【連載、始めました】冤罪で高校を退学させられた俺、大富豪の美少女令嬢に拾われる。 ~俺を痴漢呼ばわりした女子が「気を引きたかっただけ」とか言ってるらしいけどもう遅いです~
この物語はフィクションです。登場する人物・設定・名称等は架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
「又野くんが私に痴漢しましたー!」
俺は同じクラスの女子に冤罪をかけられた。
クラスでは誰も味方をしてくれなかった。その女の子はとても人気者で、さらに学園の理事長の娘だったからだ。
痴漢の話はすぐ学校中に広まり、俺は理事長に呼び出され、そのまま退学処分が決まった。
両親とはとうの昔に死別し、進学を機に一人暮らしをしていた俺には迎えに来てくれる人もおらず、通学カバンを片手に校門から出た。
校舎を振り返る。
あの灰色の空の下に佇むコンクリートの建物に通うことは、もう二度とないだろう。
男子高校生、又野さわる。齢17にして路頭に迷う―――。
いや、プラスに考えよう。
痴漢の汚名を着せられたまま残りの学校生活を過ごすよりは、いっそ退学になった方が良かったかもしれない。
クラスの人たちからの信頼を失くし、虐められて人間不信に陥るよりは……。
まあ―――失くすほどの信頼関係を築けていたような気もしないし、人間不信になるほど他人を信用したりもしていなかったけれど……。
休み時間の大半は寝たフリで過ごしてたけど……。
やはり青春というものは、ひとときの偽りにして俺のような陰キャの犠牲によって成り立つモノなのだ……!
青春って言えば何でも許されるアオハルまっしぐらな彼らと俺が同じ空間で生活を続けるなど、最初から不可能だったのだ。
さようなら、陽キャのみんな。
せいぜい残された青春生活を楽しむがいい。
俺は一足先に大人の世界へ足を踏み入れることにするぜ。
……しかし就活とかも、コミュ力の高い陽キャの方がうまくいくんだよな。なんて嫌な世の中なんだ。その犠牲になった人間の哀しみは誰が晴らしてくれるんだ。
不意に俺の頭上に冷たいものが触れた。
雨だ。
最悪だ。
しかも土砂降りとかじゃない、中途半端な雨。
まるで俺を象徴しているような―――って誰が中途半端な人間やねん。
とにかく帰ろう。
俺は全身を濡らしながら歩いた。
近所の公園に差し掛かったとき、雨が強まり始めた。
くそ、マジで最悪だ。こんなに降るなら止むのを待ってから帰ったのに。
幸いにも公園のベンチは屋根付きで、俺はその軒先に駆け込んだ。
雨は止む気配がない。
こういうふうにじっとしていると、だんだんムカついて来た。
何が痴漢だよ!
冤罪だよ!
女子に触れたことなんて一度もないよ!
くそー、あの理事長の娘、事あるごとに俺に突っかかって来るんだよな。
休み時間に一人でいるといちいち声かけてくるし、テストの結果とか聞いて来るし、休みの日とか無意味に電話してくるし……。
挙句の果てに俺を痴漢扱いとか、常識を疑ってしまう。
ったく、これだから青春に脳をやられた人種は……。
「くしゅん」
と、そのとき、可愛らしいくしゃみが聞こえた。
見ると、ベンチの隅の方に体育座りをしている女の子がいた。
輝くような金髪の、小柄な女の子だ。刺繍の施された黒いワンピースを身に纏ったその少女はゆっくりとこちらを見上げた。
「……雨宿りか?」
「ええ。あなたもそうなの?」
「ああ……まあ、そんなとこだ」
「そう」
少女は再び道路の方に顔を向けた。
「……誰か、待ってるのか?」
「いいえ、違うわ」
「じゃあなんでこんなところに居るんだよ。家は?」
「今は――帰れない」
どういうことだ?
