表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LAST・LIFE  作者: 裏虞露
15/19

【13】接触

朧はあれからもレベル上げを続け二日が経過した。探索は特に問題が起こることも無く順調に進み、レベルは23に到達していた。


この二日間、朧はひたすら群れとの戦闘を繰り返し、効率的に経験値を稼ぎ続けた。草原エリアの特性を活かし、鞭による範囲攻撃と【魔力操作】を駆使して獣系魔物を一掃する戦法は、既に体に馴染んでいる。


「このペースなら、目標のレベル25もすぐね。」


レベル25に到達すれば、通常の種族変更の条件を満たすことになる。


「あと少し……。」


目の前の魔物を片付け、落ちた魔石を拾いながら、朧は静かに呟いた。


探索者たちの接近──異例の対話

しかし、この日、朧の前に意外な存在が現れた。


遠くから近づいてくる数人の人影。それは、明らかに職業探索者たちだった。


「……何かしら。」


彼らは慎重な足取りで朧に近づいてくる。戦闘の気配はない。むしろ、どこかためらいがあるようにも見えた。そして、距離を詰めた後、先頭の男が口を開いた。


「悪いな……声をかけるのはマナー違反だってのは分かってる。でも、どうしても聞きたくてな。」


「……何を?」


朧は鞭を肩に担ぎ、無表情で彼らを見つめた。その瞳には警戒の色が宿っている。


「お前……どうやってそんな短期間で、そんなに強くなったんだ?」


探索者の男の言葉に、朧は内心でため息をついた。


(なるほど……そういうことね。)


朧が急激に強くなっていく様子は、当然ながら周囲の探索者たちの目にも留まっていたのだろう。このダンジョンの深層において、朧はまるで突然現れた異分子のように急成長していた。


(そんなこと、普通はあり得ないと思うでしょうね。)


このダンジョンにおいて、レベルの上がり方にはある程度の常識がある。通常の探索者たちは、稼ぎの良い狩り場やパーティプレイを駆使してレベルを上げていく。しかし、朧の成長速度は明らかにそれを逸脱していた。


(でも、私からすれば……彼らが遅すぎるのよね。)


探索者の男は、真剣な表情で続けた。


「最初は……たまたま強かった奴が来ただけかと思ってた。でも、毎日お前を見てるうちに、どんどん強くなってるのが分かったんだ。こんな短期間で……どうやったらそんなことができる?」


「……別に、普通のことをしてるだけよ。」


朧は肩をすくめた。


「ただ、強くなりたいならそうね、簡単な話よ。自分より5〜10レベル高い敵を狩るのが一番効率がいいわ」


探索者たちの表情が一瞬にして強張った。


「……は?」


「そんな無茶な……。」


「いや、無理だろ……普通に考えて……。」


彼らの反応は予想通りだった。探索者たちは顔を見合わせ、困惑の表情を浮かべている。


「無理じゃないわよ。だって、私はやってるもの。」


朧はあっさりと言い放った。


「……そ、それはお前が特別だからだろ?」


「そんなことはないわ。ちゃんと準備をすれば、誰だってできることよ。」


探索者たちは、なおも信じられないといった表情をしている。


「準備……?」


「敵に対して相性のいい武器を揃えれば、戦いはずっと楽になるわよ。」


探索者たちは、まるで異星人を見るような目で朧を見つめた。


「そんな簡単な話じゃ……」


「簡単な話よ。」


朧は言葉を遮った。


「相性を考えずに戦うから、無駄な苦労をするのよ。例えば、炎属性の敵には水属性の武器、物理耐性が高い敵には魔法攻撃を含む武器を使えばいい、特攻効果のある武器ならなお良いわ。地形ごとに出てくる敵のタイプは大体同じだしそれだけで難易度はぐっと下がるわ。」


探索者の男は、頭を抱えるようにため息をついた。


「言ってることは分かる……でも、そんな都合よく相性のいい装備を手に入れられるか?」


「手に入れるのよ。」


朧は淡々と答えた。


「ショップや、適切な場所でドロップ品を狙えばいいだけ。要するに、強くなるための手間を惜しんでるから、成長が遅いのよ。」


探索者たちは沈黙した。


彼らは皆、それぞれのやり方で探索を続け、試行錯誤しながらレベルを上げてきた。しかし、朧の言葉は、彼らのその「常識」を根底から否定するものだった。


(……ま、理解できないでしょうね。)


朧は心の中で小さくため息をついた。


(結局のところ、強くなれる人間と、なれない人間には決定的な違いがある。それは、何を「当たり前」としているか……よ。)


朧にとって、「強くなる」ことは呼吸をするのと同じくらい自然な行為だった。しかし、目の前の探索者たちにとっては、それは「努力して掴み取るもの」だったのだろう。


(……ま、勝手にすればいいわ。)


「もういいかしら?」


朧は探索者たちを見渡し、冷たく言い放った。


「これ以上、無駄話をしてる暇はないの。私はもっと強くならないといけないから。」


探索者たちは押し黙ったまま、ゆっくりと頷いた。


「……悪かったな、引き止めて。」


「別に。どうでもいいわ。せいぜい頑張ることね?」


朧は踵を返し、再びダンジョンの奥へと足を踏み入れた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