第一章③ 【ルーキー・アライバル】って冒険者的に言うと就職活動だよね
今日はこの街で一番盛り上がると言われている一大イベントの日。
数々の冒険者が排出されるこの街プロントールの中心部にある噴水広場には特大のステージが設置されていた。そこには多くのギルド関係者や、今さっき卒業したばかりの学生達、お祭り騒ぎに便乗した屋台やそれを楽しむ市民で溢れかえっていた。
【ルーキー・アライバル】がついに幕を開けたのだ。
【ルーキー・アライバル】は、冒険者志願の学生の卒業式の直後に行われるイベントだ。
内容としては、学生達が志願するジョブの『基礎強化の刻印』を受け、所属するギルドを決めるというものだ。
この世界には4種類の『基礎強化の刻印』が存在する。【闘気強化】の刻印「フィジカル」、【魔力強化】の刻印「メンタル」、【耐久力強化】の刻印「タフネス」、【信仰力強化】の刻印「フェイス」の四種類だ。
学生は最終的に志願するジョブを見据え、この四種の刻印から一つを選ぶ事になる。
この刻印は冒険者を強くする為にギルドマスターのトップであるファザーがが開発した物だった。例えば、肉体あの冒険者であれば、フィジカルの刻印を選ぶのが一般的だ。フィジカルを選んだ者は戦闘で使わないであろう【魔力】を【闘気】に還元する事ができる。ちなみに、闘気とは、肉体を滾らせる事で得ることが出来る生命力が根源となるエネルギーの名前だ。剣士や武道家が技を繰り出す時に必要となる。
逆にメンタルを選んだ学生は、戦闘は魔法が主力となり【闘気】は必要がない。よって【闘気】を【魔力】に還元させ、魔法を強くするのだ。魔力は精神を根源とするエネルギーで、瞬発的に湧き出る闘気とは違い、体にゆっくりと蓄積させることが出来る。爪でも髪の毛でも己の肉体であれば魔力を宿せるので、魔力を主力とする冒険者は髪を伸ばす人が多い。
同じように、タフネスは信仰力を還元、デクステリティは耐久力を還元する事で能力を底上げする。
この刻印を授ることで学生は晴れて「冒険者」となれる。
冒険者となった学生達は「ギルド」に加入しなくてはならない。何故なら、市民から受けた仕事はギルドを通じてクエストとして申請される。つまり、ギルドに入らないとクエストを受けることが出来ない。クエストが受けれないとお金を稼ぐことが出来ないのだ。
学生からすると、どのギルドからお呼びが掛かるかも大事だし、依頼達成時の報酬金だって大事な要因だ。
逆に冒険者ギルドはこぞって良いルーキーを率れたい。今では、複数のギルドから声がかかった場合、勧誘した冒険者に一番良い金額を出したギルドへ行くのが通例だ。
ある程度の金額が必要な為、学生の擬似的な実力のランキングは予めステージのど真ん中に表示されている。
その大事な加入ギルドを決めるのがこのイベント、【ルーキー・アライバル】なのだ。
刻印は冒険者にとって別の役割もなしていた。刻印はギルドマスターによって各冒険者の能力を数値化し統計が取ることが出来るのだ。その数値はランキングとなり表示され、各ギルドはそのランキングを見ながら今年加入させる新メンバーを決めると言うシステムになっていた。
学生の現時点トップは武道家志望のグレン・ミルバインド。そして、次点で魔術師志望のアオシ・バロックと表示されているのだった。