説明してもらった
まずはシーリアスの話を聞くことにする。
「この短剣と手紙を私の実家に届けて欲しいの。」
それだけ? 手紙はともかくその短剣についての説明は? いやいやいや、絶ー対必要だから。
「…嫌だ。」
嫌だ、じゃねー!説明しないなら帰れー!
自分でも驚くほどの大声がでた。しかしそれに動じるどころかこっちを睨んでくるよ。うわー、流石にそれはイラっとくるなー。
しばらく睨み合いになったがシーリアスの方が先に口を開いた。
「わかったわよ、その、こっちの頼み事なのにキチンと説明しないとか悪かったわ。ちゃんとするから話聞いてもらえる?」
よーし、勝った!
彼女が態度を改めてからはスムーズに話が進んだ。なんでも実家の継承問題が絡んだ話だそうで通常の運送業者には任せることは出来ない、かといって彼女自身は実家に顔を出したくないそうだ。そこで信頼できる代理人を立て、手紙と短剣を届けてもらう事を思い付いたらしいのだが。
なぜ自分に?
「それはもちろんアオイを見込んでるからじゃない、決まってるでしょー。」
なんかくすぐったいが悪い気はしないな、でも面倒事には関わりたくないし。しかも持っていくのがあのおかしな短剣ってのが
「おかしくないわよ!このソルはスッゴいんだから!」
それからテーブルの上で浮いている短剣、ソルという銘持ちの魔剣がいかに優れているかを早口で語り出すシーリアス。なんでも本来は実家の超スゴイ宝剣で当主の証なんだとか、その後は何やかやあって今は彼女が所有者になっているらしい。
見た目は呪いの短剣にしか見えないけどな!
しかもこの魔剣、インテリジェンスソード(意思ある剣)なんだそうだ。ソルとの意思疎通は一族の中でもごく少数に限られており念話の形でやりとりされるとの事。
見た目は本当にアレなのにな。
あ、ごめん。何でもないです。シーリアスのジト目にあわてて誤魔化す。しかし嫌なオーラの原因が彼女との喧嘩でソルが拗ねているからだそうで。
武器が拗ねるって何?!
なんか面倒くさいんでとっとと仲直りして欲しいんだけど。ウチで禍々しいオーラ撒き散らすとかホントに迷惑。
「というわけで、これ実家の地図ね。」
シレッと話しを進めるんじゃない!
やだよー、シーリアスの実家って確か貴族様でしょ?しかと後継者問題が絡むとかそんなヤバい揉め事は断固お断りだよ!
「お願いよー、届けてくれるだけで良いから、もうアオイしかいないのー!」
もう自分しかいない、もう? ほう、自分以外には全員断られたと? ゆっくり頷くシーリアス。
諦めてシーリアス自身が行けばー?
「意地悪ー! それが嫌だからお願いしてるんじゃないー! もうあなたしかいないの、最後なのー!お願いよー!」
いつの間に背後に回ったのか抱きつかれすごい力で締め上げられてる。
「一生のお願いだからー!」
さらに持ち上げられ上下にシェイクされる。
ちょ、ま、息、出来ない、わ、わかった、やる、やるからーっ!
「ホ、ホント!?嘘じゃないわよね、言質、取ったからね!」
やると言った途端に勢いそのまま床に放り出された。受け身は取ったが振り回されて気分が悪い、シーリアスを見ると依頼をOKさせたのがよっぽど嬉しかったのかテーブルに上がり小躍りしてる。
くー、マジ腹立つなー!
やると言ったからにはこの依頼は受ける、が、報酬についてはぼったくってやる。
ずえーったいにだ!
このあと自分で引くほど吹っかけた報酬額がすんなり通ってしまい更なる敗北感を味わった。