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私は女を一目見て、おや、と思った。
そして気付いた。
欧米人ばりの派手な顔。
化粧はあのときよりも控えめだったが、忘れるわけもない。
ラーメン屋で私のチャーシューを取ったあの女だ。
二つあるほくろの位置も同じだ。
どうやって私の息子と知り合った。
女のほうはどうやら私のほうに気付いていないようだ。
四年前にラーメン屋で一度会い、チャーシューを取っただけの男なんていちいち覚えていられないのだろう。
家に上げ、二人から話を聞いている間、私は大変難しい顔をしていたことだろう。
息子はさすがに気付き、気にはしていたが直接それに触れることはなかった。
やがて息子が女を送って行き、そして帰ってきた。
家に入るなり開口一番「お父さん、どうしてあんなに険しい顔をしてたんだ。彼女がものすごく気にしていたよ」と言った。
「それはな」
私は四年前のラーメン屋での出来事を話した。
「えっ、それ本当なの」
「私がそんな嘘をつくわけがないだろう」
「間違いなく彼女なの」
「間違いない」
「そんな。彼女がそんなことをする人だったなんて」
結局、息子はあの女と別れた。
頭は良いと思っていたが、女を見る目はまだまだのようだ。
とにかくあの女は、人柄が良くて家庭を大事にするタイプのうえに、大手企業で出世頭の男を逃してしまったのだ。
たった一枚のチャーシューのために。
終




