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第20話 隠し部屋

 「あ、いつの間に!」


 そうしてロディが画布を強引に引き剝がした途端、ファルの驚愕の叫びが響き渡っていた。

 そう、ゴルド大王の顔がなくなると、気づけば一同は暗い洞窟のただ中にいたのだ。それもゴツゴツとした岩だらけで構成された、超本格的な岩室の。ただし完全な真っ暗というわけではなく、なぜか全体的にボウっと明かり放っており、微かだがそれなりに先の方まで見通せる。すなわちそれゆえにここは洞窟と判断できたのであり、また果てがないのも確認すること可能だったのである。

 事実それはまさに、はるか冥府まで通じているがごとくやたらと禍々しくて。


 「ちょっと、何が起きたの、一体?!」


 当然ながら、ハーフリングに続きすぐさま女騎士の声も大きく洞内に轟いている。


 「……なるほど、携帯型迷宮か」

 「え?」

 「持ち運びできる洞窟、ってやつだよ。どこにいても逃げこんだり、相手迷いこませたりできる」


 するとそんなユリシルトへ、慌てもせず要領よく説明加えてくるロディとナッシュ。どうやらファルはともかく、彼らにとってこれは大して驚くべき事象でもないようだ。

 よく状況つかめぬ娘をして勢い二人の方、振り返らせたくらいに。


 「じゃあ、これは魔法の……」

 「ああ、もちろんミラルカが仕掛けたんだろう。要はこれがあいつの作った隠し部屋さ」

 「でも、出口は――?」

 「出口?」


 そうしてユリシルトが異界に落とされた以上どうしても気になる疑問口にすると、ロディは初めてそれに気づいたような顔をした。


 「ああ、そうだな。後ろにある、あれじゃないか?」


 そしてあくまで気軽な様子で、自らの、すなわち一同の背後の一角を指差す。


 「あ! そこだけ四角い穴がある!」


 そう、知らずそれ見たファルが叫んだように、奇妙にも空間の中にぽっかりと浮かんだ、四角く切り取られた部分を。しかもそこからは洞窟とはまったく違う世界が窺え……。


 「……ミラルカの、仕事部屋」


 すなわち彼らが元いた、あの今は乱雑な状態となったミラルカ家の一室の一部が、静かに垣間見えていたのである。


                  ◇


 こうしてようやく惑乱しながらも事態が整理できると、はやユリシルトは落ち着き取り戻していた。


 「なるほど。どんな仕組みかは見当もつかないけど、とにかく私たちは今例の隠し部屋にいるわけね。彼の罪に深く関係した」

 「そういうことだ。政府の連中も探していた何かが秘された。……ただ、これからどうすればいいかとなるとまだ皆目分からないんだが」

 「とりあえず先へ進む?」


 対して一見冷静に応じたロディだったが、しかしだからといって彼にも完璧に先が見通せているわけではないようだ。どことなく狐につままれた感もある。すなわち隣からナッシュが何気なく口を挟んできても、魔道士は途端渋めの表情あらわとするばかりだったのだから。


 「そりゃまあそれしかなさそうだが、しかし迂闊に奥へ行くと迷うかもしれないぞ。何せ洞窟探検の用意は何もしていないんだから」

 「確かにこれ、本当の洞窟にしか思えないわね……」


 かくてそんなロディの様相に合わせるように、知らずユリシルトも不安げな顔となる。何より彼女にとっては他でもない魔法の関わった状況である以上、そうなるのは必然だったのだろう。……特にこんな怪しい薄暗がりの中では。


 「――さて、どうするか」


 畢竟、ナッシュ含め一同はしばし呆然と、まるで洞穴へ取り残された遭難者がごとくその場に立ち尽くさざるを得なかったのだが……。


 「あれ、これは?!」


 ――だがその時ふいに、ファルがハッと驚きに満ちた声、発したのであった。

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