七人
庭。
刺客の死体はもう消えていた、あの蛇も。ただ地面の一か所の血痕だけが、さっきまで起きていたことが夢じゃないと物語っている。
あの入れ墨。思い出させる、天極閣の七人が、皇陵の前に立って、あの薄汚い棺が共同墓地に運ばれていくのを見ていたのを。
北辰、離火、修竹、星野、銀河、辰星、洛辰、
違う。
彼らはそれぞれ月無痕、冷千秋、金満堂、花弄影、墨千機、易無相、風無痕だ。
頭の中で二つの声が喧嘩しているようだ。
一つは言う、奴らはあの七人のクズだ!
あの顔、あの立ち姿、あの目つき、灰になってもわかる!
もう一つは言う、でもここは異世界だ。彼らには彼ら自身の人生がある。月無痕は北辰じゃない。冷千秋は修竹じゃない。あなたは何の権利があって前世の借りを彼らに請求するんだ?
私ははっと起き上がった。
「暗衛!」
窓の外からかすかな音がした。
あの黒装束の若者が逆さまにぶら下がり、無表情で私を見ている。
「王妃様、ご用件は?」
「あなた……天極閣の七人を見たことある?」
「はい」
「彼らはどんな人間だと?」
「拙者には王妃様の仰る意味が……」
「彼らは、悪い人間か?」
この質問に、暗衛は一瞬間を置いた。
「月無痕は、策を誤ったためしがない。無辜の民を殺めたとは聞いたことがない」
「冷千秋は、剣の下の亡霊は数知れず。でも殺したのは、皆、殺すべき者ばかり」
「金満堂、穀物取引を独占し、価格をつり上げる。彼は毎年冬には粥場を開き、餓死者より多くの飢えた民を救っている」
「花弄影……」
彼は言葉を切り。
「彼女の殺した数が一番多いかもしれない。だがその者たちの死については、今なお証拠はない」
聞いていて、心の奥が何かに塞がれたような気分だった。
「人を殺すけど、純粋な悪人じゃないってこと?」
暗衛は首を振った。
「拙者はただ、この世に純粋な善人も、純粋な悪人もいないと存じており」
彼の目は相変わらず平静。
「お言葉に甘えて、王妃様のように、棺桶から這い出て、二人の下男を懐柔し、太后に自分を留めさせた、ある者の目には、王妃様も妖女でしょう」
「……それって、慰めてるの?」
「拙者、ただ事実を述べたまで」
「もしある日、あなたが誰かに出会うと、その人が、あなたが骨の髄まで恨んでいる仇と、まったく同じ顔を。でもその人は仇じゃない。彼には自分の人生があり、自分の物語がある、そんな人を、あなたは恨む?」
「拙者には分かりません、拙者はかつて、主君がこんな言葉を言うのを聞いたことがある」
「彼は何て?」
「主君は『顔で人を判断するのは、最も愚かなこと。人の心は腹の底にあり、顔の皮もまた心を隔てるものだ』と」
「そう、ですか……彼は、他にも何か?」
「主君は『もし誰かが顔のせいでお前を恨むなら、そんな奴は気にする価値もない。もし誰かが顔のせいでお前を愛するなら、そんな奴も愛する価値はない』と」
胸の中で激しい感情が渦巻い、彼の言う通り。
顔で人を判断するのは、最も愚かなこと。
顔のせいで人を恨むなんて、価値がない。顔のせいで人を愛するなんて、それも価値がない。
「天極閣の七人の詳しい素性が知りたい。彼らの罪じゃない、彼らが……どうして今のようになったか」
暗衛の目に一瞬の意外な色が。
「王妃様は……」
「知りたいの。彼らが本当にあの七人のクズと同じかどうか。、もし違うなら、恨むべきじゃないから」
「承知、彼らの資料は書斎にございます。後ほどお渡す」
彼は闇の中に消えた。
窓辺に立ち、頭の中ではあの二つの顔が、まだ戦っている。
でも今回は、どっちがどっちか区別がついた。
北辰は北辰で、月無痕は月無痕。他の奴らも同じ。
彼らはこの世界で規則的に制限されていない江湖の王者であり、殺し屋集団で、前世とは全く別の人間。
私も同じ。
たとえ前世の鈴木彩夏の記憶を引き継いでいても、
今の顔、声、能力、記憶は全て新しく再構成され、融合している。
それらは「顧念」という女のものだ。
前世の借りを彼らに請求することはできない。
でも、もし彼らも前世と同じことをしたら?
もし彼らが私を害し続けたら?
