#26 水曜日の朝の会話 賽瓦
朝、授業の準備をしていたら唐突に江野畑が話しかけてきた。
「ねぇねぇ!賽瓦さんって、三河さんとどういう関係なの!?」
「は????」
いきなり何を聞くんだこの人は。あいつと私がどういう関係かだって?...難しい。あいつとは、別に知り合いってわけじゃないし...だからと言って彼氏彼女とも言えない...異性として見ているわけでもないし、異性として見てほしいわけでもない...と思う。図書委員だから一緒にいる時間が長い?いや、それは違う。この前一緒に帰ったのはただ単に一緒に帰りたいと思ったからであって、何と答えればいいのか…あいつとは...何も気にしないでずっといられるっていうか...家族?絶対違うけど、なんとなく似てる...
「...う~ん、言葉にできない」
「え?どういう意味それ?異性として意識してからでもいいから教えてほしいんだけど」
江野畑がキョトンとした顔でそう返してくる。まあ、わかんないだろうなぁ。強いて言うなら、ただ一緒に居たいからいるだけ?異性としてはそんな意識してないけど、居心地がいいから。多分、あいつもそうなんじゃないかと思う。
「簡単に言うなら、一緒にいたいからいるだけかな。異性としては見てないし、見られてないと思うよ」
淡々とそう返す。だが、江野畑はしつこく聞き返してくる。こいつ、質問するのにも立場ってもんがあるでしょう。
「いやいや!あれだけしておいて異性として意識してないはないでしょ!ねぇ、本当のとこどうなの?三河のこと好き?好きならどういうところが好き?」
なんなんだこいつマジで...あと、あれだけしておいてって何?もしかして、昨日神社で一緒に本読んでたのを見られた!?もしそうならめっちゃ恥ずかしい。...けど、なんかうれしい?そう思って立ち上がろうとしたとき、山田が江野畑に話しかける。
「お前さぁ、いきなり人のそういう事情に首突っ込んで、しかも相手が否定してるのに続けるとか無礼すぎるだろ。あ、ごめんね賽瓦。嫌な思いさせちゃって。こいつはちゃんと叱っておくから!」
そういって江野畑の手首をつかんで自分の席まで引っ張る山田。ありがとう。それしか言う言葉が見つからない…
でも、男女の関係に見えたっていうのは...少しだけ嬉しかった...のかな?自分でもよくわからないが、なんとなく嬉しかった。