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冥婚から始まる皇妃戦略 - 棺桶で叩き起こされた最強の妻  作者: 白狼九音
第一卷 冥婚から始まる鎮魂歌
14/28

暗流うごめく

朝食を済ませて、私は屋敷の中を「散歩」。

名目上は環境に慣れるためだが、実際はあの人たちの反応を見るため。

執事は陳と言い、四十代、かなり敏腕そうに見える。

彼が私を連れて屋敷の中を一周し、あちこちを案内してくれた、正庁、偏庁、書斎、庭園、厨房、庫房、使用人たちの住む院子……

私は聞きながら、観察し。

厨房の前を通りかかった時、あの掃除の老人が見える。

彼はまだ掃除している。

同じ姿勢、同じ場所、同じように無視。

「陳執事、あの老人は?」

陳執事は私の視線を追って見て、顔色が一瞬変わったが、すぐに元に戻った。

「ああ、あれは張で、屋敷の雑用。

年を取っておりまして、耳が遠く、口数も少ないので、掃除を担当しており」

「来てからどのくらいに?」

「ええと……殿下がおられる時からです。もう二年になりますかね」

二年。なら新入りじゃない。

じゃあ誰の人間?


西の離れの前を通りかかると、あの半開きの扉が見えた。

「西の離れは何に使うんです?」

「お客様用の離れでございます、たまにお客様がいらした時に、お泊めしております。今は空き室です」

空き室。じゃあなぜ扉が半開き?私は尋ねなかった。

東の離れの前を通ると、あの窓閉まっている。昨夜は確かに開いていたのに。

陳執事を一目見たが、彼の顔に何の異常もない。

彼は隠している。


正院に戻ると、青児が迎えてきた。

「王妃様、お客様からお手紙が届いております!」

手紙?

第一公主・蕭玉嬛から。

二日後に彼女の宮でお茶を飲まないかという内容。

二日後。それはまさに太后が私に与えた期限の日。もしその日まで生き延びられたら、お茶を飲みに行く。

もし生き延びられなければ……

あの第一公主の言葉を思い出す。

「あの子が死んだ時、私は立ち会ったのよ」

彼女はいったい何を見たんだ?

大書斎は西の離れの隣にあり、独立した小さな庭になっている。

私は扉を押し開けて、中に入った。

三方の壁が全部本棚で、床から天井まで本が積まれている。中央には書物机があり、その上には筆、墨、紙、硯、それにまだ消えていない灯りが置いてある。

灯り?歩み寄って、火屋を触っ。

熱い。

誰かが来た。ついさっき。

あたりを見回すと、机の上の物は整然と並べられていて、異常は見当たらない。

気づいた。本棚の何冊かの本の位置がおかしい、隣の本より少しだけ飛び出している。誰かが抜き出して見て、また戻したが、完全には戻さなかったみたい。

歩み寄って、その数冊の本を抜き出す。

『治世刍言』『兵法心要』『筹海図編』『紀効新書』……

みんな兵法書や治国の本。

『治世刍言』を開くと、中にはやはり書き込みがあった。

小書斎のと同じように、びっしりと細かい楷書で、彼の思考や見解が書かれている。

でも今回、ある細部に気づいた、

あるページの隅に、ごく小さな印がある。

丸の中に、一本の線が引いてある。

一つの字のように、あるいは一つの記号のように。

その印を見つめて、どこかで見たことがあるような気がした。

刺客の手首の入れ墨?

いや、違う。

あれは北斗七星に模様だった。

これは単独の記号。

じゃあ、どこで見たんだ?思い出せない。

本をめくり続け、別の『兵法心要』にも同じ印を見つけた。

続けて『筹海図編』『紀効新書』……どの本にもある。

彼は何を印していたんだ?


