言葉が聞こえなかったのか?第三皇子は死んだ。この女は阿呆で、どうせいつか死ぬんだ。どこに捨てようが同じだって?」
「でも……」
「でもも何も!早く行け!もし太后の者たちに私たちが皇子妃を犬の餌にしたって知れたら、二人とも首が飛ぶぞ!」
彼らの会話を聞いて、口元が自然と上がる。
今だ。金の簪を取り出し、棺の板の隙間から差し出して、そっと叩いた。
「コツン、コツン」
二人の下男が同時に足を止めた。
「な、何の音だ?」
若い方の声が震えてる。
「バカ言うな!早く行け!」
年長の方も声が震えてるけど、強がってる。
もう一度叩いた。
今度ははっきり聞こえた、
棺の中から音がしてる。
「ぎゃあ、!」
若い方が悲鳴を上げ、棺桶を落としそうになった。
「黙れ!」
年長の方が低く唸った。
「あの女は阿呆だ。たとえ死んでても何か音がしたっておかしくない!早く運べ!」
私は口を開く時だ。
喉を整え、声をコントロールして、とても軽く、とても柔らかく、棺の板越しに伝わるように言った。
「お兄様たち、ちょっと待って。ちょっとだけ話があるんだけど」
棺が激しく揺れた。
「お、お化け、お化け……」
「慌てないで」
私の声は相変わらずとても落ち着いている。
「私はお化けじゃない。生きてる人間よ。お化けだったら棺桶がこんなに重いわけないでしょ?それにお化けがこんなにはっきり話せるわけないでしょ?」
彼らは応答しない。多分、考えているんだ。
「あなたたち、私を共同墓地に運んだら、私は確実に死ぬわ。でも私が死ぬ前に、どうしてもあなたたちに話さなきゃいけないことがあるの、」
ちょっと間を置いた。
「私が棺桶に入るとき、殿下がこんなことを言うのが聞こえたの」
「……何て?」
「『あの二人の下男は、これを運び終わったら口封じしろ。奴らは見てはいけないものを見てしまったからな』って」
年長の方が息を呑んだ。
彼が信じたのが分かった。
だってこれは本当のことだ。景琰は確かにそう言った、彼らに言ったわけじゃないけど、確かに言った。私の元の身体が恐怖で死ぬ前に言ったんだ。
この二人の下男が皇子妃の棺を共同墓地に運ぶ。これは人に見せられないことだ。
後で口封じするのは、あまりにも普通のことだ。
「お、お前、でたらめを……」
「私がでたらめかどうか、あなたたちが一番よく分かってるはずよ。殿下がそんなことをする人間かどうか、殿下がどんな人間か、あなたたちは私よりよく知ってるわ。あなたたちを殺すのは、蟻二匹を潰すようなものよ」
長い沈黙。
「兄貴、彼女の言う通りかも……」
「黙れ!」
「お兄様たち、いい考えがあるの。あなたたちの命も救えるし、私の命も救える方法が」
「……聞こう」
「今すぐ向きを変えて、私を皇子の陵墓の前に運ぶのよ。そこに着いたら、大声で叫ぶの、『第三皇子妃、お成り!』って」
「……それは自殺しろって言うのか?!」
「自殺?違うわ。よく考えてみて。あそこには太后がいらっしゃるのよ。あの方が一番第三皇子を可愛がっていて、今第三皇子は亡くなって、太后の唯一の執念がこの冥婚よ。もし誰かが第三皇子妃を犬の餌にしようとしているって知ったら、太后はその人をどうすると思う?」
「本当か……」
「でももしあなたたちが私を運んで、皆の前で『第三皇子妃、お成り』って叫んで、私を生かして、あの死んだ犬を暴けば、あなたたちは護衛の功績ありよ。太后はあなたたちを殺さないだけでなく、褒美をくれるわ」
ちょっと間を置いて、一言付け加えた。
「それに、景琰はあなたたちを口封じしようとしてる。それを皆の前で暴露するのよ。太后がいる前で、彼にあなたたちを殺せる?たとえ後日でも同じよ。殺したら彼がやったって認めるようなもの。皇子がそんな低級なミスをするわけない」
完璧!そして心の中でカウントダウンを始めた。3……2……1……
おいおい!まさか反応ないの……!?
でも棺が突然向きを変え、走り出した。中で私は吐きそうになるくらい揺さぶられて、頭が棺の板に激突して「ドン」と鈍い音。
痛い、でも笑った。
成功した!




