表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LAST・LIFE  作者: 裏虞露
17/19

【15】変化した身体

遊園地の出口を出た朧と巡は、並んで歩いていた。空は既に群青色に染まり、街灯が道を照らし始めている。


「今日は本当に楽しかったな……。」


巡は満ち足りた表情で、何度目か分からない言葉を繰り返した。頬はわずかに紅潮しており、時折朧の方をちらりと盗み見る。


「ふふっ、そう? それならよかったわ。」


朧は狐耳をピクリと動かし、尻尾をふわりと揺らした。新生を果たしたその姿は、遊園地にいた時のぶよぶよとした体型からは想像もつかない、妖艶でグラマラスな美貌を持つものに変わっていた。


巡は変わり果てた朧の姿を全く気にする様子もなく、むしろ今まで以上に自然な態度で接している。


「本当に……変わったね。でも、不思議と違和感がない。」


「ん? どうして?」


「だって、朧さんは……いや、もう“朧”って呼んでもいい?」


「もちろん。」


「じゃあ……朧は、やっぱり朧だからさ。」


巡は笑顔で言った。その言葉を聞き、朧は一瞬目を細めた。


「ふふっ、そう? なら、よかった。」


朧は巡の頭を軽く撫でた。巡は少し照れたように俯きながらも、満更でもない表情を浮かべる。


甘いやり取り──巡との新たな関係

「……ねぇ、巡。」


「ん?」


「キス、してあげようか?」


朧が冗談めかして囁くと、巡の顔が一瞬で真っ赤になった。


「な、なななっ……!?」


「冗談よ、冗談。そんなに慌てないで?」


狐耳をピンと立て、楽しそうに笑う朧。その姿に巡はますます顔を赤くしていた。


「……い、いつか本当にしてもらうからな。」


「ふふっ、期待してるわ。」


二人の影が夜道に並び、ゆっくりと歩いていく。


巡を家まで送り届けた後──孤独な帰路

巡の家の前に到着すると、巡は玄関の前で立ち止まった。


「……今日は本当にありがとう、朧。」


「ううん、こちらこそ。楽しかったわ。」


「じゃあ……また明日!」


巡が手を振ると、朧も小さく手を上げて応えた。巡の家のドアが閉まる音を聞き、朧は一人きりの帰路を歩き出した。


夜風が肌を撫でる。新生を果たした後の身体は以前とは全く異なるが、朧自身の中には何も変わったものはないように思えた。


「……さてと。」


家路の途中、朧はふと立ち止まり、夜空を見上げた。


「問題は、家族ね。」


自宅──変わり果てた姿と家族の反応

玄関の前に立ち、深呼吸を一つ。


(……まぁ、事前に言っておいたし、何とかなるでしょう。)


「ただいま。」


扉を開けて中に入ると、リビングから両親の声が聞こえた。


「おかえりなさい──……え?」


「……誰?」


両親の声が重なった瞬間、朧は心の中で苦笑した。


(まぁ、そうなるわよね。)


母親はキッチンから顔を出し、父親はソファから立ち上がった。二人とも、目の前に立つ狐耳と尻尾を持つ妖艶な女性を見て、完全に固まっている。


「え、ちょっと待って。どちら様?」


「朧さんのお友達……?」


「……私だけど?」


朧はサラリと言った。


「………………は?」


両親は声を揃えて絶句した。


同一人物の証明──ちょっとした手間

「嘘、でしょ? そんなわけ……だって……。」


母親は目を丸くし、父親は眉間に深い皺を寄せている。


「言ったでしょ? 姿が変わるかもって。」


「え……本当に……朧……?」


「本当に私よ。」


そう言って、朧は家族しか知らないような昔話を語った。幼少期に起きた些細な出来事、両親の口癖や好物の話──一つ一つが、確かに「朧」である証明となった。


「ほら、信じた?」


狐耳をピクピクと動かしてみせると、ようやく両親は息を呑んだまま頷いた。


「本当に……朧なのね……。」


「はあ……本当に驚いたよ……。」


父親は頭を掻きながらため息をつき、母親は安堵の表情を浮かべた。


「……で、その変わった姿、どうしてなの?」


父親がソファに座り直しながら尋ねる。


「ちょっとね。強くなるために必要だったのよ。」


「ふうん……朧らしいと言えばらしいか?まぁ、無事ならいいさ。」


母親は笑いながら、台所へと戻った。


「晩ご飯、すぐにできるからね。」


「ありがと。」


朧はリビングのソファに座り、尻尾をふわりと揺らした。


(巡も、家族も──私の変わった姿を受け入れた。)


挿絵(By みてみん)


窓の外では、夜空に星が瞬いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