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女神さまとスライムちゃん?  作者: リーモー
とある辺境の土地
13/15

記憶巡り 名も無き町

森を迷い始めてから5日が経つ頃、サミナ達は食料不足に悩まされていた。


「うぅ、何で魔物ばっかりなのー!」

「そう言っても仕方ないでしょ…」

「だって魔物じゃなければお腹を満たせてるんだよ~?」

「魔物じゃなくてただの動物だったら、死体が残って食べれるのにな」

「焼き肉…」


(ぎゅるる…)


サミナは腹の虫を鳴かせ、顔を赤くする。


「もう、エルゴが焼き肉何て言うからだよ!」

「すまない」

「あぁ、肉が食いてぇ…」

「私だってお腹空いてるんだから我慢しなさい」

「ふぅ、何でもいいから食べれる奴出てこないかな…」

「そんな事言うと、変なの出る」


お腹を空かせたまま進んでいく。


「この森は四足獣しか居ないのか?」

「確かに四足獣しか見てないわね」

「二足獣が居てもいいのにね~」

「背翼獣、いないだけまし」

「そうね、背翼獣は飛ぶから戦い難いのよね」

「俺は二足獣が嫌いだなー」

「グレンはパワーでごり押しされるのは苦手だったわね」

「私はヌメヌメしてる水魚獣が嫌いかな~」

「俺、早い四足獣嫌い」

「皆の苦手な種族はバラバラだけど、サミナだけ理由がおかしいわね」


魔物の種類は複数存在していて大きく分けると、二足獣、四足獣、背翼獣、水魚獣に分類されている。


「そう言えばスライムってどの種類になるのかな?」

「ん~…手足ないから二足獣と四足獣じゃ無いのは確かだな」

「翼もないし背翼獣でも無いわね」

「サミナが苦手な、水魚獣かもしれない」

「私が嫌いなのはヌメヌメしてる奴だもん、それにスライムは泳げないから水魚獣じゃないと思うな」

「スライムには泳ぐ手足もヒレもないもんな~」

「ただ浮かんでプカプカする事しか出来ないんだけど。でもそれがまた可愛いんだよ~」


サミナはスライムを抱き上げたまま空を見上げてうっとりとしていた。


「サミナは放っておいて行きましょうか」

「そうだな、早く食物でも見つけよう」

「あれ…皆ちょっと待って!」


サミナは何かを見つけたのか指をさす。


「あっちの方角に白い煙が見えるよ?もしかしたら人が居るのかも」

「何!」


すぐさま指の方向を見ると、白い煙がうっすらと見える。


「本当だ、これは何か有るわね」

「よし、急いで行ってみよう」


皆が走り出す中、遅れてサミナも走り出す。


「わ、私が見つけたんだからね!」


しかし煙が近くなって来た頃、事件が起きる。


(グルル…)


「まじか…ここでロックベアーかよ」


普通の熊より大きく、岩のように硬いと言われているロックベアーと遭遇してしまう。


(グォオオー!)


「グレンの苦手な奴だね?」

「う、うるさいな!」

「そんな事言ってないで、早く戦闘準備しなさい」

「俺が行く」


すぐにエルゴが斧を握りしめて立ち向かう。それを見たロックベアーも突進してくる。


「パワーなら、負けない」


突進してくるロックベアーに斧を横から振りかざす。


(ガッ、ドゴッ!)


ロックベアーの肩に斧が少し食い込む。しかし突進は止められず、エルゴは吹き飛ばされる。


「ぐっ」

「エルゴ大丈夫!?」


すぐにサミナがエルゴの回復へ向かう。


「よくもやりやがったな!ミレーヌ準備はどうだ」

「いつでも行けるわ」

「さすがに本気でやらないと危険だからな、行くぞ!」

「サポート魔法をありったけ乗せるわよ」


するとグレンの足元が光だし、剣に炎が纏われる。そしてすぐさまロックベアーに走り込む。


「一撃で決めてやるぜ、くらえ!」


ロックベアーがグレンに反応を見せた頃には、すでに剣を振り抜いた後だった。


「決まったな…ふっ」


余裕を見せた瞬間、ロックベアーはその場に倒れる。


「わぁ、一撃だね」

「まぁ俺にかかれば、こんなもんよ」


(ゴッ)


