これからの日常
ここに朝食の片付けをしながら、楽しそうに会話をしている者がいました。
「それから、最終的に熱されたフライパンで叩き潰されてしまった訳ですよ」
「あらら…スラちゃんも調理されちゃったのね~」
朝食を盗んだ犯人と疑われ、倒されてしまうスライムの話をしていた。
「このままじゃスライムは、食料泥棒としての汚名を受ける事になるのでは…」
「全部が全部泥棒と扱われないわよ~」
「それならいいのですが…」
一応、盗んでるのは女神さまなんだけどなぁ
片付けが終わり、少しのんびりとした時間を過ごす。
「さて、そろそろお仕事を始めましょうか」
「はい、今日も戦場へ行きますか…」
二人は外へ出る。するとライムは違和感を感じる。
「あれ、なんか今日は薄暗いですね」
「今日は曇りで天候が悪いみたいよ~」
「そうなんですか。結界の中だと、白いもやで天気が分かりませんね」
「知りたい時は結界から出ればいいのよ~」
「簡単に出入りできるから便利ですよね」
「あ、それから。今日からはスラちゃん10000匹作りましょうね」
「!?」
泉の前で早速スライムを作り出すライム。
スキル発動! スキル発動!
(ポン) (ポン)
すると違和感を感じる。
「あれ?人の姿だと効率が悪い…」
「ん~、スラちゃんを作るなら、同じ形であるスラちゃんの姿でやった方がいいんでしょうね~」
「人の姿だと結構生産スピードが落ちますね。よしっ」
(ポンッ)
ライムは、スライムの姿に戻る。
さっさと終わらせるか~。スキル発動っ
集中してスライムを作りまくる。
もし複数作れてスピードも落ちなければ効率が良くなるな。複数作れるか練習しながらやってみよう。
さらに集中してスライムを作る。
(ポポンッ)
するとついに2匹同時に作る事に成功する。
やった、ついに出来たぞ。後は2匹ずつ作りながらスピードを落とさずに出来れば…
(ポポン、ポポン、ポポン…)
よし、このスピードで出来るなら効率が結構上がる
それを報告しようと女神さまの方を向く。すると
「Zzz…」
寝てるー!まぁ今日はいい天気だし…いや、今日は天候が悪いと言ってたな。
(ポンッ)
するとライムは、人の姿になる。そして結界の外へと向かいだす。
今の天気はどんなんだろう?ちょっと見てみよう
白いもやに顔を入れ、外に顔をだす。
(ザーーーーーー)
「ぶはっ!」
すぐに結界の中に顔を戻す。しかし、すでに顔だけずぶ濡れになってしまう。
土砂降りの雨とは…
ライムは顔だけずぶ濡れ状態で女神さまの元へと向かう。
(ピチョン、ピチョン…)
顔に付いた水を滴らせながら歩いていく。すると気配に気付いたのか、女神さまが目を覚ます。
「あら、何で顔だけびちょびちょなの?」
「外の天気を見に行ったら…豪雨でした」
「ふふ、いきなり顔を出したら危ないわよ~」
「まさか雨が降っているとは思いませんでした」
「この結界の中だと分からないわよね~」
するとライムは、不思議に思った事を聞いてみる。
「女神さま、この結界の中に雨は入ってこないのですか?」
「入ってこれないわよ~」
「でも、風や日差しは入ってきてますよね?」
「えっと単純な話なんだけど、この結界には雨とか危険な動物とかが入れないよう設定してあるの」
何でも有りだなー
「危険な動物は分かりますが、何で雨もなのでしょう」
「濡れたくないし、あとワープゲートに入られると厄介だからよ。それよりも…」
すると女神さまは、歪んだ空間からタオルを取り出しライムに渡す。
「はい、これで顔を拭くといいわよ~」
「あ、ありがとうございます」
急いで濡れた顔を拭きだす。
(ふきふき)
「まぁ、ライムちゃんなら一回スラちゃんの姿に戻ってから再度人の姿に戻れば濡れてない状態に戻るんだけどね」
先に言ってほしかったな…
「あ、そうだ、一回のスキルで2匹出すことに成功しましたよ」
「大分慣れて来たみたいね~」
「はい、これで時間短縮になりますよ」
「それじゃあ早く終わる為にも1回で100匹出せるように頑張りましょうね」
「え…」
頑張って、やっと2匹なんですけどー
女神さまの笑顔が瞳に映る