書斎を出た途中、庭の外で大きな声の女が門の外で騒いでいるのが聞こえ、続いてバンバンという門を叩く音がした。

使用人が院子の門を開けた。

「早く早く!大変だ!」

「何があった?」

「隣の御苑だ!誰かが池に落ちた!」

こんなことに直面したら対応しなければならない。

さもないと後で必ず誰かに面倒を押し付けられる。私は二人の雑用を連れて走って御苑に着くと、すでに人が集まって輪になっていた。

凍てつく池のほとりで、数人の宦官が竿を使って人を引き上げようとして、水の中で誰かがもがき、ぐぼぐぼと泡を立てている。

「誰が落ちたんだ?」息を切らしながら隣の宦官に尋ね。

「わからない!女官らしい!」

割り込んで一目見て……

水の中の人、私と全く同じ青色の衣裳を着ている。

いや、全く同じじゃない。

それは——

まさに私が昨日着ていた衣裳だ。

昨夜、着替えて洗濯し、院子に干してあった。

今それが水の中にあって、誰かに着られている……

これは——

まずい!!!

そう思った瞬間、背後から突然大きな力が、

誰かに思い切り押された。

私は前に倒れ込み、足を滑らせて、そのまま凍てつく池に落ちた。

「きゃあ!」

水が冷たくて骨に染みる。

泳げない!これが最初の考え。

二番目の考えは、誰かが私を殺そうとしている!

必死にもがき、手を無造作に振り回して、何か掴もうとした。

私は一本の腕を掴んだ。

その腕はすぐそばにあった、私をぶつかった人だ!

私はその腕を死に物狂いで抱きしめ、ありったけの力で下に引っ張った!

「死ぬなら一緒だ!」

その人は引きずり込まれて明らかに慌てている。

感じた限りでは女で、体格はがっしりして、彼女は必死にもがき、私を振りほどこうとする。

よくも私を殺そうとしたな!逃がすか!

私はさらに強く抱きつき、全身を彼女にぶら下げて、彼女を水中に押し込んだ!

「た、助けて、!」彼女は水を飲み、沈み始めた。

「ばかにするな!」

私は彼女の体を踏み台にして浮かび上がった、

前世で水中CMを撮るために、ちゃんと泳ぎを習ったことがある。得意とは言えないけど、足を踏み外して浮くくらいはできる。

「は、放せ!」

私は足を踏み外しながら、彼女を水中に押し込んだ。

彼女の抵抗する力がどんどん弱くなっていく。

周りから叫び声が聞こえ、誰かが飛び込んできた。

何本もの手が同時に私を掴み、上へ引き上げる。

私は手を離し、引き上げられるままに岸に上がった。

岸に横たわり、息を大きく吸い込む。全身が震え、寒さで歯がガチガチ鳴っている。

あの女官も引き上げられた。彼女は私よりひどい。顔色は真っ青で、もう気を失っている。

第一公主が駆けつけた。

「どうしたの?」

私は気を失っている女官を指さし、声はまだ震えていた。

「公主様、この女が私を殺そうとしたんです。私を湖に突き落として。でも私、捕まえました。一緒に落ちましたから。彼女の主人を調べてください。ついでに……手柄を立てましたの。私を殺そうとした奴を捕まえた」

公主が私を見る目には、驚きと、称賛と、それから一筋の……笑み?

「連れて行きなさい」彼女は手を振った。

あの女官は運び出された。

私は誰かに支えられて偏殿に連れて行かれ、着替えた。

部屋で火に当たっていると、昼間の水難でまだ体が冷え切っていない、外が急に騒がしくなった。

「探せ!わらわのために隅々まで探せ!」

太后の声だ。

扉を開けると、庭中に人が溢れている。

太后が正殿の入り口に座り、顔色は真っ青だ。公主が彼女のそばに立ち、無表情。一団の宦官たちがあちこちの部屋に出入りし、箪笥をひっくり返している。

「どうしたの?」私は小柄な宦官を捕まえて尋ねた。

「物がなくなりました!」彼は小声で言った。「太后様が一番お気に入りの『鳳凰螺鈿の匣』がなくなったんです!」

太后が一番お気に入りの宝……

もしかして——

案の定、一人の宦官が私の部屋から飛び出してきて、手に何かを持ち上げている。

「見つかりました!顧念の部屋に!」

その場が騒然となる。

全員の目が一斉に私に向く。

私は太后の前に連行された。

太后は高座に座り、両側には第一公主、雲霓郡主、それに多くの妃嬪や貴婦人たちが立っている。

私を告発したあの宦官はそばにひざまずき、満足げな顔をしている。

太后が私を見る。

「そなた、何か言い分はあるか?」

ひざまずいた。

膝が冷たい敷石に触れる。

でもそんなことは気にしていなかった。

一つのことだけを考えていた。

『鳳凰螺鈿の匣』

太后が一番お気に入りの宝が、なぜ私のベッドの下に?

