表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LAST・LIFE  作者: 裏虞露
4/19

【2】貪食の軌跡


朧はダンジョンの中に入り、目の前に広がる鬱蒼とした密林を見上げた。葉と葉が重なり合い、地表にはほとんど日光が届かない。湿った土の匂いと、虫の羽音が耳元でかすかに聞こえる。この場所が第一層──推奨レベル1〜3の初心者向けエリアであるにもかかわらず、目の前の景色は自然の厳しさそのものだった。


「これがダンジョンね。リアルで来るのは初めてだけど思ったより雰囲気出てるじゃない。」


軽い感想を口にしながらも、朧の目はすでに鋭く周囲を見回していた。膨大な転生者としての記憶と知識に基づき、このダンジョンがどのような構造を持ち、何が待ち受けているかを分析する。特に密林タイプは、弱い虫系の魔物が頻出することで知られているが、その代わり罠が多く、油断すれば即座に撤退を余儀なくされる厄介な環境でもある。


「さて、マザーワームを探すとしましょうか。」


朧は軽くストレッチをしてから、歩を進めた。足元はぬかるんだ泥と絡みつくツタでこの体が太っていることもあって動きづらいが、彼女は全く動じない。転生者として得た知識と経験、そして「戦闘狂」としての適応力が、こうした状況を楽しむための強みとなっている。


ダンジョンの中では、目標であるマザーワームを探しつつ、朧は効率よく魔物の厳選を行うことを決めていた。彼女の頭の中では、ワーム系魔物の一覧が浮かんでいる。中でも完全にランダムなスキルを持つ希少個体を見つけ出し、適切な()()を行う事が今後の成長に直結するのだ。


「手頃な魔物がいれば、ついでに貪食者を試してみるのも悪くないわね。」


歩き出して間もなく、最初の魔物が現れた。


「スモールワームね。ふーん。」


スモールワームは体長1メートルほどの細長い虫型魔物で、毒攻撃を主軸にする弱小モンスターだ。十数匹で朧を取り囲むように姿を現したが、朧は一切慌てることなく、冷静に間合いを詰めた。


「小物が群れたって無駄よ。」


右手に握った簡素な鉄剣を振るうと、スモールワームの頭が宙を舞った。一匹、また一匹と次々に斬り伏せられていく。最後の一匹は鋭い牙を剥き出しにして朧に飛びかかるが、彼女はそれを左手で掴み取ると、そのまま豪快に口に放り込んだ。


スキル【貪食者】発動──捕食対象の効果を最適化します。


スモールワームの毒が喉を通る感覚を朧は微笑みながら味わう。通常であれば有害な成分も、貪食者の効果によって完全に無効化され、体内に蓄積されるのは有用な栄養と毒耐性のみ。


「思った通りの効果…次から食料を持ち込まなくていいわね」



朧は更に奥へ進んだ。地形は徐々に険しさを増し、天然のトラップが行く手を阻む。倒木の間に仕掛けられた針状の罠や、木々に巻き付いた猛毒のツタ、さらには足元の穴から突然飛び出してくるワーム系魔物。


「これだけ厄介な罠ばかりなら、マザーワームがいてもおかしくないわね。」


次々と現れるワーム系の魔物を倒しながら、朧は着実に進んでいく。その途中、異様に大きな巣穴を発見した。


「これは……間違いない。」


巣穴から流れてくる特有の臭気と、周囲に散らばる大小のワーム系魔物の残骸──これは確実にマザーワームの巣だ。


「さあ、出てきなさい……」


朧は鉄剣を構え、周囲に警戒しながら巣穴を睨む。すると、地響きのような音と共に、全長5メートルを超える巨大なワームが姿を現した。それは全身が紫色に輝き、見るからに硬そうな外殻を持つ魔物──マザーワームだ。


マザーワーム Lv.12──推奨レベル20


「いいわね……ようやっと戦い甲斐がありそうね。」


朧の唇を歪めて笑みを浮かべる。彼女はその場で一度深呼吸をし、瞬時に戦闘モードに入った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