「…頑張ります」
(ポンッ)
ライムはスライムに戻り、作業を再開するのであった。
(ポポン)(ポポン)(ポポン)(ポポン…)
スライム作りの音が鳴り続けて数時間が経過する。そしてやっと10000匹に到達する。
やっと終わったー!昨日と同じぐらいの作業時間で終了できた。
女神さまがやって来る。
「お疲れ様~、さすがに2匹同時に作ると早いわね~」
(ポンッ)
ライムは、すぐさま人の姿になる。
「そうですね、ただ昨日より疲労感があります」
「さすがに魔素消費が多くなってるんでしょうね~」
「一度に作る量を増やすのだから消費量が増えるのは仕方ないんですかね…」
「まぁまぁ、そんな事より疲れたでしょうから休みましょう」
女神さまはずっと休んでいたような…
テーブルの上には小さなケーキが並んでいた。
「さぁ、ティータイムよ~」
「楽しみにしてました!」
「色々な種類があるから食べ比べてみましょうか」
「はい、いただきます」
二人は、周りが暗くなるまで話をしてから家に戻るのであった。しかし、夜ご飯で事件が起きる。
「きゃー!」
女神さまの叫ぶ声が鳴り響く。
「どうかしましたか!」
すぐさまライムが近寄る、すると鼻を摘まんでいる女神さまがテーブルから離れていた。
「うっ、この臭いは…」
「ライムちゃん…この豆?みたいなのが臭いの…」
「それ食べ物何ですか?」
「食べ物の…はずよ」
テーブルの上には白米、焼いた魚、汁物、それから異様な臭いを放つ茶色の豆?が置かれていた。
「…とりあえず食べますか?」
「うぅ、色々な物を食べてこその人生なのかしら…」
臭いを我慢して食卓に着く。
(ピリッ)
「あー、女神さま?またスライムが泥棒扱いされて倒されました…」
「と言うことはこの臭い物の正体が分かったのね」
「はい、しかし今のところ100%泥棒扱いされてますよね?」
「きっと偶然よ~。そんな事より、これの正体は何なのかしら?」
そんな事扱い…さっき食べたケーキの件でも執事に八つ裂きにされたばかりなのに…
「え~っと、これは納豆と言う物らしくて、豆を発酵させて作るらしいです」
「腐らせて作るの?」
「いえ、発酵です」
「要は腐らせてるのよね?」
「腐らせては無いと思いますが…」
「こんなの食べて大丈夫なのかしら…」
「あ、体にはとても良いみたいですよ?」
女神さまは真剣な顔で悩む、そして
「こんなの食べて大丈夫なのかしら…」2回目
あぁ、これは食べたくないんだろうなぁ
「女神さま!食べてみましょう!」
「う、そうね。食べたら美味しいかもしれないし…」
嫌そうに納豆が入った器を持つ
「これ、よく混ぜると良いみたいです」
「混ぜるの?」
(グルグル)
「何だか、ネバネバしてるんだけど…」
「ですね…」
(グルグルネバネバ)
「こんなの食べて大丈夫なのかしら…」3回目
「とりあえず食べてみます!」
(はぐ、モグモグ)
「ん、味は美味しいですよ」
続いて女神さまも食べてみる
(はむ、ねちゃ…)
口に手を当てる。そして
「ごめんなさい、私には無理…」
急いで水を飲み始める。
不味くはないと思うけどなぁ
「味は良いけど、このネバネバが無理だわ…」
「俺は結構好きかもです」
「そしたらライムちゃんにあげるわね」
笑顔で納豆をくれる。
美味しいから別にいいけどね
そんなこんなで夜ご飯を済ませるのであった。そして就寝の時間になり寝室に入る。
「明日もスラちゃん作りを宜しくね」
「はい、その為に生まれて来たのですから頑張ります」
「前にも言ったかもしれないけど…」
少しだけ間を置いてから話し出す
「スラちゃん作りも大事な事だけど、私としてはライムちゃんと過ごす時間を大切にしたいと思ってるわ。だから、この長く続いていく日常を大切にして行きましょうね…。おやすみなさい」
「おやすみなさい…」
長く続いていく…か。いつまで一緒に暮らせるんだろうか?
(ポンッ)
スライムの姿に戻る。
とにかく一緒にいる限りは、毎日スライムを10000匹作ってあげますとも!
目を閉じて集中する。
さて、今日も話のネタ探しをしますか。