よく分からないけど、何か訳アリってことか。
「早く止むといいな、雨」
「……止んでも私、行くところなんてないわ」
少女はアンニュイな声音で言った。
「どういう意味だよ?」
「色々事情があるのよ、私にも」
「ああ……さては家出だな?」
うっ、と少女が呟く。
「優れた洞察力を持っているのね」
「ありがとう。気持ちは分かるぜ。勢いで家を出て来ちゃって引っ込みがつかなくなったんだろ?」
「何から何までその通り。まったく、嫌になっちゃうわね―――」
その瞬間、少女は糸が切れたようにベンチへ倒れこんだ。
さすがに俺は慌てた。
「ど、どうした!? 大丈夫か!? 病気なのか!?」
俺に返事をするように、ぐう、という間抜けな音がした。
まさかこれは――腹が鳴った音か?
少女の顔が徐々に赤くなっていく。
「辱めだわ……」
「ひょっとしてお前―――腹減ってんのか?」
少女が微かに頷く。
行き倒れってことか? このご時世には珍しい。
「……仕方ない。俺の家で何か食うか? いつまでもこんなところにいるわけにもいかないだろ?」
「だけど……他人の施しを受けるわけには」
「気にするなよ。それともここで飢え死にする気か?」
少女は少し考えるようなそぶりをして、それから覚悟を決めたように言った。
「あなたの言葉に甘えさせていただくわ」
「そうか。じゃあ……行くか」
俺は少女の前に屈み、背中を向けた。
「……何?」
「いや、そんな調子じゃ歩けないだろ。おぶってやるから」
「で、でも……見ず知らずのあなたにそこまで甘えるわけには」
「じゃあ歩くか? 悪いけど、俺の家まで20分くらいは歩くぞ」
「20分は……歩けないわね。赤子にフルマラソンを走らせるようなものだわ」
「どんな例えだよ」
そう答えつつ、俺の首に手を回した少女を背中に、俺は立ち上がった。
「そういえばあなたの名前を聞いていなかったわ。教えてくれるかしら」
「俺は又野さわる。君は?」
「私は匂宮来夢。よろしくね、又野くん」
いつの間にか雨は上がっていて、雲の切れ間から太陽の光が差し込んでいた。
俺は匂宮を抱えたまま、家に向かって歩き始めた。
「……で、年齢は?」
「女の子に歳を訊いてはいけないって、幼稚園で習わなかった?」
「ごめん、俺、保育園だったから」
「君の口は余計なことを言うのね。意外だわ」
「うるせえよ」
※
「絶対うそよ」
「うそじゃない」
薄暗い六畳一間(1K・トイレ風呂付)――つまり、俺の部屋。
俺と匂宮はちゃぶ台を挟んで向かい合っていた。
ちゃぶ台の上にはカップラーメンが二つ。
「あの固形の物体が3分待つだけで食べられるようになるなんてありえないわ」
「俺の主食にケチをつける気か?」
「私が空腹なのを良いことに、変なものを食べさせようという算段なのかしら。親切なひとだと思ったけれど見損なったわ」
「どうかな? 逆に見直すことになるかもしれないぜ」
「ふん。そんなことは3分待ってみれば分かることだわ。あなたと私どちらが正しいのか、はっきりさせましょう」
「良いだろう。約束の3分まであと5、4,3,2,1……ゼロだ」
俺と匂宮は同時にカップラーメンの蓋を開けた。
匂宮が息を呑む音が聞こえた。
「―――確かに見た目は麺料理ね。そこは認めるわ。でも味はどうかしら」
「試してみろよ」
俺は匂宮に箸を差し出す。
「たったの3分で美味なものが出来るなんて、そんなのはもう魔法よ」
匂宮は箸を取ると、挑戦的な目つきで俺を見つめたまま麺を啜る。
その瞬間、表情が変わった。
「―――魔法だわ!」
「フッ、どうやら俺の勝ちみたいだな」
「く――悔しい! でも箸が進んじゃう!」
ずるずるとカップ麺を啜る匂宮。
俺もそれに続こうと箸を取る。
が、ふた口も食べると自分の置かれた状況のヤバさに気付き始めた。
……痴漢冤罪で退学ってどういうことだよ!
