弐拾.おいでませ、RBF
とりあえず書きました!
チュンチュンと雀が鳴いている。
雲はいくつか浮いているものの、空は晴れ渡っており、清々しい朝と言っていいだろう。
「おはようございます。」
「お、おはようございますっ!」
「はよーっす」
「ああ、おはよう。みんな…おほんっ…1人以外は眠れたみたいだな。」
昨日の大宴会場にぞろぞろと入ってきた、朝風呂上がりの3人達と、神楽は挨拶を交わす。
3人も神楽と、朝餉の準備という一仕事を終え、執事服に着替えた執事と挨拶を交わし、各々席に着いた。
心なしか神楽も少し眠そうな顔をしている。
「へっ…眠れてねえのは、お前の方じゃねぇの?」
「ぐぬぬ…」
「まあ、昨日あんな事があったら…ねえ、雨千夏ちゃん」
「白熱してましたねえ…なんか、楽しそうでした。」
「「楽しくねえ・ない!!」」
神楽と六花は声を揃えて否定する。
まくらと雨千夏はその様子を見て吹き出してしまった。
そう、昨日の夕食の後、しばらく神楽邸を散策し、満喫した4人は寝室として用意された大部屋で朝までぐっすり…という事はなかった!!
このメンバーには彼女がいた!!
1人の少女があるものを投げた事で勃発してしまったのだ。
主犯は六花。
投げたものは枕。
当てられたのは神楽。
そう、枕投げである。
始まれば、参加者の気力が無くなるまで終わらないという、あの、枕投げである。
ヒートアップしすぎると、枕を掴んだまま、相手に叩きつけるという、投げ要素が皆無になる、あの、枕投げである。
解説すると長くなる為、割愛するが、神楽にとって生まれて初めての枕投げであった。
まくらと雨千夏は疲れのせいか、早々にダウン。
後の話で、神楽と六花は2時間にも及ぶ死闘の末、互いの投げた枕を顔面に食らい、そのまま眠りについたのだという。
…という事があった。
「まあ、あれはウチの勝ちだべ。」
「はっ!?貴様の目は節穴か?あれはどう見ても引き分けであろう!!」
「まあ、まあ、六花ちゃん…神楽さんも…」
「そ、そうですよぉ…」
2人をなだめる、まくらと雨千夏。
「まあ、いい。決着は後でつけるとして、今は朝食が先だな。みんなも席につきたまえ。今日も爺やが腕によりをかけた朝餉だ。いただくとしよう。」
テーブルには相変わらず、老舗旅館にも引けを取らない、鮮度、見た目、クオリティの朝餉が並んでいる。
「それでは、いただきます。」
「いただきます。」
「い、いただきます。」
「いただきー!」
それぞれが手を合わせた後、それぞれの食べたいものに箸をのばす。
「だし巻き玉子うんめー!!」
「ちょっと、六花ちゃん、はしたないよ。…ずずっ。…!?このお味噌汁、おいしいっ!!」
六花を嗜めつつ自らも、味わったことのない絶品料理に舌鼓をうつ。
神楽はそれぞれの反応を嬉しそうに見ながら自慢気に頷く。
「雨千夏くんはどうだ?お口に合うだろうか?」
「は、はひ!全部おいしくて…特にこの…」
神楽に話をふられた雨千夏は驚きつつも、料理の感想を述べた。
「お漬け物がすっごく美味しいです!なんというか、市販の物とは違うというか、こだわりとか、温かみみたいなのが感じられて…」
言い終わる前に、何者かが雨千夏の隣に、一瞬で移動し、正座をしながら雨千夏の両手をガシッととると、鼻息混じりに、こう告げた。
「雨千夏様っ!!このっ、漬け物の味が分かるのですか!?」
…執事だった。
「へっ、は、はひっ!」
「爺や…」
神楽も眉間を押さえている。
「全ての料理は言うまでもなく、丹精込めて作っております…が!特にこの漬け物!私が、汗水垂らして、一生懸命、一から栽培した野菜から作っておりまして!漬け方にもこだわりがあり…まあ、この辺りは企業秘密みたいなものなので言えませんが…とにかく!この漬け物の味を分かっていただけるとは、この爺、報われたと言いますか、感激で目頭が…」
と言いながら、本当に目頭を押さえる執事。
「爺、その辺にしてくれ…雨千夏くんが困っている。」
「はっ!これは失礼しました!つい!」