グレンは杖で叩かれる。


「痛っ」

「エルゴが時間を作って、その間に私がサポート魔法を使えたから楽に倒せたのよ?あまり調子に乗らないの」

「…分かってるよ、ありがとなエルゴ」

「俺の役目」

「ミレーヌも…いつもありがとよ」

「分かってるならいいのよ」


するとサミナが走っていく。そして倒れたロックベアーを指差す。


「ねぇねぇ、これ死体が残ってるよね?」

「こいつ魔物じゃないのか…と言うことは食べられる!」

「よかった、何とか食料が手に入った訳ね」

「やっと食事が取れる~。早速ご飯の準備をしようよ!」


食料を目の前に喜ぶ一同、しかしエルゴだけは冷静に答える。


「あそこに見えるの、町じゃないか?」

「へっ」×3


少し下った森の中枢部に町が見える。その町は、ひとつの大きな家を囲むように小さな家が10軒ほどあり、さらにその周りを壁で囲んでいた。


「おお、家から煙も見える、これは絶対人が住んでるな!」

「わ、わ、早く行こうよ!お風呂に入れるかも!」

「そ…そうね、とりあえず行ってみましょう!」


すぐに町に向かって走り出す。


「肉…」


エルゴはロックベアーを後にし走り出す。そして町の外にある畑を見つける。


「畑とかあるけど…大分やられてるみたいね」

「あの数のシルバーウルフもそうだが、ロックベアーとかヤバイ奴らが住んでる森じゃそうなるよな」

「こんな所でも暮らせてるって事は、きっと強い町なんだよ」


町を囲んでいた壁までたどり着く。その壁は2メートル程の高さが有り、キレイな白色をしていて不思議な気配を漂わせていた。


「わー、畑は荒らされてるのに壁はとってもキレイだね」

「なんだか不思議な力を感じる壁ね」

「そうか?ただの壁だろ?」


(ポカッ)


ミレーヌはグレンを軽く叩く。


「魔力の様なものを感じる、まぁ鈍感なあんたには分からないでしょうけど?」

「いてて…俺なんてどうせ魔素保有量がずば抜けてるミレーヌ様には敵いませんよーだ」

「喧嘩よくない、早く行こう」

「あっちが壁の入り口かな~?」


大きな鉄格子の門を見つける。


「おっきな門だね~」


すると門の内側から男性が近づいてくる。


「おお、これは珍しい。こんな辺境の町に尋ね人とは…とにかく門を開けますので町にお入りください」

「あ、ありがとうございます」


(ガチャン)


「私の名前はナムです。ところで貴殿方は何故この町にいらしたので?」

「あ、俺はグレンと言います。恥ずかしい話なんですが、ずっと森で迷っていて…」

「食料も尽きちゃって、もう駄目かと思った所にこの町を見つけて来たんだよね」

「こらサミナ、言葉使いに気を付けなさい!」

「いいんですよ、お気になさらずに」


するとサミナのお腹が鳴る。


(ぎゅるる…)