俺の人生めちゃくちゃだよ!
っていうかあれか、学生じゃなくなったなら働かなきゃいけないか。
痴漢で退学になった人間を雇ってくれるバイト先ってあるのかな……。労働条件とかにこだわらなければあるかもしれない。
「又野くん、どうしたの? さっきから全然食べていないようだけれど」
「ああ……ちょっと思い出したくないこと思い出しちゃってな」
「何? 学校に忘れ物でもしたのかしら?」
「学校はもう行かなくていいんだ。退学になったから」
「退学? そんなに悪いことをしたの? 人は見かけによらないって本当だったのね。で、何をしたの?」
「ち……痴漢」
すっ、と匂宮が一歩下がった。
「まあ―――気の迷いというのは誰にもあるわよね。私、気にしないわ」
「その割にちょっとずつ俺から離れていってますよね? 身体は正直だなあ?」
「又野くん、本当に痴漢したの?」
「……冤罪なんだよ。別に俺は何もしてないんだけど、勝手にそういうことにされちゃったっていうか」
「あ、そう。そんなことだろうと思ったわ。ひどい話もあるものね」
言いながら、匂宮は元の位置に戻って来た。
本当に正直な奴だ。
「本当、ひどい話だよな」
「ええまったく」
「……なんだよ、どこ見てんだよ」
「いえ、早く食べなければ麺が伸びてしまうのではないかと思って」
「ああ……そうだよな」
いつの間にか匂宮のカップ麺は空になっていた。
意外と食うの早いんだな、なんて思いながら麺を啜っていると、匂宮が何か言いたそうな顔をしているのに気が付いた。
「……なんだ?」
「それ、伸びてて美味しくないのではないかしら」
「いや、普通に美味いけど」
「……ああ、そう」
「なんでそんなこと訊くんだ?」
「いえ……もし食欲が無いのなら私が食べてあげようと思っただけよ」
残念そうにため息をつく匂宮。
「なんだよ、食べたいならそう言えよ。ほら」
「そっ、そんな! 私は人の食べ物をねだるような卑しい女じゃない―――のだけれど、美味しいものは人を狂わせてしまうのねっ!」
俺が箸で麺を掬ってやると、匂宮はそこへ顔を寄せ、そのまま美味しそうに啜った。
まるで野良猫を餌付けしてるみたいだな――って。
ちょっと待て、ヤバいって。
「あ、ええと、匂宮」
「何かしら」
匂宮は小さな舌で可愛らしく唇を舐めた。
「いやその……これって間接キスじゃないの?」
「え」
一瞬だけ呆気にとられたような顔をした匂宮の頬に、だんだん赤みが差していく。
「は――箸は自分の使えよ。食っていいから」
「ちょ、ちょっと! そういう問題じゃないわ! これはもっともっと深刻な問題なのだと思うのだけれど!?」
「深刻な問題?」
「いえ、その、だから……初めてに入るのかどうかということよ」
「は……初めて?」
俺が訊き返すと、匂宮は頬を赤くしたまま恥ずかしそうに視線を逸らし、
「か――間接キスは、初めてのキスに数えるのかどうか―――ねえ、どうなの?」
ど……どうなのとか訊かれても!
「し、知らねーよそんなの!」
「大事な問題だわ! 分からないなら調べてくださるかしら!?」
「そんなことより俺はお前に痴漢で訴えられないか心配になって来たんだが!?」
俺が言うと、匂宮は突然冷静な声音で、
「あなたは私を空腹から救ってくれた恩人よ。どうして恩人を訴えなければならないのかしら」
「……ああそう。それは助かるよ」
「それよりも私のファーストキスの味はどうだったかしら?」
「いやいやいやいや、はっきり言って俺はノータッチだから! 味わうも何も虚無だから!」
俺が使った箸に匂宮の唇が触れたというだけで!
マジで俺は無罪だから! 最高裁判所もそう言ってるから!