誰かが嵌めたんだ?

誰だ?七殿下?淑妃?それとも他の誰か?

いいえ、重要なのは、どうやって切り抜けるかだ。

「太后様、私がもし物を盗むなら、決して『鳳凰螺鈿の匣』のようなこの世に一つしかないものは盗みません」

「ほう?では何を盗む?」

「私はあの目立たない小さなものを盗みます。例えば……」私は一瞬間を置いた。「七殿下が太后様に贈られたあの——」

「あの?何?」

あいつは……いったい太后に何を贈るのか……

——それになるのか?!

まずい!宦官はすでに隣の衛兵に目配せをした——

一か八か!

「『玉』だ、無くなっても太后様はすぐには気づかない。気づいた時には、いつ無くなったかもわからない」

「なぜ七殿下がわらわに玉の置物を贈ったと知っている?」

知らない。でもわかっている。

太后と七殿下の関係は微妙。

彼女は彼の祖母だが、祖母は第三皇子を支持している。

いずれにせよ太后は彼が帝位を争う道における最大の障害の一人だ。

彼らの間に、交流がないはずがない。

それに、七殿下のような人間は、必ず贈り物をする。贈り物をするとすれば、必ず良いものを贈る。中華風の異世界には当然「玉」がある。

太后はきっと「玉」が好きだ。

だから彼が贈るのは絶対に「玉」だ!

でももし玉がなければ——「欺君の罪」!

斬首!

「私は知りません」私は太后の目をまっすぐ見つめた。「でも、一つにはわかります。私を嵌めた者は、きっと太后様が一番何を好きか知っていて、しかも寿康宮に自由に出入りできる権限がある。そんな人間は、後宮全体で十人といません」

私はその場にいる全員を見渡した。

「そして今、本当の盗人は、きっと私を見ている。人は後ろめたいことをすれば、つい結果を見に来たくなるものだから」

私の視線は一人ひとりの顔を撫でていく。

妃嬪たちの中には眉をひそめる者、戸惑う者、軽蔑する者もいる。

宦官たちの中にはうつむく者、目をそらす者、無理に平静を装う者もいる。

そして、私の視線はうつむいている一人の宦官に止まった。

彼は人ごみの後ろにひざまずき、深く頭を垂れている。でも彼の手、

彼の手が震えている。

ごくわずかだが、私には見えた。

「この宦官様」私は静かに言った。「あなたの手、なぜ震えているのです?」

その宦官ははっと顔を上げ、顔面は真っ青になった。

「わ、わたくしめ、違います……」

「ひれ伏せ!」

太后がひじ掛けを叩いた。その宦官はばったりとひれ伏し、全身が篩のように震えた。

「た、太后様、お許しを!太后様、お許しを!」

その場が騒然となる。許しを乞うのは、すなわち認めることだ。

太后が手を振ると、二人の護衛が進み出て、彼を引きずり出した。

「申せ!誰に指示された!」

宦官は地面に崩れ落ち、全身震えている。

「言わぬか?者ども!即刻杖刑に処せ!」

「は、は、楊主管でございます……楊主管がわたくしめにやらせたのでございます……『鳳凰螺鈿の匣』はわたくしめが盗み、顧念の床の下に置きました……楊主管が、あの娘を殺せと……」

その場は水を打ったように静まり返った。

太后は三秒間黙った。

身の毛もよだつ笑い方だった。太后は楊主管の背後にいる者が誰か知っている。

「よきかな。実によきかな」

「太后様、お許しを!」

あの宦官は引きずられていき、悲鳴がどんどん遠ざかる。太后が私を見た。

「そなた、どうして彼とわかった?」

私はひざまずいて答えた。

「太后様、私にはわかりません。ただ推測しただけです」

「推測?」

「皇宫で物を盗んで人を嵌める、そんなことは一人ではできません。必ず共犯者がいます。私が玉の如意を探し出された時、本当の盗人はきっと人ごみの中で見ていたはずです。彼は私が罰せられるのを見て、それから報告に行きたかった。彼はきっと私が泣き叫んで許しを乞うのも見たかった。でも彼は見たいと思えば思うほど、突然予想外のことが起きると、つい隙を見せてしまう。ただ……」

