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女神さまとスライムちゃん?  作者: リーモー
とある辺境の土地
9/15

記憶巡り 濡れ衣

とある民家にて、テーブルの下にひっそりと隠れるスライムが一匹おりました。


(カチャカチャ…)


キッチンでは一人の女性が、洗い物をしていました。


「ふんふふ~ん♪」


鼻唄を交えながら、慣れた手つきで洗い物を済ませていく


「あぁ、早く食べたいな~」


その女性は、にやけながら独り言を続ける


「今日の夜ご飯のために、お昼を少なめにしたからお腹がペコペコだわ」


すると洗い物が済んだのか、手洗いをしてからテーブルの方へと振り向く。


(くるり)


「…あれ?」


目を擦りながらもう一度テーブルを見渡す。


「え、えぇぇーー!!」


その女性は大きな声で叫び出す。


「無い!今日の夜ご飯が消えてる!」


すると、ドタドタと音が近付いてくる。


(ギィ…バタン!)


「ど、どうかしたのか!」


扉を力強く開けた男性は、少し息が切れていた。


「あなた、大変よ!」

「ふぅ…、一体どうしたんだ」

「晩御飯が、消えたのよ!」

「消えた?」


男性は部屋を見渡す。確かに料理をした形跡はあるものの、食べ物は何も無かった。


「私は、確かにこのテーブルの上にシチューとサラダ、そして今日のパンを準備していたの!なのに無いのよ…」

「な、パンも消えてるのか!?」

「えぇ、そうよ…ついでに、テーブルの上に置いてた食器とかも全部無いわ」


すると男性は怒りをあらわにする。


「あのパンは入手困難で…囚人だけでなく王家までもが愛する、冷めても美味しいふわふわ食感の幸せを呼ぶ幻のパン。エターナルハッピーブレッドだぞ!」


長いキャッチフレーズをすらすらと喋る。


「あのパンを狙った泥棒か!!」

「私も初めはそう思ったわ。けど、それなら食器ごと消えたシチューとか不自然なのよ…」

「確かに、食器も…と言うかコップすら無い!」

「エターナルハッピーブレッドが狙いだったのなら、他の物を持っていく必要は無いはずなのに…」


女性はテーブルに、手を叩きつける。


(バンッ)


「私が楽しみにしていたフェアリーズトマトまで!!」

「あの伝説の妖精が愛したと噂のトマトまでも…くそ!犯人の野郎、許せねぇぞ」


(ガタッ)


その時、テーブルを叩く音に驚いたスライムは動いてしまう。


「ん?何だ今の音は」

「何か聞こえたかしら?」

「足元でしたような…」


男性はテーブルの下を覗き込む。すると一匹のスライムと目が重なりあう。


「……」


沈黙する男性。少ししてから驚きはじめる


「わ、何でこんなところにスライムがいやがるんだ」

「え?」


すぐさま女性も覗き込む。


「スライムが何で入り込んでいるのよ!」

「そんな事、俺が知るかっ」


ちょっとしたパニックになる。しかし女性はふと冷静に考える。するとスライムを片手で握り掴む。


(ガシッ)


「お前か?私達の晩飯を喰らったのは」


女性の雰囲気が、ガラリと変わる。それを見た男性は少し落ち着きを取り戻す。


「で、でもスライムって物を食べるのか?」

「食べるかは知らないわ。けど、こいつ以外に犯人らしいのは居ないでしょう?」

「確かにそうだけど…」

「大体、家の中にスライムが現れるなんて聞いた事が無いわ、すなわちこのスライムは、元々盗む目的で侵入していたのよ!」


女性に握り締められてスライムは逃げられない。するともう片方の手に包丁を持ち始める。


「食べ物の怨みはね、恐ろしいのよ?」


顔を近づけ、包丁をスライムの目の前に突き出す。それを見た男性は完全に縮まりこむ。


「美味しかった?いや、美味しかったでしょうねぇ?あれを手に入れるためにどれだけ大変だった事か。あなたみたいな泥棒は成敗しなきゃ駄目よね…」


女性はスライムに語り続ける。


「ふふ、主婦歴5年の力を見せてあげるわ…」


するとスライムを宙に投げ上げる、そして包丁を構え、片目をギラリと鈍く光らせる。


「お前は万死に値する。秘技!三枚下ろし!!」


そう聞こえた時にはスライムの目の前には包丁の刃が…

そこから世界は真っ暗になる。











「ってな感じで、女神さまがお礼にと送ったスライムは、泥棒の汚名を付けられて殺されちゃってますよ…」

「あらまぁ、そんな日だってあるわよ~」

「大抵こうなってしまうのでは…?」

「まぁ、倒されても魔素を放出するから、いいんじゃないかしら?倒した人も少し元気になるわよ~」


 少しだけ…。しかし、今のを見る限りじゃシチューより、パンとサラダの方が高価だったのかな


すると女神さまは立ち上がりあくびをする。


「ん~、そろそろ寝ましょうか」

「俺は記憶の整理でもしますかね」

「人の姿なら夢も見れるから、寝てもいいのよ~」

「いえ…さっきみたいな変な記憶もあるでしょうから見ておかないと」


女神さまは、少し目を泳がせる


「とりあえずベッドに行きましょうか~」


寝る準備万全の状態で寝室へと向かい、それぞれベッドに入る。


「それじゃあおやすみなさい~」

「おやすみなさい」


 寝るわけじゃないけど。さて、


するとライムは、スライムの姿に戻る。


(ポンッ)


 寝落ちとか嫌だから、こっちの姿でやろうっと。それにベッドから落ちて痛い思いもしたくないし…


ライムは目を閉じて集中する。そして記憶を徘徊する。

スライムの色々な記憶を見て周り、ついでに世界の情報も蓄えるのであった。










(つんつん)


「ライムちゃん起きて、もう朝よ~?」


ライムはバッと目を開ける、すると目の前に女神さまの顔が現れびっくりする。


 近い…


「おはようライムちゃん。朝食の準備できてるわよ~」


 もう朝になっているとは、集中すると分からないもんだなぁ

  

すると女神さまは寝室を出る。それを追う様にライムは人の姿になり移動する。


(ポンッ)


「おはようございます、今日も早いですね」

「楽しい朝御飯の時間だから、早く起きちゃうのよ~」

「朝御飯が一番楽しみなのですか?」

「そうね~、朝は比較的に甘い物が多いから好きかしらね」

「なるほど…。今日はパンと…ジャム。あと牛乳ですか?」

「そう、シンプルだけど美味しいメニューね。早く食べましょう」


テーブルの椅子に座る、そして


「いただきます」×2


女神さまは、早速パンにジャムを塗り始める。


(ペタペタ)


「このジャムって何味なのかしら?香りは良いけれど…初めて見るわ~」


(ピリッ)


「…あ、それはいちじくで作ったジャムみたいですね」

「あら、ライムちゃん分かるの?」

「えっと、その…泥棒扱いされて殺されたスライムの記憶が、今来ましたので…間違いないかと」

「あら…もう見つかってしまったのね」


残念そうにしながらパンを食べ始める。


(モグモグ)


 あ、これ絶対楽しんでるやつだ…

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