断罪イベント365ー第21回 逆転
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
それは、いつもの大広間で行われた断罪イベントの最中だった。
壇上には王子と黒幕令嬢。
観衆は固唾を飲み、悪役令嬢が罪を宣告されるのを待っている。
「──証拠も証人も揃っております!」
黒幕令嬢は高らかに宣言した。
王子が満足げに頷き、
観衆の間からも「やはり悪役令嬢は罪深い」というざわめきが広がる。
しかし、当の悪役令嬢は微動だにしない。
むしろ、薄く微笑みさえ浮かべていた。
「証拠を提示したまえ!」
王子の声に応じて、黒幕令嬢が自信満々に机を叩く。
そこへ証人が進み出て──。
「……その証言、間違っておりますわ」
悪役令嬢の澄んだ声が会場を切り裂いた。
観衆が息をのむ。黒幕令嬢は一瞬ぎょっとしたが、すぐに笑みを取り戻す。
「なにを根拠に!」
「その証拠……わたくしが仕込んだものですもの」
堂々と告白する悪役令嬢。
観衆が一斉にどよめき、王子でさえ言葉を失った。
「な、なにを言うの!?」
「つまり、あなたの証拠は最初からすり替えられていたのですわ。
証人も──わたくしの方に寝返っておりますし」
実際、証人たちは視線をそらし、汗をかいている。
観衆の心は一気に黒幕令嬢から離れていった。
「ば、馬鹿な! そんなはずは──!」
黒幕令嬢は机を叩いて悔しがるが、その音は虚しく響くだけだった。
こうして、悪役令嬢の株は逆に上がり、黒幕令嬢への疑念は深まる一方。
「証拠を見せてやるわ!」
黒幕令嬢が取り出したノートを広げると──。
『月夜に輝くその瞳、愛しの王子へ』
『小鳥たちも囁く、わたしの愛は永遠』
観衆「……ポ、ポエム?」
悪役令嬢「ええ、それこそ黒幕令嬢の日記。ご本人の情熱的なポエムですわ」
「や、やめてぇぇ!」
黒幕令嬢は顔を真っ赤にしてノートを奪い返そうとするが、もう遅い。
会場は爆笑に包まれ、王子はただ呆然と立ち尽くしていた。
【調査まとめ】
断罪イベントは準備した者が勝つ……はずだった。
しかし、すべてを事前に見抜き、証拠と証人を逆に利用した
悪役令嬢の一手で、黒幕令嬢は自滅。
しかも証拠が日記だったという、二重の屈辱つきである。
観衆の心は悪役令嬢へと傾き、黒幕令嬢の信頼は地に落ちる。
「証拠は慎重に扱いましょう」という教訓を残した事件であった。
何事も、事前の準備を慎重に。
そして、証人の選び方も慎重に。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m