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第48話 天使のお告げ

 白の魔道士本拠地、麗々しき真珠の館奥深くに位置するそこは、どこまでも清らかな純白で染められた部屋だった。面積とすれば縦・横ともに20ユーほどはありそうな、それなりに広々した場所だ。さらに床には赤い絨毯が敷かれ、左右の壁には合わせて10を数える壁龕もあり、その中には美しい彫像たち、それも皆が皆大きな翼背中に持ったあの天からの御使いそのものの像が飾られている。

 そして何より入口入って正面、部屋の一番奥、基壇の上に荘厳と見られたのは、まるでそんな天使たちを率いるように堂々たる長衣姿で屹立する、ほとんどこの世ならぬ美しさすら持った一体の可憐なる女性像で――。


                  ◇


 「……」


 かように厳粛かつ謎めいた聖像の前で、その人物はいかにも恭しく一人跪いていた。

 まさしく像へ向かって熱心に祈り捧げるようにじっと動かず、またその頭をあげることもない……それは間違いなく、あの鉄仮面と呼ばれていた女性の姿だ。もちろん相変わらず白銀の鎧兜に全身を隈なく包み、その背には深紅のマントも羽織っている。

 すなわちそれはクラウゼンブルク最高位の術にして、神の力の片鱗を意のままに操るとされる神聖魔法の最高の使い手。同時にその鎧の中身は、一説によれば想像を絶する術者ながらいまだ10代の年若い娘だとも噂されており、バロンとはまさに好一対を成す、いかにも神秘のベールに包まれた不思議なる存在であるといえよう。

 しかもそうして畏まった姿勢を取ったまま、彼女はそこでずっと何かを待ち続けていたのだ。心の底から、何事かを希求するかのように。――天使は、必ずや真摯な祈り捧げる者に対してその自らの為す奇跡、示してくれるのだと。

 すなわちそれをしかと裏付けるように、実際鉄仮面はやはりその場から一歩たりとも動き現わすことがなかったのだから。そう、その様はまさに雄大堅固なる大岩のごとくで、他の何にも一切動じることなく。


                  ◇


 「ああ!」


 ――と、そうしてそんな不動の時間がいつまでも終わりなく続き、限りもないかとさえ思われた、だが、まさにその時。

 刹那、兜の中から知らず洩れた声。それははたして驚愕か、あるいは感激の声音であっただろうか。

 いずれにせよ突如として何か異変を感じた彼女は顔を上げ、そして上方、聖像の頭の方を急ぎ見上げたのだ。

 そうしてその瞳が捉えたのは、ふいにその遥か上から降り下ってきた、穏やかな光。しかも美しき娘の像を包みこむような。もちろん鉄の面の中表情一切窺えぬとはいえ、それ見た白の長は明らかに溢れる期待感籠めたものへと、全体の様相強く変化させている。

 加えて畢竟身体自体も、一瞬飛び上がるかのごとき震え、微かに帯び――。


 「ご降臨になられましたか、<我が主>よ!」


 そして続けて述べられたのは、謎めいた相手へと送る、げに歓喜に満ちた声。

 しかも身体から伝わったのか、その持つ響きにもあからさまに震えが乗っていたのであった。従ってその得も言われぬ感情こもった言葉が、たちまちのうちに静謐の支配する領域へ充溢していったのも、さも当然といえただろう。

 そう、かくてただひたすら静かだった部屋は、その刹那あり得ないクラスの奇跡が顕現した、神秘の場へと一変し――。


 「では、我が望みを叶えてくださいませ! そう、<悪魔の血>のありかを!」


 次の瞬間、限りなき切迫感さえ籠った娘のそんな声音が、天使像の取り囲む室内を遍く包みこんでいったのだった。

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