九話〘月光に当てられたうさぎ〙
俺は急いでウサギを出すため剣を取り出す。
俺が剣を振りかざすとウサギは素早く離れた。
「急に剣を出して振るなんて、ひどいねー」
「え?」
なんとウサギが喋りだした。
そんな事があるのか? 俺は寝てしまっていたのか? きっと疲れているのだろう。
「あ、すいませんね。ウサギの姿だったね」
ウサギは煙にまかれ、煙が消えた頃にはウサ耳の生えたきれいな長いおさげの白髪、赤い瞳の少女、白いウェディングドレスのようなドレス、頭にティアラがかぶっていた。
「ぽけーとしている所悪いけど話し続けるねー」
頭の中では理解できてないが無理矢理『異世界』だから変なことがおきると思うようにした。
「僕の名前は『ラビ』、君が可哀想だから様子見に来ちゃった。勇者の名前は?」
「俺はリョウです」
「りょう君ねー勇者なんて正直どうでもいいんだけどーちょっと気になることがあるんだー」
「なんでしょうか?」
「あの時の森で何やってたのー?」
「森……」
どのことだろうか、『可哀想』って言ってたから兎に襲われた所? それともスライムと話してた所? 何のことだろう。
「スライムの子と君が裸になってたじゃんー」
「あ、その違うくて、勇者のアザの確認で」
「スライムの子とやってたんなら、僕に興味ない? 勇者とか僕、どうでもいいからさ勇者の仕事放棄して、僕の国にすまない?」
「え、」
「僕一応姫だから、悪いようにはしないよーいい生活を保障するよー。お金は要らないし、僕と体で遊ぶだけだからさー。いいと思わないー?」
とんでもないことを言いだした。
一体この子は何を言っているんだ?
異世界で安心できる所は欲しいけど怪しすぎるし、そんな簡単に体は売れない。
こいつやばすぎる。
「この寝ている女の子も連れてっていいよー。この子も可愛いしねー。でも僕女の子は趣味じゃないからメイドさんとして、働かせるけどねー。もちろんその子にも悪いようにはしないよー。ね、ね? 僕と一緒行こうよー」
「ごめんなさい。遠慮させていただきます」
断ったらラビはこちらを見つめている。
顔を近づけ、目を見せつけるように目と目が近い。
「……何で断るのかー。まぁいいよー」
ラビは残念そうに俯く。
ラビはすぐ表情を変え、穏やかな笑顔をしながら喋った。
「断るのは想定外だったけどせっかく会ったんだし、夜が明けるまで話そうよー」
「はい」
「てか、なんで歴代の勇者はこんな丁寧に話すのか分からないなー僕らは貴族様ではないんだからなーあ、僕は貴族か」
「初対面ですし」
「ふーん。リョウ君たちの世界のことは知らないけどそんな初対面とか気にしなくていいよー」
「そうなんですか?」
「そんなんここの人たちは気にしない。僕も気にしない」
「なるほど」
「僕に何でも聞いていいんだよー。ただで聞くなんてなかなかないんだよー信用できないかもしれないけど正直に言うよー」
「えと、じゃあどうすれば強くなれますか?」
「それは簡単さ、倒しまくればいい。それだけさー。ここの人たちと違い強くなりやすい。今までの勇者たちはレベルは見えないけどレベル上げしてるみたいなもんかって言ってたよー」
「ゲームみたいですね」
「こういうゲームがあるんだー。知らなかったー」
「どうしてここに来たんですか?」
「君を勧誘するためだったんだけど無理そうだったからそれは諦めたよー。あと単純に言いたいことがあるだけー」
「言いたいこと?」
「今回の勇者、君たちは魔王を討伐できる気がするんだーなんとなく。だけど、それは肉体的にも精神的にも辛いことがおきる。乗り越えれるのかは君次第だけどねー」
「えと、心配ありがとうございます」
「いえいえー」
近くでピタピタと聞こえ、その音がどんどん近づいてきた。
暗くて見えなかったが何か近くで立っていた。
「おい!お前気をつけろ!死ぬぞ!」
その声はマギの声だった。
「7の罪人、色欲のラビ!どっかいけ!」
「そんなきつく言わなくてもーもうどっかいくよー」
そそくさと、ラビは、逃げていった。
マギは俺に近づく。
「お前、よく生きてたな、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「あのな、あいつは7の罪人だ」
「7の罪人?」
「あぁ、7の罪人は、とにかくイカれ野郎って事を思っとけばいい。バケモン強い奴だから最後、機嫌次第では死ぬ。しかも、罪人の能力が厄介だから普通なら討伐不可なやつだ。まだ、色欲でギリギリ話は通じたが、他のやつはそうはいかねぇ」
「そうだったんですね。教えていただきありがとうございます」
「お前、いつ死んでもおかしくないからな。よく、支配されなかったな」
「支配?」
「あぁ、あいつは目を見つめてきて、洗脳しようとする」
ラビは俺のことを見つめてきたのは洗脳しようとしてたから?
でも、どうして洗脳されなかったのだろう。
「もう朝が明ける、見回りにきただけだからな。心配したわけじゃねーから」
そそくさとマギは、逃げ去った。ツンデレか。
話していたら朝日が昇り、ミアを起こすことにした。