「じゃあ仕方ないわね。美味しいものを食べさせてくれたお礼」
匂宮が片手で金髪を耳にかける。
次の瞬間、俺の唇に何か柔らかいものが触れた。
世界が止まったような気がした。
目の前に匂宮の瞳が――やや青みを帯びた相貌があった。
息が苦しくて―――ようやく呼吸ができたとき、匂宮は俺から顔を離していた。
唇には柔らかな感触がまだ残っていた。
「……なっ、えっ、何!? どういうこと!?」
「だから、お礼よ。正真正銘のファーストキス」
「な、ななな何で!?」
「だって嫌じゃない。最初のキスが中途半端なままなんて」
「だ、だからってお前、」
それでいいのか、と俺が言おうとしたのと同じタイミングで、部屋のドアが勢いよく開いた。
「痴漢が原因で退学だなんて無様ねぇ、又野。泣いて懇願するなら助けてあげなくもないわよ―――――ってあんたたち何してんのよっ!?」
ツッコミを入れながら他人の部屋に無断侵入してきたこの女は、秋川大彌―――俺に痴漢の罪を被せ退学にした張本人であり、さっきまで俺が在籍していた高校の理事長の娘でもある。
「お前こそ何しに来たんだよ……俺に何か用でもあるのか?」
「は、白昼堂々何してんのよ! その子は誰なの!? まさかデリヘ―――」
「退学になった瞬間デリ〇ル呼ぶ高校生がどこにいるんだよ! お前の頭の中は新宿歌舞伎町か!?」
すっ、と袖を引っ張られた。
見ると匂宮がこちらを見上げていた。
「又野くん、デ〇ヘルって、なあに?」
「き、気にするなよ……。大人になったら分かるよ……」
「何ふたりでこそこそ話してるのよ! その子いったい誰なのよ!? なんであんたの家にいるのよ!?」
「腹減ったっつーから飯食わせてやってんだよ。お前こそ俺に何の用だ?」
俺が言うと秋川はツインテールを揺らしながら、ふんと鼻を鳴らした。
「退学だなんて可哀そうだから、チャンスを与えてあげようと思ったのよ。あんたが泣いてあたしに懇願するなら退学を取り消すようパパにお願いしてあげるわ」
高圧的な口調で俺を見下ろす秋川。
普段穏やかな心を持つ俺も、さすがに激しい怒りを覚えた。
「あのなあ、誰のせいでこんなことになったと思ってんだよ! お前が俺を痴漢呼ばわりしたせいだろうが!」
「だからチャンスをあげるって言ってるでしょ? ほら、土下座でもしてみなさい、又野」
マジで意味が分からない女だ。
謝るのはそっちじゃないのか?
怒りのあまり冷静さを欠こうとしている俺の横で、匂宮が呟いた。
「だったら私の通う学校に来る?」
「え?」
俺は匂宮の顔を見た。
彼女は冷静な表情のまま言葉を続ける。
「編入手続きはこちらでやってあげるわ。そうすれば解決でしょう?」
「そ――そんな都合の良い話、あるのかよ」
「匂宮グループの傘下にある学校だもの。何も問題はないわ」
「グループ? 傘下? どういうことだ?」
「そうよそうよ、訳の分からないこと言ってんじゃないわよ。このあたしがせっかくこいつの退学を取り消してあげようとしてあげてるんだから、邪魔しないでくれる?」
「だから、そもそもそれは冤罪だろ!」
「冤罪だろうが何だろうが、あんたが退学になっちゃったのは事実でしょ? 現実を受け入れなさい。そしてあたしに媚び諂いなさい!」
なんだこの女……っ!
