十一話〘燃える勇者の思い〙
「え、一体何が……ミア! 起きて!」
「ん……?どうしたの……」
「外が……街が燃えてるんだ!」
「え?」
泊めてくれた人にも言おうとしたがいなかった。
その人の行方も気になるが、急いで装備を持ち、家を出た。
住民たちが街の外へ走っていく、住民を誘導していたのは、マギだった。
「マギさん、なんでここに?」
「…………とにかく危ないから逃げろ! お前らじゃ死ぬ!」
「で、でも……」
そこには火の魔法を放った赤いスライムが大量にいた。
主にお城を燃やしているが火が街にうつって、大惨事なことになっている。
お城は燃える素材で作られているわけではないが、魔法だからなのかお城は、燃えたまま、金属でできているところは溶けかけている。
助けたいだが、俺達には難しいのかもしれない。
まだまだ、俺達は弱いのだから。
「俺達はなにもできないから逃げよう。命は大事だ。」
「ここを見捨てるの?」
「え?」
「この街を見捨てるの?」
「俺達にはなにも……」
「でも、最初の街でしょ。王様に翻訳機もらったでしょ? それがなかったら詰んでたし」
「…………」
「街を見捨てて逃げるなんて…………勇者らしくないでしょ」
「でも……」
「私たち『勇者』なんだから」
怖い。
また死にかけたくない。
言ってもミアは、勇者として使命を果たしたいみたいだ。
ミアは、何が起きても動じなさそうだ。
表情はキリッとしていて、まるで本物の勇者のように見えた。
「わかった……でもどうする?」
「私は、水魔法で火をできる限り消して、被害を少なくする。リョウはスライムを蹴散らして! たくさんいるけど、今日はたくさん倒したでしょ? きっといける!」
「できる限りやってみるよ……でも、危なかったら逃げよう」
俺は覚悟を決め、ミアと協力して街を救うことにした。
俺はここのスライム、ミアは火を消す。
スライムは、目の前に魔法陣をだし、特大な炎を出している。
そのせいでスライムの近くは周りよりさらに熱い。
スライムにむかい、剣を振り上げ昨日よりはやくスライムを斬り殺した。
スライムが魔法を撃つのに少し時間がかかるので魔法を撃つ前に倒せればなんともない。
俺は少しずつ、スライムを倒していく。
まだまだ熱いが、ミアが魔法で火を消してくれているため、だいぶマシになってきた。
それでも俺達は汗水垂らしながら、スライムや火を消し続ける。
まだ、1人の男性がいたので、手を引き、外に引きずり出す。
「ありがとうございます。勇者様」
「いえいえ」
「実はまだ、王様が城から出れてないんだ。どうか勇者様、王様を助けてください」
「本当ですか? 急いで助けに行きます!」
ほとんどの住民は、街の外にでたようだ。
だが、まだ王は外に出れてないらしい。
俺は急いで城の方に向かう。
「ミア!俺は城の方に向かう! 王が城な中にいる!」
「本当?! 城はヤバそうだから私も一緒に、向かう! ここはだいぶ落ち着いてきたから」
「わかった!」
俺たちは急いで、口を押さえながら城の中に入る。
城門は金属が溶け、木が燃えているため、容易に入ることができた。
「王様どこに!」
「王様いませんか!」
大声で叫んでも王らしき人はでてこない。
俺とミアは二手に分かれ、ミアは1階、俺は2階に向かった。
階段を駆け走り、鉄の扉は溶け、隙間から部屋が見えるが王はいない。
城は黒い煙にまかれ、口を押さえてるとはいえ、頭痛や、めまいがし、吐き気もしてくる。
「後は……」
最後に見ていない部屋は王と話した部屋だった。
ふらつきながらも急いで向かう。
向かっている最中火の音で聞こえにくかったが、何やら騒がしそうな音がする。
廊下を走っていると人が倒れていた。
状態は分からないが生きているかどうか確かめる。
「大丈夫ですか?」
声をかけても揺らしても何も反応がない。
もしかしてと思い、顔をしかめながら体を裏返した。
「あ………………」
その人の正体……いや、死体の正体は王だった。
顔は誰かが分からないぐらい黒くなっていた
「ゔっ……」
初めて見る物はとても吐き気を加速させ、吐いてしまった。
こんなのは耐えられない。
勇者になったらこれよりひどい物をみると考えるとさらに吐いてしまう。
だが、騒がしい音が聞こえるので、その音の方へ向かう。
最後の部屋は扉が完全に燃え、部屋の中が見えるぐらいになっていた。
そこにはマギがいた。
「ばかっ! なんでいるんだ!」
「助けに……」
「また、死にかけてるじゃねぇか!人間には、きついのに」
「すみません」
「オクト・トリート!」
俺はマギに治癒魔法をかけてもらった。
さっきまで頭痛や吐き気がひどかったが、体にエネルギーを感じ完全に治った。
「ありがとう。いったいここで何があったんですか?」
「お前は、帰れ!」
「私はいつまであなた達の様子をみればいいの? 時間がないの」
「え、あなたは……」
真顔で言葉を放って、玉座の前に立っていたのは、泊めてくれた人だった。