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第40話 悪魔の血

 「悪魔の血、だって!」


 鑑定屋ファジオの店に勢いよく駆け込んで数分、店内にはロディのけたたましい大声が響き渡っていた。むろんカスターヴァ劇場での出来事の直後のこと、今は雨模様とはいえ時にしてお昼頃。件のファジオはちょうどパンに目玉焼き、スープという昼食を取っているところだった。


 「……おい、曲がりなりにもこっちは食事中だぞ、少しは静かにせんか」

 「いやいや、これが静かにしていられるか! ミラルカの作ったのは、伝説の秘薬だったんだぞっ」

 「ほう、そうか。あれはあのドワーフが作成したのか」


 そうして熱くなる一方の青年相手に、鑑定結果求められた老人は妙に冷めた態で応じる。ロディの言う<秘薬>を調べた後でのこの様相、彼もなかなかに図太い神経の持ち主と言えよう。


 「そんなことより、代金はちゃんと払えよ」


 その証しというべきか、パンに噛りつきながらそんな一言付け足すのも、ゆめ忘れることがなかった以上は。


 「分かったよ、払うから! にしても、本当に悪魔の血なんだな、あれは!」

 「儂を疑うのか? だが調べた結果、完璧に成分や特徴が一致。もちろん儂も実物見たことはなく、古代の文献等を数多当たった結果だが。とにかく今回はやたら苦労した」

 「……そうか、なるほど」


 とはいえ彼のその態度は、ロディをしてようやく気分落ち着かせるに十分なものでもあるのだった。そう、はたしてここに来て初めて、青年は本来の冷静で計算高い姿、取り戻してきたのであるから。


 「悪魔の血……使用者の魔力を何十倍、何百倍にも高めてしまう薬」

 「そうだ、だからここクラウゼンブルクでは作成はおろか所持するのも固く禁じられている」

 「なるほど、だがだとすると、大分読めてきたぞ」


 何よりそれはそんな意味ありげな一言とともに、瞳の色きらりと鋭く輝かせたのを見れば実に明らかであり。


 「あいつらの計画のあらましってやつが」


 そして一人納得したように、ロディは大きく深くうなずいている。


 「何だ、一人でそんな合点のいった顔をして」

 「ああ、少しばかり視界が晴れやかになったってやつか、とにかく道は開けてきたんだ」

 「ほう、そしてそこに悪魔の血も関わる、と」


 するとそんな青年に対してさすがに興味ありげな顔を示してきたファジオ。それくらいの相手の変わりようだったのだから仕方あるまい。そうして老人はさらに詳しく知るためなお何か物問おうとしてきたものの――。


 「おっと、ファジオ。これはあんたのためだが、もうこれ以上この件のことは知らない方が身のためだぜ」

 「何?」

 「つまりはそれくらい、ヤバい案件なんだ」


 ロディはしかしすかさずそんな鑑定屋制止すると、次には何とも謎めいた不可思議な笑み、口許へふと浮かべていたのである。


 「とにかくこいつに関わると、まず碌な目に合わないんだから。――じゃあ俺はもう行くぜ」


 ……そんな嘆きとも愉しみとも取れる一言、最後に別れ言葉のように付け加えながら。

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