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第45話 朝の談義

 結局、昨日は一晩中ナッシュが帰ってくることはなかった。

 ロディたちはかすかな希望抱きつつ夜が深くなるまで待ち続けていたものの、雨が止んで夜空に月が顔を出してきても、あの少年が姿を現わすことはついぞなかったのだ。

 そう、彼から無事であることを示す何らかの連絡が届くことも。

 そうしてその日一日の蓄積された疲労もあり、その後仕方なく三人はいったん眠りに就くことにしたのだが、しかしそれはむろん何とももやもやした気持ち持たざるを得なかったものでしかなく、畢竟それぞれが寝床でまんじりともしない夜を迎え――。


                  ◇


 「ナッシュ、帰ってこなかったな……」


 かくて翌日、まだ陽が昇って間もなくだというのにロディ邸一階大広間には早くも目覚めた三人が集合し、中でもまずはファルがそんな彼らを代表するようにしていかにも心配げに声を上げていたのだった。


 「本当に大丈夫かな」

 「そうね。――ただ今回はファルのケースとは違うような気もする。つまり誘拐なんかじゃないという」

 「確かに。特にナッシュが何か考えこんでいたとすれば」


 そうしてたちまち始まった、件の行方不明のダークエルフに関する談義。むろん三人が三人揃って寝不足気味で不安な表情していたのは言うまでもなかった。


 「何よ、ロディ。何だか心当たりがあるみたいな言い方ね」

 「いや、そこまでのものじゃ……」

 「でも今は少しでも手がかりが必要な時。さあ、早く言いなさいよ」


 しかもロディが妙に気になる一言発したので、耳聡くユリシルトは喰いついている。彼女としても昨日出て行くナッシュに何も聞かなかったことがかなりの痛恨事となっているのだろう、それはかなり必死さのこもった口調なのだった。

 それゆえロディは一瞬躊躇い見せたものの、しかしすぐに諦めたように口を開き、


 「……そうだな、今さら黙っていても仕方ない。つまりあいつがもしかなり思いつめていたとすると」

 「うん」

 「答えは一つしかない。つまり自分ひとりであの魔道士たちを捕えに行ったとしか」


 そう、そして次には実に驚くべきことを告げてきたのである。


 「え、あの子一人で行っちゃったってこと?! あの怪しい二人組の元へ!」

 「ああ、何せ気が強いナッシュの奴だからな。やりかねない。くそ、こんな時せめてイーノがいれば……」

 「イーノ?」

 「もう一人の助手だよ。でもそうか、ナッシュなら色々魔法で相手のこと追跡したりもできるから!」


 当然その発言は波乱を呼び、はたして途端賑やかさ増した大広間。ただし思いきり驚き顔見せたユリシルトとファルに対し、その対面、窓側に座るロディは溜息でも吐きたそうな大いなる諦めの表情現わしていたのだが。すなわち、どこまでも対照的に。


 「とにかく、無事だといいんだが……」


 ――加えて彼にしては珍しく、何とも気弱に見える言葉まで洩らして。


 「だったら、あいつらを早く探さないと!」

 「だが、それこそどう探し出すんだ? 俺が会ったのは一回きりで、しかも名前も何も知らないんだぞ!」

 「でも同じクラウゼンブルクの住人なら――」


 そして必死さのあまりユリシルトがさらに声を大きくすると、対して彼はついには首を横に振り、降参でもするかのような声音、発してきたのだった。


 「いや、残念ながら彼女たちは間違ってもクラウゼンブルクの民じゃない。何も分からないなんて言ったが、しかしこれだけはまず明らかなんだ。そう、要は君と同じ異邦人のはずなんだから」

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