第一章① わたくし、世界最強の格闘家になる女、グレン・ミルバインドですわ!!
沢山の観客。
沢山の黄色い声援。
沢山の冒険者たちに囲まれて、一人の少女がステージへと上がって行く。
赤い髪の毛を大き目のバレッタで留め、額にはハチマキをしている。
常に胴着を身に纏う赤毛の少女は観客たちに手を振った。
観客たちはワッと盛り上がる。
学生達による最後のアピールの場に出てきたグレン・ミルバインドはその歓声に満足そうな笑みを浮かべた。
ここは冒険者の街プロントール。
そして、今日は冒険者志望の学生達の卒業式だ。
この卒業式が終わると、いよいよ【ルーキー・アライバル】が始まる。
ステージの目の前には埋め尽くされる程の現役冒険者がどの学生を仲間に引き入れるか熱心に相談をしていた。
そんな冒険者たちにグレンは自信満々に叫んだ。
「わたくし、世界最強の格闘家になる女、グレン・ミルバインドですわ!!」
その声に呼応するかのように観客席から歓声が沸き起こった。
それもそのはず、グレン・ミルバインドは今年の学生の中でランキング上位者。
もしかすると一位を獲得できるかもしれない程の実力の持ち主だ。
そう言うとグレンは自慢の筋肉を見せびらかすようにポージングを取った。
ポージングを取るたびにグレンの力こぶが見てくれと言わんばかりにせりあがる。
一言で言うと、この口調とは裏腹に、グレンはムキムキな少女なのだ。
さらに、彼女は物理技のエネルギー源である闘気に満ち満ちている。
小柄なグレンが一位の座を狙えるのは、絶え間ない筋トレと心に滾らす闘気のおかげだった。
「筋肉こそが最強ですわ!!!」
グレンが観客に手を振ると肉体派の面々から歓声が響いた。
「よく言った!若いの!!」
「筋肉最高!!!」
「お前俺らのギルドに勧誘するから来いよ!!」
沢山の声援を受けてグレンは一段と晴れ晴れとした笑みを浮かべた。
「是非!このグレンをよろしくお願いいたしますわ!!」
最後に一礼すると、グレンは背中に声援を感じながらステージを降りて行く。
赤髪の少女グレンが去り、ステージは次の学生を待つのだった。