「続けよ」

「私が彼に気づいた時、彼の手が震えていました。それは後ろめたい者だけがする反応です」

太后はしばらく黙った。

「よくやった!」彼女は手を振った。「下がってよい、今日のことは、これで終わりじゃ」

私は頭を下げた。

「ありがとうございます」

私は第三皇子府に送り返され、ベッドに横たわり、外の物音を聞きながら、眠れない。

怖いからじゃない。

興奮。

前世で見事なPR合戦を戦い終えた後の、あのアドレナリンが放出される感覚だ。


正院に戻った時には、もうすぐ日が暮れようとしていた。

「王妃様、お夕食の支度ができました」

私は頷き、青児について正庁に入った。

夕食はとても豪華だった。四菜一湯に、点心の盛り合わせ。

でも食欲はなかった。

頭の中はあの印、あの記号のことでいっぱいだった。

何なんだ?

何を表しているんだ?

食事を終え、母屋に戻り、窓辺に座ってぼんやりしていた。

青児がそばで給仕しながら、話しかけることもできない。

しばらくして、私は突然彼女に尋ね。

「青児、あなたがこの屋敷に来てどのくらいになる?」

「王妃様、三ヶ月でございます」

「三ヶ月……ということは、殿下が亡くなられた後に?」

「はい。私は太后様から遣わされました」

太后の人か、予想通りだ。

「じゃあ思うんだけど、この屋敷で、誰が一番おかしい?」

青児は一瞬間を置いて、小声で。「私……申し上げるのが怖うございます」

「言いなさい、誰にも言わないから」

彼女はしばらく躊躇してから、声を潜めて。

「張……あの掃除をしている者でございますが……あの者、時々夜中に起きて、庭の中をうろついており……」

夜中に院子をうろつく?

「他には?」

「他には……西の離れの方で、夜中に時々明かりがつくことが。誰かが灯りを灯しているようで。でも陳執事はあちらには誰も住んでいないと……」

「わかった。あなたは休んでいいわ」


西の離れ。誰かが灯りを灯す。

あの掃除の老人。

夜中に庭をうろつく。

それにあの刺客の手首の入れ墨。

それにあの本の中の印。

それに第一公主のあの言葉。

「あの子が死んだ時、私は立ち会ったのよ」

すべての破片が、パズルのように頭の中で回転する。

それらには核心が欠けている。すべての破片をつなぎ合わせる核心が。

そしてその核心がどこにあるか、私にはわかっている。

棺桶。第三皇子の死体の上に。

もし彼が本当に死んでいるなら、その死体が答えだ。もし彼が死んでいないなら……

その彼こそが答えそのもの。

皇陵の方向。

二日後。

もし私が太后のテストを生き延び、正式に第三皇子妃となり、自由に出入りする権限を得られたなら、私はあの棺桶をこの目で見る。

私はあの男をこの目で見る。

生きているか死んでいるか、どうしても答えを出さなければ。

ちょうどその時、窓の方でまた物音が。

歩み寄ると、窓台に一通の手紙が置いてある。

四通目だ。

開けると、中には一枚の紙切れ。

「太后はお前にさらに三つの問題を問うだろう。答えは書斎の左から三列目の本棚、五段目の『治世名言』の中にある。追記、今夜は早く寝ろ。明日は忙しくなる。口数の少ない男より」

「それに、もしあなたが何か実績を上げられたら、太后がわざわざ指示しなくても、5日後の先帝の祭祀に参加するのは黙認してくれるはずよ」

私は紙切れを見て、笑った。

「口数の少ない男」?

四通も手紙を書いておいて、これが口数が少ない?これは明らかにおしゃべりだ!


私は紙切れをしまい、ベッドに横たわった。

今夜はもう誰も来ないだろう?

目を閉じ。

でも頭の中ではあの破片たちが、ずっと回転し続けている。

ずっと、ずっと……

回っているうちに、眠ってしまった。

夢の中で、一人の男を見た。

彼は私に背を向けて、月明かりの下に立つ。

彼の顔を見ようとしたが、彼は決して振り向かない。

叫ぼうとしたが、声が出ない。

最後に、彼が口を開いた。

「ありがとう」

そして彼は振り向いた、

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