少なくとも今は、自分に理由を与える。
まずは見て、それから決めよう。
青児がお湯を運んできて、私が窓辺に座っているのを見て、びっくりした。
「王妃様!まだお休みじゃなかったんですか!」
目をこすっ。
「寝たけど、眠れなかったの」
青児はお湯の入った桶を置き、近づいてきて、心配そうな顔。
「王妃様、何かお悩みですか?」
「青児、もしあなたが、あなたが一番恨んでる人とそっくりな顔の人に出会ったら、でもその人はあなたの恨んでる人じゃない。そんな人を、あなたは恨む?」
彼女はぽかんとし、ぱちぱちと瞬きをして長考。
「私には分かりません」
「でも、こう思います。もし誰かが私の恨む人に似ていたら、私はその人を避けるかも、でももしその人が私に優しくしてくれたら、そのうち……避けなくなるかも」
「子供の頃、怖い顔をしたおばさんに叱られたことがあって、それ以来、怖い顔の人を見ると、みんな怖かった。でもその後、怖い顔をしたおじさんがいて、会うたびに私に飴をくれたので、怖くなくなりました」
この娘、道理を誰よりもわかってる。
「ありがとう」
青児は頭をかいて、恥ずかしそうに笑。
「王妃様、謝るなんて!私は何もしてませんよ!」
私は立ち上がり、彼女の肩を軽く叩いた。
「あなたが言ったこと、それが一番役に立つんだから」
私は小書斎に来て、暗衛が机の上に置いていった最初の資料をめくった。
月無痕——天極閣の主人で「知謀無双」の白衣の策士、7年前に京城に現れて一挙に燕国状元となり、皇帝の知恵袋となり、国家の建設、軍事から傑出した貢献をし、全国から燕国の最も聡明な人とされていたが、3年前に原因も知らずに突然退官して江湖謎の組織「天極閣」を創設した。奇妙なことに彼が退官した後、皇帝は突然重病になった。あの六人の青年たちは今、彼を「兄」と呼ぶ。
冷千秋——天下第一の剣豪、殺し屋。名将の後裔であり、祖先は律法に触れて満門に斬首され命拾いした遺児。手には無数の血痕。彼が殺したのは皆、殺すべき者ばかり、娘を強奪した悪党、人民を苦しめる汚職官吏、強盗殺人犯。決して無辜の者は殺さない。
金満堂——燕国第二豪商。穀物取引を独占し、価格をつり上げる。青州の大干ばつの年、彼はこっそり三隻の船に穀物を積んで送り込み、一つの町の人々を救った。誰も知らず、彼も決して口にしない。
花弄影——あだ名は「九州の毒医」。燕国の神医、人を救うにはお金を受け取らない、厳しい条件が必要。毒の達人、彼女は自分の師匠と師母を殺したという、手には少なくとも五十数件の人命がある。詳しい状況は不明、最後に殺した者は、彼女を川に投げ込んだ人身売買業者。
墨千機——破戒僧。名匠の後裔。十四歳の時に作った仕掛け製鉄施設が爆発事故を起こし、十数人の職人が死んだ。牢に三年間入れられた。出所後はおもちゃだけを作る。彼の作った玩具の一つが北戎に流れ、殺人器械に改造され、彼はそれを知って、右手を切った。
易無相——千面の詐欺師。生まれつき顔がない、家族に捨てられ、村人に追いかけられ、川に投げ込まれ、自分で這い上がった。易容の達人で、標的の多くは豪商。彼が一番好きな顔は、自分の顔だと言う。
風無痕——「丐幇幇主」、燕国第一の琴師。身分は低く、幼い頃から物乞いのギルドで育った。口数が少ないのは、言葉を間違えて官府に捕まるのを恐れたから。その後、達人の指導を受け、徐々に燕国第一の情報通になった、武闘大会は冷千秋に惜敗しただけ。
資料を閉じて、椅子の背にもたれかかった。
彼らはあの七人のクズじゃない。
別の世界の人間だ。彼らには自分の人生があり、自分の物語があり、自分の傷がある。彼らは善行もするし、人も害する。
でも少なくとも今は分かった、彼らを見ていると——
なぜか、自分の姿が重なった。
そう考えていると、窓の外からかすかな音が。
暗衛が逆さまにぶら下がり、一通の手紙を差し入れた。
「王妃様、主君がお届けするよう命じられ」
私は手紙を受け取り。
見覚えのある筆跡——
「天極閣のことを調べていると聞いた。暗衛が資料を渡すだろう。一つだけ伝えておきたい、
彼らはお前の仇ではない。彼らは別の世界の人間で、自分の運命、自分の道、自分の試練を持っている。
ただ一つだけ違うことがある、
彼らにはお前のように、待っている者がいない。彼らには誰かが教えてやる者がいる、別の道もあるんだと。
お前はその者になるつもりはないか?」
手紙を見て、ついに涙がこぼれ落ち。
蕭景瀾。彼は何もかも知っている。
彼は言っている……彼は私を待っていた?
彼は私が悩んでることを知ってる、葛藤してるもう。
答えを必要としてることもう知ってる。
そして今、彼はそれをくれた。
手紙を折りたたみ、前のものと一緒。
「なってもいいよ」
暗衛の姿が闇に消える。私は皇陵の方向を見た。
「待ってて。たとえ彼らが今は敵で、私を殺そうとしても、私は彼らを……」
手の中の紙切れ。
「蛇は雄黄を嫌う。厨房の棚の上にある。気をつけて」
紙切れを折りたたみ、前の「お前は私に恋をするだろうからな」の紙と一緒に、枕の下に大切にしまった。
それからベッドに横たわり、天井を見て……
百三十七通の手紙。
明日、会う人っていったい誰だろう?