「まあ、何にせよ、雨千夏くんは爺に気に入られたようだな。」
「…へっ?」
「どうぞ、私の事は神楽お嬢様と同じく、爺やとお呼びください。」
「え、えと、爺や…さん…」
「ありがたき幸せっ…皆様に喜んでいただけるよう、より一層精進致します!では!」
そう言うと、執事は鼻歌交じりに宴会場を後にした。
「最初の時とセバスチャンのキャラが崩壊してんな…」
「六花ちゃん!しーっ!」
「ま、まあ、爺やも人だ。たまに発作的に暴走する時もある。雨千夏くん、悪気はないから許してやってほしい。」
「い、いえ!私は、き、気にしてませんので!それに本当においしかったし…」
照れ臭そうに俯く雨千夏をチラッと見た後、神楽は続ける。
「さて、ご飯を食べながらでもいいので、私の聞いてくれ。」
「もごんご?」
「六花ちゃん、食べながら喋らない…」
「ごほん。この後の日程だが、少し体を動かそうと思う。」
「えっと、スポーツ…ですか?」
神楽の顔を伺うように問いかける雨千夏。
「そうだな、私達は今、どこの部に所属している?…まあ、厳密に言えば、まだ同好会なわけだが。」
「んんっ!?」
食べながら、聞いていた六花は喉につまらせてしまったのか、胸をグーでドンドンと叩く。
「ほら、六花ちゃん、水っ!」
六花は、まくらから、水の入ったグラスを引ったくると秒で飲み干した。
「あーーーーー!死ぬかと思った!!」
「えと、まさか、RiVE…ですか?」
「ご名答だ、雨千夏くん。」
神楽が不敵な笑みを浮かべる。
「つーかよ、場所はどうすんだよ?どっか借りるのか?」
六花は当たり前の疑問を神楽に投げ掛ける。
「フッ。」
神楽は六花を一瞥し、鼻で笑った後、話を続けた。
「明神家には大浴場と宴会場ぐらいしか無いと思うかい?」
「…あ?勿体ぶった言い方すんじゃねえよ」
鼻で笑われて、少し機嫌を損ねた六花が神楽に噛みつく。
「ははは!少々意地が悪かったね。非礼を詫びよう。うん、そうだな。うちにはRiVEの施設がある。」
「!?」
開いた口が塞がらないという感じの雨千夏。
「マジかよ…これだから、金持ちは…」
「六花ちゃんに賛同するわけじゃないですけど、本当なんですか?」
まくらも訝しげな表情で神楽を見る。
「まあ、実際に見てもらった方が早いな。朝食の後、少し休憩をとってからにしよう。30分後に玄関前に集合してくれ。」
神楽に言われた通り、朝食を済ませた3人は、少しの休憩をとり、30分後、神楽が指定した玄関前に集合した。
「よし、皆集まったようだな。」
神楽は全員の姿を確認すると、ニコリと微笑んだ。
では、お披露目といこうか、そう言いながら、神楽は大きい額縁に飾られた1枚の絵を少し強めに押した。
すると絵画は、スイッチのように額縁ごと壁に埋まった。
そして、それを確認した神楽は柏手を3回打つ。
それに呼応するかのように絵画の埋まった壁が右へゆっくりとスライドする。
そこに現れたのはエレベーターだった。
パネルには1F、B1F、B2F、B3Fと表示されている。
「ふええ…」
「す、すごい…」
「はえー、忍者屋敷かよ…」
現実離れした出来事に一同口をポカーンと開けている。
そんな3人を尻目に神楽は
「ふふ、さあ、乗りたまえよ。」
と、エレベーターの開くボタンを押して、皆を箱のなかに招き入れる。
3人が乗り込んだ後、神楽もそれに乗り込み、B3Fのボタンを押す。
「訓練所はここの地下3階にあるんだ。」
得意気に微笑む神楽。
3人は無言だった。
満員に近いエレベーターに友人と2人で乗っている時の、あの、会話しちゃいけない空気みたいな感じである。
体感3秒。
チーン。と、馴染み深い音が目的の階に到着した事を知らせる。
ゆっくりと開いたドアの向こう。
彼女らの目に飛び込んできたのは、だだっ広い空間。
そこには、テニスコート4面分はあるであろう、RiVE用バトルフィールドが2面存在していた。
「ようこそ、明神家自慢の地下施設、RiVE-Battle-Field…通称RBFへ。」
そのままである。
次から、やっと久方ぶりのバトル要素…




