変わり行く日常
~あれから数十年の刻が過ぎる~
いつもと変わらない朝がここに訪れる。
もうあれから50年は経過したのかな?昔と比べてあんまり変わってない気がする…
相変わらず、2人はスライム作りの日常を送っている。まぁ作っているのはライムだけだが…。しかし変わった事もある様子。
さて、そろそろ女神さまが来る頃かな?
(ふにふに)
女神さまがライムを軽くつねる。
「ライムちゃん起きて、朝御飯の準備できたわよ~」
こうしていつもの朝がやってくるのだ。
今日の朝は何かな~
(ポンッ)
ライムは人の姿になり食卓へ向かう。ちなみに変身したり戻ったりすると怪我以外はキレイになるから顔を洗う必要がないらしい。
「おはようございます~」
「おはよう~」
さすがに50年近く一緒に暮らしているので、前よりも少しフランクに話す。
「今日の朝はね、白米、ソーセージ、ワカメの味噌汁、後この瓶に入った黒い物体!…何かしらこれ?」
「それは、初めて見ますね」
「納豆じゃなくてよかったわ~」
「朝が白米だと、納豆率高めですよね」
いつもの様に食事の事を話ながら食卓の椅子に座る。
(じー)
女神さまがライムを見つめる。
「今日の食事の情報なら、まだ流れてきてないですよ?」
「あら残念、早くこの黒い物体を知りたかったのに~」
「なんにせよ食べるのですから、いいじゃないですか」
「そうねぇ、それじゃあ頂きましょうか」
手を合わせて
「いただきます」×2
これだけ長い時間を過ごせばライムもお箸等は軽々使いこなせる。
「とりあえずソーセージを食べようかしら」
女神さまがソーセージを食べようとすると
(ピリッ)
「あ、女神さま、その黒い物体の正体が分かりましたよ」
大体このぐらいの時間には、情報が9割り近くの確率で入ってくる。すなわちお礼で送られた9割りのスライム達は泥棒扱いされて倒されている事になる。しかし、そのお陰で食べ物の知識を得られるのも事実である。
「いったい何なのかしら?」
女神さまはソーセージを口の前で待機させて喋る。
「これは海苔の佃煮みたいですね」
「あら、佃煮って事は、甘いのかしら」
「どうなんでしょう、味は食べてみないと分かりませんね」
「昔食べたイナゴの佃煮は甘くて美味しかった記憶があるわ」
「そう言えばあの虫も佃煮でしたね。俺は見た目が嫌でしたけど」
「今回は海苔のだから白米に合いそうね~」
「そうですね、単体で食べるのでは無く白米のお供みたいです」
「それじゃあ早速、ソーセージを食べてから頂くとしましょう~」
女神さまは口の前に待機させていたソーセージを食べようとする。
「あ、女神さまちょっと待っ」
(パリッ)
ジューシーな音が鳴る。食べるのを止めようとしたが間に合わず、すでに女神さまの口の中へ。
(モグモグ)
(モグモグ…)
(……)
「辛ーーーい!」
女神さまは辛さで叫ぶ。ライムは首を横に振る。
「何これ滅茶苦茶辛いーー」
(ごくごく)
急いでコップの水を飲み干す。
「それは唐辛子練り込みソーセージみたいです」
「唐辛子入り…私が苦手な辛い物じゃない」
そう、女神さまは辛い物が大の苦手なのだ。あと苦い物も嫌いである。
「もう、今日の朝御飯で私の味方はあなただけよ…」
女神さまは海苔の佃煮が入った瓶をそっと抱き締める。そして味噌汁をすするのであった。
飲んでる味噌汁は味方じゃないのだろうか…
こうやって食の知識が増えていく。それから朝食を済ませて片付けが終わる頃、女神さまはここ数十年、毎日している事を始める。
「それじゃあ、トイレに行ってきま~す」
片手に新聞を持ちトイレに向かう女神さま。
用を足す訳でも無いのに、なんでトイレに行くのだろう…
女神さまはただ新聞を読むためにトイレに向かっているのだ。しかも戻って来るのが早い。
もう出てきた…
「ふぅ、ライムちゃんも読む?」
「はい、読みます」
パラパラと読み始める。
~またも勇者パーティーが魔王軍に破れる~
魔王軍に挑んだとある勇者パーティーは全滅し、今のところ安否は不明の状態。遺体は見つかっていない事から、逃げ延びたと言う仮説もでています。
また勇者パーティーがやられたのか…偽物の方ならいいんだけどなぁ。
どうやら魔王はまだまだ健在。魔王討伐は先のご様子。
こうしてのんびりと新聞を読み終える頃にスライム作りへと向かう。
「さてと、そろそろ行きますか」
「そうね~」
(ガチャ)
「今日の天気はっと」
ライムが走って結界の外へ向かう。
今日は晴れか~
そして天気を確認して戻って来る。これも仕事の前にやっている事。
「今日はいい天気でした」
「お昼寝日よりね~」
「…いつも通りですね」
それからライムは、スライムの姿に戻ってから作り始める。
(ポポポポポポ…)
慣れたライムは集中すれば約2時間ぐらいで10000匹作れる様になっていた。それと1回で作れる量がスライムの姿なら最大100匹、人の姿なら最大10匹と成長していた。ちなみに最大数を作ると魔素消費量が膨大らしいからやらないとの事。
(Zzz…)
あ、もう女神さま寝てる。
それからお昼になる頃には終わっている。
「今日の分は終わりましたよ」
「ふわぁ、それじゃあそろそろお昼ご飯の時間ね~」
こうやってスライム作りが終わるとお昼ご飯をのんびりと食べ、後は気ままにお喋りなどで時間を過ごして夜を迎えるのである。
「最近はこれと言った事件も起きていないから、今日も世界は平和ね~」
「魔王に支配されてはいますが…確かに平和ですね」
このまま何もなければいいけど…
「そう言えば、この場所から一番近い街がどんどん大きくなってますけど大丈夫でしょうか?」
「今どのぐらいの所にあるの?」
「山を2つ越えた所でしょうかね」
「そんなに近かったかしら?」
「どうやら魔素が豊富と言うことで、人々が集り森などを切り開いて街を大きくしてるみたいです」
「スラちゃんがいっぱい生息しているものね~」
「いつの日か、誰かがここまでやってくるかもしれませんね」
「危険な動物とかいるから大丈夫だと思うわよ~」
結界の中だから動物とは無縁なんだよな~
大体こうやって世界の事などを話していると暗くなるので家に戻る。そして家に戻るとお風呂に入り夜ご飯を食べるて、後はのんびりしてから就寝の時間となる。
「それじゃあ、そろそろ寝ましょうか」
「そうしましょう」
こうやって2人は楽しく毎日を過ごしている。
「おやすみなさい」×2
いつも通り俺は寝るわけじゃないけど…
こうしてライムは、いつもの記憶の整理が待っているのであった…
(ピリッ)
(カッ。ドゴォォン!)
(グシャ)
はっ!
急にライムは目を開ける。
な、なんだ今の…




