零.prologue-プロローグ-
ゴオオオオオオ───
パチッパチパチパチッ───
火は勢いよく燃え盛り、火の粉は激しく爆ぜる。
熱い 喉が焼ける。
辺りを見回すと、一帯が火の海だった。
──私は火の海の中に立っている。
けれど、実際に火の海の中に立っているわけではない。
──そう、これは夢だ。
何故、夢だと分かるのか。
簡単な事だ。
何度も見ているから。
私は定期的にこの火の海に放り出される。
この喉が焼けるような感覚も、息をするみたいに慣れた。
「お姉ちゃん…っ!!」
小学生ぐらいだろうか、まだまだ幼さの残る女の子の声がした──
少女は弱々しく立ち尽くしている。
──ああ…始まった。
このお姉ちゃんという、叫びにも似た台詞からこの夢は始まるのだ──
「◯◯っ…!!」
そして、もう一人の声
先程の女の子と同年代ぐらいの年齢だろうか──
お姉ちゃんと呼ばれていたが、子供にしては、年齢より若干大人びた雰囲気が漂っている。
少し長めの黒髪のせいだろうか。
言葉自体は聞き取れなかったが、恐らく妹の名前を呼んだのだろう。
2人とも体のあちこちが血に染まり、すでに満身創痍だ。
勿論、この二人に私の姿は見えていない。
この夢は私を置き去りに進んでいく──
いつも通りの事だ。
よく見ると、妹らしき子供の後ろに、中学生ぐらいの少女が立っていた。
冷たい目をした、お世辞にも年相応には見えない少女だ。
彼女も長めの黒髪だった。
吸い込まれるような深い黒。
その目に光は無い。
一体、幾つの死線をくぐればその様な目になるのだろうか──
何故か、手には刀が握られている。
─私はこの少女を知っている。
そして、私はこの妹らしき人物に何となくだが、自分の面影を重ねていた──
──どうしてなのかは分からないが。
姉の方には全く見覚えがない。
そう、私の姉は─
私のお姉ちゃんは───
「やめろ!!◯◯を助けてくれ!!頼む…お願いだ…」
姉らしき人物が絞り出すように叫ぶ。
冷たい目の少女は言葉を返すこと無く、携えた刀を妹に振り下ろした。
瞬間、何かを呟いたような気がしたが、燃え盛る炎の音にかき消されてしまった。
私と似た顔の少女が力無く地面に崩れ落ちる。
気分の悪い夢だ──
すごく。痛かった。
噴水のような血が、火の海を更に紅く染めた
。
「あああああアアアアァァァァっ──!!!!!!!」
「あああああアアあああアアっ──!!!!!!!」
姉らしき人物の慟哭が響いた。
「…ぐっ。くっ…くぅ…」
「…やる…」
「…してやる…っ」
「──殺して…やるっ!!!!!」
慟哭の後、姉らしき人物は、自分の妹を無惨にも斬り捨てた少女を睨み付けながら呪詛の様な言葉を吐いた。
冷たい目の少女は眉一つ動かさず、その言葉を真っ直ぐに受け止めた。
そして、火の海は激しさを増し、2人の少女と1つの亡骸を包んでいった。
やがて、暗転──
ここで、この夢は終わりだ──
一体、何度目の再生だろうか。
さよなら、長いようで短い悪夢。
頑張って長編書いていきますので、皆様しばしお付き合いください。