「はっはっはっ、立ち話も何ですから…ゲストハウスが有りますのでそちらに行きましょうか。後お食事等も準備しましょう」

「あ、ありがとうございます!」


町の中を歩いて行き、そのまま中央にある大きな一軒家に入っていく。


「この大きな家がゲストハウスだなんて思わなかったわ。この町には旅人がやって来るのかしら?」

「いえ、町自体に名前も無いですし、こんな所に来る人は滅多に居ませんよ」

「じゃあなんで、こんなに大きなゲストハウスがあるんだ…」

「それに関しては…私からは何も言えませんが。今から呼んでくるこの町の責任者が話してくれると思います。では、この客間でお待ち下さい」


客間で寛ぎながら町の責任者を待つ。


「広くてキレイな部屋だね~」

「豪華、綺麗」

「まさか食事まで準備してくれるとはな」

「早くご飯を食べたいね~」


ミレーヌは静かに考え込んでいた。


「ねぇ、少し変だと思わない?」

「変って何が~?」

「普通の人じゃ辿り着くのも困難な場所に町があって、しかもこんな立派なゲストハウスまであるのよ?」

「確かに変だとは思ったけど、怪しい町って感じはしないけどなぁ」

「町の人達も悪い様には見えなかったよ?」

「何と言うか…何かを隠してる感じがするのよね…」

「ん~、とりあえず警戒だけはしておくか」


(コンコン、ガチャ)


扉を開け、ナムと共に女性と男の老人が入ってくる。


「お待たせしました。こちらが町の責任者であるダブツ様です」

「初めまして、ダブツと申します。隣の者はアミです」


アミは少し頭を下げる。


「あ、こちらこそ。俺はグレンと言います、そして隣にミレーヌ、サミナ、エルゴです」


皆頭を下げる。


「なるほど…所で貴殿方は勇者パーティー様なのですか?」


グレンは少し考えミレーヌの方を見る。


「…隠しても仕方がないからな。俺は未熟ながら勇者をやっています。魔王軍から身を隠す最中に森で迷ってしまい、この町にたどり着きました。少しの間だけ置いては貰えないでしょうか!」

「…こちらの条件を受けてくれるのであれば、ずっと居座っても構いません」

「条件…ですか?」

「はい、難しい事ではありませんよ。ミレーヌ様に色々と手伝って欲しい事があるのです」

「私に?一体何を…」

「ミレーヌ様に魔科学の研究のお手伝いをお願いしたいのです」


ミレーヌは驚く。


「魔科学ですって!?」

「実はこの町では隠れて魔科学の研究をやっているのです」


サミナは質問する。


「ねぇ、魔科学ってなんなの?」

「そうですね…魔科学とは、今は無き古代兵器と言った感じでしょうか」

「魔科学は昔使われていた技術で、一度は魔王軍を壊滅寸前まで追い詰めたと言われているのよ」

「少し聞いた事はあるが、そんなにすごいのか魔科学ってのは…」

「すごいってもんじゃないわよ!」


ミレーヌはすこし興奮気味に語りだす。


「例えば、魔法は適性にもよるけど使用者の魔素保有量で威力が変わるじゃない?でも魔科学は大気中の魔素を消費して使う魔法みたいな物だから使用者の魔素保有量は関係ないのよ。つまり魔科学を使えば誰でも強力な魔法が撃てるって事よ」

「え~、じゃあ何でそんなにすごい技術が無くなったの?」

「魔王により魔科学に携わった者や資料などは全て消し去られたと言われていますね。だから今でも魔科学に関わる者は魔王軍に狙われるのです」

「なるほど、だからこんな場所で…もし魔王軍に町が見つかっても、隠す為にゲストハウスなんか置いてる訳か…」

「そうです、ちなみにゲストハウスに研究所が隠されています」


するとダブツはもう一度お願いをする。


「ミレーヌ様、手伝って頂けませんか?」

「私で良ければもちろん手伝います!」

「いいのかミレーヌ?」

「魔科学が復活すれば魔王を倒せるのも夢じゃないわ。それに他に行く宛も無いでしょう?」

「お前がいいなら俺は問題無いが」

「この町に滞在するって事で決定?」

「まぁ…そうなるかな」

「やった!それならゆっくりできるね」


しかしサミナが喜ぶのも、つかの間だった。


「あ、実はここ最近魔物が多く出現していますので、他の皆様には魔物退治をお願いしたいのですが…」

「えっ」

「ミレーヌだけ働かせる訳にはいかないからな。分かりました、俺達は魔物を倒します」

「退治、任せろ」

「ありがとう。私も研究頑張るわね」


こうしてグレンとダブツは握手を交わすのであった。


「うぅ、ゆっくり出来ると思ったのに…」

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