十六話〘夜の怪しい者〙
「……もう1人いるんですが呼びましょうか?」
「すみません。お願いします!」
俺は急いでテントの中にいるミアを起こし、少女に会わせる。
「多分、同じ日本から来た人を見つけた」
「本当?もしかしてあなたも勇者なの?」
目の前の少女は驚いた顔をして息を整える。
「えーと……その……あー……い、言いにくいのですが、うちは勇者ではありません」
「じゃあ。あなたは何?」
「うちの名前は……ス、スータといいます。えーと……勇者を守りに来た魔法使いです……」
スータ今までで一番変わった名前だな。
同じ日本ではないのならめっちゃ怪しい。
コスプレイヤーかと思ったが普通に服が異世界してただけだった。
「もし……よければ……あなたたちの仲間に入れてくれませんか?」
「さすがに私でも怪しすぎるよ!」
当たり前だ。
本来、人がいない場所と時間帯なのに突然勇者を守りに来たなんて怪しい。
「そ、そうですよね……」
「もしかして人に化ける悪い魔物なんじゃない?」
「え、ミア流石に失礼じゃ」
「リョウ! 油断したら死ぬかもしれないじゃん!」
「ま、まぁたしかに……?」
「うちは怪しいのは確かに……で、ですがここでそんな強い魔物でないしゃないですか」
「じゃあ悪い人間?」
「違いますから!」
ミアとスータの言い争いが激しい。
殺すとまではできないが、怪しいのはミアに賛成だ。
なんとか諦めてもらう方針にしてもらいたい所だ。
「あの、申し訳ないのですがスータさん、諦めて帰ってもらっていいでしょうか」
「リョウ! ほっといたら危ないよ! 他の人が死ぬかもしれないじゃん!」
「……では帰ります」
「話がわかって助かります」
「ちょっと! リョウ!」
「ですが……その男性の方少しいいですか?」
「はい?」
スータが俺の方に近づき、両手を前に突き出した。
もしかして魔法……
「スイートピン!」
ミアはスータに水を勢いよく水鉄砲のように吐き出す魔法を打ち出した。
この魔法は敵を貫通しかねない魔法なのだがスータに避けられる
「あの……急に魔法を撃たないでください。もう知らないですから」
今度こそスータは消えてしまった。