こいつはいつもそうだ。
俺が何かしようとするたびに偉そうな態度で俺に絡んでくる。
朝になると電話かけてくるし、登校する時はいちいち付きまとってくるし、夜になると残飯とか言いながら食べ物持ってくるし、サボろうと思って保健室の周りうろうろしてると体調が悪いのかとかいちいち聞いて来るし……。
「あの人、本当は又野くんに構って欲しいだけじゃないのかしら?」
隣で匂宮が言う。
そんな馬鹿なことがあるわけがない。
俺は首を振った。
「こいつに限ってそんなわけないだろ。だったらなんで俺のことを退学にしたんだ? 秋川にとって俺は邪魔なだけなんだよ。な、秋川」
「あっ――――当たり前でしょ! 別に又野のことなんか、好きでもなんでもないんだからねっ!」
怒っているのか、秋川は顔を真っ赤にしながら怒鳴った。
匂宮が立ち上がったのはそのときだった。
「本当にそうかしら」
「な、何よ!?」
匂宮はそのまま秋川に歩み寄る。
一方の秋川は怯えたように一歩後ろに退いた。
「あなたが又野くんを退学にしたのは、そうすれば彼があなたを頼ってくれると思ったから。そしてあなたが退学を取り消しにすれば、又野くんはあなたに一生分の恩ができる。そうすれば又野くんを思いのままにすることができる―――一生あなたの傍に置いておくこともね」
「な――な――何言ってんのよ、何の根拠があってそんなこと……っ!?」
珍しい。
秋川が焦っている。
「あら、違ったかしら。当たっていると思ったのだけれど」
匂宮が話し終えるのを待っていたかのように、突如として轟音が響き始めた。
なんだこの音―――? プロペラ?
音は徐々に近づいてくる。
アパートが微かに揺れ始めた。
「大体あんた何者なの? 名前くらい名乗りなさいよ!」
「人に名前を訊くときは自分から名乗るものだと習わなかったの? まあいいわ。私は匂宮来夢」
「匂宮……? まさか、匂宮財閥の……!?」
呆気にとられたような表情の秋川。
そんな彼女に構わず、匂宮は玄関で靴を履き始めた。
「お、おい。どこ行くんだよ?」
「家に帰るの。あなたも一緒に来るのよ、又野くん」
「え、俺も?」
ピンポーン。
轟音の中、古びた呼び鈴が鳴った。
一体誰なんだ、こんな時に?
俺が玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは―――メイド服を着たお姉さんだった。
ベージュの髪色をしたお姉さんは、俺を見て小首を傾げる。
「……あら、どちら様ですか?」
「それはこっちの台詞だ! あんた誰なんだ!?」
「そろそろ来るのではないかと思っていたところよ。お出迎えご苦労さま」
「家出も大概になさってください、お嬢様」
「え、匂宮の知り合い? どういうこと―――」
また轟音が近づいたような気がして、俺は顔を上げた。
上空から徐々に近づいてくる影――それはヘリコプターだった。
な、なんでヘリがこんなところに!?
「行きましょう又野くん。今日から君は私と一緒に暮らすのよ」
「俺が……匂宮と一緒に?」
「そう。匂宮財閥第18代当主、匂宮来夢のパートナーとしてね」
「匂宮……財閥……?」
ヘリコプターがアパートの駐車場に着陸した。
匂宮は秋川の方を見て、言う。
「さようなら、秋川さん……だったかしら。さあ又野くん、手を」
匂宮が俺の右手を握る。
その柔らかい手に引かれるまま、俺はヘリコプターに乗り込んだ。
乗降口が閉まりヘリが上昇を始める。
アパートから飛び出してきた秋川がこちらを見上げ、顔を真っ赤にして叫んだ。
「あんたのことなんか、もう知らないんだからああああああっっ!」
その秋川の声は、ヘリのプロペラの音にかき消された。
ヘリが高度を上げるにつれアパートが小さくなっていく。
不意に甘い香りがして隣を見ると、匂宮が俺の肩に頭をのせていて、豊かな金髪が広がっていた。
「匂宮……?」
匂宮は青色の瞳を少し潤ませながら俺を見上げた。
「あなたはもう何も心配しなくていいわ。私があなたをいっぱい幸せにしてあげるから。……これから先、ずぅっとね」
こうして俺はお嬢様学校へ編入したり匂宮と甘々ライフを送ったりするのだが、それはまた別のお話。
どうもー、ぶんぶんスクーターです。読んでいただきありがとうございます!
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